第8話 コンクールの怪

 バスは周辺にたくさん止まるので早い降車が求められる。出番のギリギリでないと楽器を降ろすことが出来ない。早く出し過ぎて会場周辺に密があるのは時勢的に良くないからだ。


 しっかり消毒をし、リハ室に入るのはメンバーだけ。会場前で十五人は多いのでせめて半分は落としてくれと役員の先生に言われて、七人になった。やや不安注意報だ。


 舞台袖には同じく隔離かくりをされていたサポートメンバーとコンクールメンバーが顔を合わせた。全員が関西に行くんだという心持で乗り越えてやるという気概きがいに満ちていた。


 肩を組んで気合をいれていたら密だと怒られていた。お前らもう少し頭を使え、そうは言いつつこちらも緊張きんちょうするものだ。去年は関西大会からの参加だった。


 よしスタートはいいものにするぞと気合を入れて、舞台配置と撤収てっしゅうを何とかやりきった。あとは演奏の評価だけだった。ネットで発表というが帰り道になっても中々発表にならない。


「出た」

 

 バスの中がざわめいた。

『八神高校吹奏楽部銅賞』

 銅賞は三位ではない、一番グレードが低い賞だ。

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