第10話 すっかり忘れていた

久しぶりの冒険者ギルド。

領主の屋敷が居心地良すぎて、あれから1年が経っていた。


「フォレスさん、何かしましたか?」

受付のシエラさんに声をかけられる。

ウサギ耳のかわいい受付嬢だ。


「捜索願でてますよ。」

以前村に来た騎士団長ワットの事は、すっかり忘れていた。


「探し回っていたのか‥。」

この一年間で、ぼくたちは魔法がレベルアップした。

良かったのか悪かったのか…。


「これ、まとめてお願いします。」

領主の屋敷で過ごした分、まとまったお金になった。

これからどうしようかなぁ。

依頼分を換金してもらう。


「捜索願は‥連絡取らないといけませんね‥。詳しくは書かれていませんが、逃げたら厄介なことになると思いますので‥。」


「そうですよね‥。」

いや、逃げてたけどね。

ぼくは仕方なく、連絡を取り捜索していた相手と会うことになった。


「いや~久しぶりだね~。今まで何してたの?」


軽い口調だが、笑顔の裏に怒っている様子が分かる。

捜索願を出していたのは騎士団長のワット。

手紙で連絡を取ったら、さっそく宿屋の前で待ち伏せされていた。


「ひとまず中に入りませんか?」

外で会話が聞かれるのもまずい気がして、宿屋の部屋へ入れる。


「長いこと住み込みの依頼をしていましたので、気が付かなくてすみません。」


「まったく‥あの村に行ったらいないし、捜索願出しても連絡取れないし‥。」


はぁ~とワットはため息をついた。


「ねえ、あの人は何を怒っているの?」

小さい声で聞いて来るシオリ、そういえば理由話してなかったっけ。

ワットは勇者を探しているって事。


「勇者様に失踪されては困るんですよ。立場的にも。」


勇者?

指で俺を指すシオリ。

顔を横に振る。


「さっそくですが、鑑定で見させてもらいます。」

騎士団長は丸く透明な球を見せる。

それは鑑定が出来る魔道具のようだった。


「鑑定、目の前の者のステータスを表せ」


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シオリ 10歳 猫族 冒険者

HP 250/250

MP 500/500

スキル 家事

魔法属性 火魔法、水魔法、風魔法、土魔法、光魔法

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ワットは目を見開いた。

何だこの魔法の属性は!多すぎるではないか!

一般的に1、2個が普通で、3以上は見たことがない。

伝説の賢者レベルか?

これは勇者というのは本当かもしれない。


「あれ?あの魔法が無い?」

ぼくはシオリに耳打ちする。

「あれは隠した方がいいってローズに言われて、隠してある。」

ステータスって隠せるんだ‥。

知らなかった‥。


ステータスに驚いていた騎士団長は、ぼくたちの会話に気づかなかったようだ。

良かった。

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