第17話 賢者オリット

ローズが誰かを連れてきた。

街道で立ち止まる。


「勇者ってこんな美人さんだったんですね。誤解してました。」


オリットがシオリに丁寧ていねいにお辞儀じぎする。


「え?美人だなんて…そんな…。」

頬を赤らめて嬉しそうにしているシオリ。

まんざらでもなさそうだ。


「ごめんね、どうしても会いたいって聞かなくてさ…。」

ローズが謝罪する。


「半年前まではこーんくらいちっこい子供でしたからね。誤解じゃないと思いますよ。」

ぼくはジェスチャーを交えて言う。


「む~。ちっこいは余計でしょ。」

シオリの怒った顔は、相変わらずかわいい。


「私が無理を言ってついて来たので、ローズさんに怒らないでください。」

丁寧にオリットは頭を下げる。


「自己紹介が遅れました、私はオリット、賢者なんて呼ばれておりますが魔法が多く使えるだけの魔法使いですよ。」


「今回は洞窟の魔物の、調査依頼よ。ゴブリンっていうから大丈夫だとは思うけど。」


「調べるだけだからね、危険なことはしないこと!」

ローズが強調して言う。


「誰かさんは放っておくと、大型魔法ぶっ放すし、危なくてしょうがない。洞窟だから火の魔法は厳禁ね!」


言わずと知れた、シオリの事だったりする。

魔法を覚えて楽しくなったのか、加減をしらないのか…。

まあ、楽にはなるんだけど…。


ぼくたちはBランクの依頼を受けていた。

半年のうちに2人ともCランクに上がったのだ。


最近変わった事と言えば、シオリの姿が劇的に変わったので、男共の見る目が変わったこと。

ぼくはその男連中の視線を見ると、もやもやする。

何だか無性に嫌なんだよな…。

意味の分からない感情を抱えつつ、おれはローズたちと洞窟へ向かった。


バランス的には良いんだけどね‥。

ローズはオリットの事が気になっていた。

何故彼がこのパーティに入りたいと言っているのか?

回復魔法も使える彼が入ることで安全性も広がるのだが。

よく分からないが、私のカンが辞めた方がいいっていってる。


「火よ」


松明たいまつで火をつけようとしていたのだが、オリットが明かりをつける。

「有難うございます。助かります!」

シオリはオリットにすっかり気を許してしまっているようだった。

良くも悪くも素直でいい子なんだけど・・疑う事知らないんだよね。

変なことにならなければいいけど‥。


シオリの尻尾はゆらゆらと揺れていた。

「ご機嫌だな‥。」

イライラする‥‥。


「はぁ~。」

ぼくはため息をついた。


「ちょっと、大丈夫?」

ローズが心配して声をかける。


「ごめんなさい。何でもないよ。」

ぼくは慌てて、言った。

分かってるこの感情は‥嫉妬しっとだ。

賢者ってやつ優秀なんだろうけど、シオリの側にいないでほしい…。

ぼくはみにくい感情を抑えるのに必死だった。

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