その4 芦原高原神社へ。

2度の乗り換えを経て、私は目的の駅に到着した。

空に居座るお日様は、この地、この時刻においてもお元気なご様子。


今日予約している宿は、駅から徒歩5分という便利な場所にある。

チェックインが開始されるまでには、まだ1時間ちょっと早かった。

この宿はチェックイン前の荷物預りサービスはしていないとの事だった。


私の背負っている30リットルリュックサックには、最低限必要な物しか詰め込んでいない。

多少の重さはあるけれど、先に芦原高原神社に行っても、へばって動けなくなったりはしないだろう、と考えた。


駅から路線バスに乗る。

自分以外には、どう見ても私より年上な女性2名と男性1名しか乗っていなかった。


バスに揺られること18分。

私の持っている交通系ICカードに対応していなくて、支払いの時に多少手間取った。

その後歩いて3分、神社の入り口に辿り着いた。


人々が住んでるエリアの端っこ、山へ向かう道の先に、その神社はある。

青々と葉を茂らせた木々の間に、社殿に続く長い石段が待ち構えていた。

下からの視界では終点が見えない威容だった。


「おまえの太腿をプルプルさせてやるわ」と、この石でできた階段野郎に言われているような気がした。


他にもっと楽な道がありそう、と、私の直感が働いた。

でも、それを探すの面倒臭い。

ここはいっちょ、石段様の挑戦を受けてやろうではないか。



....



ぶふぅ...ふはぁ...



....



へばった。

ものの数分で。


これ、カップラーメンにお湯入れて出来上がるより、私がへばる方が早かったりしない?


終点は未だ見えない。


えー、スタミナなさ過ぎ...。

特に足腰のへばりが早いのが気に入らない。


くっそ!

くっそ!


思ってたより弱体化している自分の身体に苛立ちながら、再び石段を上る。

「まだまだ先は長いッ、心を強く持てッ!!」と、根性モードを発動し、自分を鼓舞しながら足を運ぶ。


と、その時、思いがけず石段が途切れ、踊り場のような平たい土の地面の空間に出た。

5歩ぐらい真っ直ぐ進んだ先には、まだ石段が続いている。

その上を見ると、なんだか屋根のようなものが見えた。


あ、なんだ、もう少しじゃないか。


ホッと一息ついて、何気なく横を見た。

すると、左右にも道が伸びていて、左は鬱蒼とした木々の中へ、右は開けた明るい空間に続いているように見えた。


そうだ、写真撮ろうかな。


石段を上りきった後でもいいけれど、もしかしたら全方位木々に囲まれていて、見晴らしが良くないかもしれない。

同じ石段を下って戻るとも限らないから、撮ろうと思った場所ですぐ撮るのが良いよね。


そう考えた私は、進む方向を右の道に変えた。

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