乗る

 何でも体験することが大切だよね。私も隣に座るよ。うーん。昔のジェットコースターは作りが簡単でなんだか頼りないね。急カーブで落っこちそうだ。


 ん? なんだろう? ねえ、なにか変な音が聞こえない? ここには私たちしかいないはずなのに、足音がきこえない?


 ペタ……ペタ……


 ほら! 聞こえただろう?



 ◇ ◇ ◇



 あなたの耳にも足音が聞こえた。あなたはここにいたくないとコースターから降りようとした。しかし、体が動かない。自分の体を見ると、細長い、緑色に変色した腕に体を固定されている。あなたの耳に生暖かい風と声が聞こえた。


「助けて……」


 座席と思っていたものが、緑色の化け物になっている。恐怖で声が出ない。


 その時、ジェトコースターが動き出した。あなたたちはそのまま上昇する。頂上まで来ると、コースターは急降下した。


 その間も、緑の化け物は「助けて」とささやき続けた。


 カーブに差し掛かった。別の緑の化け物がレールの上を歩いている。こちらに気が付くと、手をあげて叫んだ!


「止めてくれ! 止めてくれ!」


 コースターはスピードを緩めずに突っ込んでいく。ぐしゃりと嫌な音を立てた。あなたの顔にべったりと残骸が張り付いた。悪臭があなたを襲う。


 コースターはステーションに戻るとゆっくりと止まった。あなたを拘束していた緑の化け物もいない。



 ◇ ◇ ◇



 はあ、はあ、君は無事? さっきのなんだろう?


 最後だよ、観覧車に行こうか。それとも、今日はここまでしておこうか?


 私はいつでも待っているよ。またここに来られるように、何か印をつけて帰るといいかもしれないね。



 『家に帰る』

https://kakuyomu.jp/



 『観覧車に行く』

https://kakuyomu.jp/works/16817330663384580032/episodes/16817330663473982059



  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る