第11話 結成


 やれやれ……。


 国に根を回すということは、大変だな。王族を殺したとしても、上層部が残っていれば、首が据え代わり新たな王が誕生する。


 そのために、根っこから国を破滅させる必要がある。


「だから、こうなるんですよ——大臣」


「お前は一体誰だ……はぁ、はぁ。私に、私に何をしたぁぁ!」


「安心してください。それは医療用の投薬なのでしょう? 少しばかり、強力にしておきました」


「カハッ……! あぁ、熱い、熱いぃぃぃ!!」


 僕は城へと戻った後に、昼にマーキングしていた大臣の部屋へと侵入し、彼に

魔族の血清を投与した。オフィーリアに、魔族の血のみを抽出してもらい、注射器へ戻したのだ。更なる、魔の力を込めて。


「レイ様。そろそろ新手が来ます。如何致しましょう?」


 オフィーリアが時間を知らせてくれた。


「そろそろ時間か。さて、ムケツハット卿。あなたと、魔族の関係、カール伯爵について。その他、悪行について全て話せ。そうすれば、毒は取り除いて差し上げよう」


「ぐぅぅ。くそう。カール伯爵は、子供の奴隷を売買して、それらを新薬の被検体として扱っている……それでカーラ妃は地位を上り詰め、側室へと——」


「魔族との関係は? あの医者は魔族だな」


「しっ、知らん」


 ムケツハットの首元に剣を突き立てた。


「わっ、わかった。ワシにも詳しいことは分からんが、魔族からの使者だ。それ以外は、本当に知らん。奴はワシよりも地位の高い大臣にも接触しておる」


「地位の高い大臣?」


「うぬぬ。国王を筆頭に、結成されておる——円卓十席ロイヤル・オーダー。彼らしか知り得ぬ。だが、彼らのお陰で下級魔族が手に入り、帝国繁栄のための、贄となっているのだ!」


「……なるほどな」


「はぁはぁ、情報は全て喋ったぞ。頼む、毒を抜いてくれ」


「そうだな。毒は抜いてやろう」


 僕は大臣の身体の魔族の血清を分解した。そして、彼の喉元を潰し喋れなくした。


「——ンンンッ?!」


とは一言も言ってない。ムケツハット卿」


 僕は仮面を脱ぎ、顔を晒した。僕は無意識に魔眼が開眼しており、目が赤く光っているのが剣に写った。


「ンッ!!」


「もうあなたに会う事はない。さようなら、非道のゴミよ」


 彼を何回も突き刺し、殺した。見るに耐えない。


 大臣の身体は肉塊となり果てる。


「リア。べセル。行くぞ」


「かしこまりました。レイ様」「ラジャー。ご主人様」


 脱出路を作り待機していたべセルと共に、城を飛び出した。

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 翌日に大臣の悲報が城中を飛び回った。王子王女には内密にされてはいるが、衛兵やら使用人の噂話が絶えず、自然と耳に入ってくる。


「ムケツハット伯父様。小さい時は、私やヒューイと良く一緒に遊んでくれた方ですわ。あぁ、なんていう事なの」


 メルシーはヒューイの時よりも数段は、落ち込んでいた。それをエレインとジェレミーが慰めている。


「しかし、最近はやたら物騒だな。俺の部屋には24時間、衛兵を見回りさせているが、数を増やした。お前たちも、そうした方がいい。あぁそうだな、レイノルドは猫にでも守ってもらえ」


「はい。そうさせておきます。デニール兄様」


 兄弟達との夕食を終えて、僕はスラム街へと出発した。


 帝国や周辺の村では、エルシレーナと共同して、スラムの人々を纏めていた。彼女は子供たちに、魔法と知恵を、最低限の読み書きを教えた。


 べセルは、ならず者の武人や暗殺者などで暗殺部隊を結成した。彼女たちは、昼は魔物の討伐、夜は悪徳貴族などから金銭を奪い、資金を調達。


 オフィーリアは偵察軍の信頼出来る仲間と共に、貧民たちへと食糧や物資を補給するリーダーの役割を担っていた。


 こうして、僕は自身の勢力を拡大して行った。更に、情報が色々と回ってくるようになる。


 カール伯爵は魔族の血清のために、何人もの貧民街の子供を拉致して、研究材料にしている。


 デニールとその側近達はメサイア教の派生組織で、幹部を勤めている。そこは黒で、裏では修道女に乱暴し、多種族の娘たちを奴隷商人に引き渡し、密易している。


 この国にはゲスが何人も居るせいで、キリがないな。


 まずは、ヒューイの叔父であるカールを、その次はデニールをやるか。それから、2年ほど僕は勢力をどんどんと拡大していった。

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〜エレイン視点〜


「はぁ……はぁ」


「エレイン様。今日の稽古はこのぐらいにしておきませんか?」


「ダメです、私は兄様を破る最強の剣が欲しいのです。このぐらいで、根を上げていれば一生、かないません。私には、剣しかないのだからっ!!」


 エレインは美しい剣技と独特のリーチで、他の者を圧倒していた。アーサーとは違い、レイピアを好み、魔力強化によって敵と戦う魔剣士として成長する。


 だが彼女の剣はアーサーのそれには、遠く及ばなかった。上の者たちから、密かに付けられたあだ名は『模造品レプリカ』。アーサーを真似てはいるが、アーサーには及ばない。


 彼女は故に、最強の剣に囚われている。


 ある日の遠征、彼女の馬車は襲われ兵は一網打尽にされた。敵は、ゴブリンの長。ゴブリン・ロードとトロール、ゴブリン数十体。彼女一人では、叶うはずもなかった。


「やっ、やめて——!!」


 服を破かれ、乱暴される寸前だった——そんな折に現れた、漆黒の魔剣士。仮面を身につけ、無双する彼が、神に見えた。


「其方には素質がある。力が——欲しいか?」


「力……」


 エレインに手渡されたのは、魂を喰らい、生き続ける魔剣。ダインスレイブであった。

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