第5話 村を出る

ぼくはシオリとイリエ村を出ることにした。

生まれ育った村。

まさか、出ていくなんて思いもよらなかったけど。


「フォレス、これ持って行きな。」


隣のケイ叔母さんが干し肉をくれた。


「ありがとう。」

いつも世話になってたんだよね。

ご飯もらったり‥色々思い出したら泣けてきた。


「シオリちゃんも、道中気を付けるんだよ。最近は物騒らしいからね。」


「ありがとう、ケイ叔母さん。」

シオリは意外とあっさりしていた。


取り合えずぼくたちは隣の町に行くことにした。

どうしたものか…。

隣町のオータ町はイリエ村よりも規模が大きい。

冒険者ギルドがある。


ぼくは冒険者登録をして、生計を立てないと・・と考えていた。

住むところも借りないとなんだよね。

よくよく考えると結構大変なことがわかる。


あれ?

ぼく何でこんなにシオリの為にやろうとしているのだろう。

守ってあげないと、という漠然ばくぜんとしたもの、妹みたいに思っているのかもしれない。


多分、妹と思っているから…。


3時間の距離を休みながら歩く。

シオリは歩きなれていないらしく、疲れているようだ。

今まであまり歩いたことが無いのだろうか。


「もう少しだから、がんばって。」


町についたら、すぐに宿を取って休ませよう。


途中からぼくが、シオリをおんぶしてようやくオータ町に着いた。


「宿屋‥宿屋っと。」


なるべく安い宿に泊まりたいけど、探すのも大変そうだ。


結局、すぐ目に留まった宿屋に泊ることにした。

料金を聞いてみたが、相場がわからない。

一日、銀貨5枚だ。


「まあいいか。宿取れたし。」

シオリは疲れて寝てしまっている。

10歳だしな。

ぼくはシオリの頭を撫でた。


ここの町は明るいな。

窓の外を見ると夜になっても煌々と明かりがついている。

酒屋とか食堂とかまだ営業しているのだろうな。


明日、冒険者ギルドに登録してこよう。

雑用でも何か仕事あるだろう。


今日は早めに休むことにした。

ベッドに入ると、すぐに眠ってしまった。



****



チュンチュン


鳥の鳴き声がするけど・・なんか変。

天井を見る。

あれ‥ここ?

村じゃないんだっけ。

そうだ宿屋に泊ったんだ。


隣を見るとシオリはまだ寝ていた。

寝顔かわいいなぁ。

もう少し寝かせてあげよう。

不思議と穏やかな気持ちになった。





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