※機密ログ※(記録者：KANON)
隣人愛から始まり家族愛、異性愛、同性愛……私からすればどれがどれなのか、区別も今一判らないのだが。
兎に角、この世は“愛”を礼賛する言葉で飽和して居る。
まるで。
愛情を知らない人間、愛情が無い人間に、生きる場所は無いと、逆説的に突き付けているかの様に。
冷たい。薄情。感じ悪い。
私を暴き、能動的に追い立てる言葉は数多あった。
慈悲の同義語とは“無関心”なのだと、私は早々に学んだ。
私は、ユニーク・スキルの習得を
先方の反応次第ではゲームを去る。
私がユニーク・スキルを隠したまま消えれば、少なくともこの
彼と彼女に告白せんとする、この反物質爆弾を思えば、もう一つの行動を起こすのに、躊躇が無くなった。
或いは、やはり普通の人間であれば、それでも躊躇するのだろうか？
「
彼女を部屋へ送った直後、
私は、唐突に彼女の唇を奪った。
彼女の瞳は、流石に驚愕に見開かれていたが……口中の方は私の舌に蹂躙されるまま、抵抗は無かった。
気の遠くなる様な時間、交接した気がした。
彼女の、女児の頃の無垢さを残した瞳もまた、私を真っ向から覗き込んでいた。
「私は、こう言う人間だ」
ただ、その眼差しが“無関心”なものにも見えないのは、私の願望が掛けたバイアスなのだろうか。
「
自由に動けない相手に対し、考え得る最低の言動だ。理屈の上では理解して居るが。
彼女は変わらぬ瞳で、私の瞳を射抜いて。
私が先程奪った桜色の
「……それは、
「――」
何を、言っているのか。
この状況で出て来る言葉が、自分主体では無く、私の事なのか？
お人好しだとは、思っていたが、これはそんなレベルで推し量って良いものなのか。
「わかりました。わたし、男性も女性も経験、ありませんけど、なるべくやさしくお願いします」
「何を言っているんだ!?」
言えた立場では無い私が、そう声を荒げて居た。
「本当に意味が判っているのか？」
「はい。わたしと
「あまつさえ、初めて、だと？ それを、こんな形で他人に委ねるのか」
「もちろん、誰でもいいわけではありません。
何か理由があるから、だと？
「これが
「理由があれば、今と同じ返事をしましたよ。理由がないならいやです」
私は、順当に苛立ちを感じた。
それは、誰でも良いと言われたからに等しいから……と思い掛けたが、そうでは無い。
「相手の理由、相手の理由と、君自身に理由は無いのか!? 君自身の想いは！」
そう。
この場に
「貞操を奪われようと言う時に」
「それは」
彼女の抑揚は、変わらない。
優しく、柔和だ。そして、淡々と。
「必ずしも、否定するべきことなのでしょうか？」
「――」
ここに来て、何度目の絶句だろうか。
恐らく彼女は何一つ嘘を吐いて居ない。
微塵も取り繕って等居ない。
「わたしには、本当にわからないんです。
こんなことをしたり言ったりすれば、悪くすれば自分の立場が悪くなるって、
それでもわたしに、こうして打ち明けてくれた。
そこには、とても強い理由があるはずです。
頭ごなしに否定するのが、本当に正しいのか。
その先にあるものが、わたしにとって幸せなのか不幸なのか」
「やってみないと、わかりません」
私は。
彼女から手を離し、脱力のまま、そこのソファに座り込んだ。
「降参だ。私にそんな事、出来る筈も無い」
彼女について、私は、何か大事な事を見落としている。
今や、確信めいたものがあった。
「済まない。こんな半端な心情のまま、君を脅かすような事を言った」
私が女だと言っても、謝って許される事では無いだろう。
「そうですか？ さっきも言いましたが、わたし、それが怖いのかどうなのか、理解できてないんです。
てことは、
そして彼女は、
「それより、大切なことを少しでも話してくれて、うれしかったです。
これからも、仲良くやりましょうね」
どうしたら、こんな状況でこんな無垢に笑えるのだろう。
さっきまでの不安とは、別のものが私の胸に
そう、彼女のこの“自分の無い”態度は、まるで――。
解った。
ともあれ、全員を集めて、告白を行おう。
少なくとも、彼女とはあともう少し共に居たい。
本当に、私は身勝手だ。
自分の身勝手さと言う自覚が“文字列”としか感じられないのも含め。
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