第28話 神霊『メシア』<三人称> 


 *前書き。


 ここから少し、視点の切り替わりがあります。作者の力不足申し訳ないです>.<!

この章が終わり次第、まとめ的なものを出すつもりです。

___________________________________








 戦場と化していた帝都では、貧民・革命軍 vs 衛兵・貴族による激しい交戦が繰り広げられていた。 そんな最中、逃げ遅れた貴族の子供達や、逸れてしまった老人の救助を続ける、第三王女が居た。


「そっちの道は危険です! さぁ、こちらの修道女へ、ここならば安全です」


「エレイン王女!」


「安心してください。少しですが、ポーションと、非常食も持って来ました。私の護衛の騎士もついて来ています」


 王女を守るようにして編成された少数の騎士も、彼女と同様に救助活動にあたっており、民を守ることを優先していた。もはや誰が敵で味方なのか、理解できない状態で、王女は一人、葛藤していた。


(先程の声は……私を助けてくれた暗黒仮面様。なぜこのような事を企てたのです。せめて、話し合いの場でも設けられれば)


 すると、修道女付近を襲って居た貧民が、エレインを発見する。


「王女様ー。大人しく、殺されてくれよ!」


「剣をしまいなさい。さもなくば、斬り捨てますよ」


「うるせー!」


 (こうするしかないのですか……。)


 彼女は得意の方円流の剣技で、貧民を斬り伏せた。だが、続く連戦で魔力と体力を消耗し切っており、彼女の目の前で民の命が、一人、また一人と潰えていく。




「くっ、私一人では民を一人も救えないなんて——」


 エレインは等々、魔力が尽きて剣を握る事も難しくなってしまった。そんな時、大柄の男に突進され、壁まで激突した。


(情けない。壁まで追い詰められている。魔力も尽きてる。詰みね……。)


「姫様、アンタは殺すだけでは物足りない。たっぷりと恩返しをさせてもらう!!」


——その瞬間、王城の方角から物凄く凄まじい光が現れる。天まで届き得る、その光は、どことなく異質な何かが宿っていた。


「何だあの光は?」


「……ペッ。知らない。神の裁きでも降るのかしらね」


 血を吐きながら、そう答えた。


 さらに、光がピカッと帝都全域に走り出す。光の光線が目の前の農夫の胸を貫通した。それ以外にも、周囲の人々の胸元を光が貫通している。


 その光はやがて、大きな木の根っこへと変化し、胸が貫通した人は徐々にその姿を木に変形させた。


「ぐふっ。たっ、助けて」


 農夫はみるみるうちに、精気を吸い取られて、骨と皮だけの状態になった。その光景をルビーは上から見ていた。


「ルビー。ワクワクして来ちゃった。これやばいヤツだよね。お城の方に化け物がいる」






 中央広場のサーカス団跡地では、スレッタ、エレナ、ジータが異変に気づく。


「灼熱パーンチ!」


 ジータが灼熱を纏った拳で光の光線を断ち切る。


「この属性は土? 光の中で土属性の魔法が動いている」


「だーっはっはっ! つまり、私の魔法でジャジャーンと凍らせてやればいいのよ!」


 スレッタが分析する間もなく、エレナが手に持っていた水晶付きのロッドを使用して、あたり一面の光線を人間ごと凍らせた。


「エレナ! 僕のパンチで焼き切るんだから、邪魔しないでよ!」

「いいじゃない。どうせ、全部凍らせちゃえば……動けないんだし」


 すると、氷を突き破って黒い樹木と化した化け物が誕生した。頭部から赤い花が咲き誇っている。3人の認識が揃い、すぐさまに攻撃を仕掛けた。


「ギュエエエエッ!」


 目の前の一体は倒すことが出来たが、魔力に釣られて周囲の黒い木が集まってくる。新しく生誕した彼等は、強い魔力を欲し、行動する習性があった。


「キモーーーー! 集まってきたんですけど、ていうか、倒しても直ぐに再生するんですけどー! キモーい!」


「そんな呑気な事を言ってる場合じゃないわ。下手に動くと、魔力を吸い取られる。それに、少しずつだけど——他人同士で融合し始めている」


「灼熱パーーンチ! 疲れてきたー」


 3人が交戦中、庭園ではオフィーリアとべセルが謎の神霊と戦闘態勢に入っていた。

___________________________________






 召喚された神霊しんれいは光のローブと、マントを羽織っており、坊主頭だった。目を閉じており、顔と全身には黒い鞭のような模様が浮かび上がっている。身体には肉がなく、華奢である。


 その名も、神霊メシア。


 現存するメサイア教が奉る、全知全能の唯一神であり、大戦において悪魔族に不可侵のちぎりを交わさせた、英雄。


「べセル……感じる?」


「……強い。それだけ」


”だよねー” べセルの顔を見ながら、オフィーリアは返事をした。先程のアレキサンダーとは別格の強さ。ご主人様にとっての脅威になり得る……と感じた二人は敵の排除を決めた。


 べセルが空中へとジャンプし、強烈な右足での蹴りを一撃。メシアは指で受け止め、左手から光の矢を放出した。


 それはべセルの右頬を擦り、地面に激突。草木が枯れる。


「こいつの魔法……生命を吸い取る」


「私がこいつを束縛するために、『潜血円転アンドレイ』を発動する。3分だけ時間を稼いで」


「——2分にふんで限界」


 べセルが魔力を解放すると同時に、天から雷が降り注ぎ、べセルへと吸収された。彼女は蒼い雷を全身に纏い、究極系へと変化した。


「頼んだわよ……」


 オフィーリアは辺り一面に散っている血液を回収し始め、術の展開を急いだ。そこへ、ルビーがやってくる。


「ルビーも混ぜてよ」


「良いところに来たわね、ルビー! べセルの援護をお願い」


「了解っ。援護しちゃうよ。あれ、射っていいよね。『黄金宮の弓アルテミス・レプリカ』」


 彼女は金色に輝く大弓を出現させる。


 レプリカとは魔道具の模造品であり、魔法によって具現化したものである。勿論、所有者の魔力が尽きれば消滅し、干渉力と発動速度によって威力が左右される。


 ただし、ルビーの類稀なる魔法的センスにより、本物の特級魔導具と差異のない模造品が完成していた。


 左手で弦を構え、右手で矢を発射した。放たれた金色の矢は、飛空しているメシアの身体を追尾して、彼の左目を撃ち抜いた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る