第7話 乗せる人の人選

「検温チェック」

 コンクール府大会の出発前にみんなで熱を測った。よく全員分用意したよな、全国大会には返せと言われた。


 士気が高まり、みなは元気よく返事をしたが、全国は果たしてあるのだろうかと僕は士気に懐疑的な立場だった。


 そしてバスに乗る段になり、保護者のトラックに楽器を載せ始めた。保護者もなじみなので、少し話したが、密だと言われて距離を取られた。そして全員がバスに乗った。僕以外。


 監督は言った。

「なんでや」

 分かるか。


 元々、バスは一台だったが、密の関係で五十人乗りのバスを三つにした。

 高校Aの部の出場制限人数は五十五人までだ。サポートは十五人で七十人。総じてバス三台で余裕を持ってバスに乗れるはずが、激励に校長、保護者会長、同窓会会長諸々が乗り、なぜか僕だけがはみ出た。

 今更、なんとか長を降ろせない。


 坂下先生はありがたい事に添乗員席てんじょういんせき使用可否しようかひと予備椅子を使えるかの交渉をバスの運転手にしてくれた。運転手は申し訳なさそうな顔で「密なので」と言った。


 坂下先生がトラックに乗り、僕が空いた席に座ることになったが、僕のモチベーションはこの時点でかなり落ちていた。

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