第4話 勇者

「「勇者?」」


イリエ村の人々が村の集会場に集まっていた。


「おとぎ話でねえか?」


「まさか、この村にそんな偉い人が?」


臨時で村の人たちが集められていた。

王都から来た騎士団長が、情報収集をしているようだった。

明るい金色の髪、空色の瞳‥イケメンってこういう人の事を言うのだろうか。

村の女性たちの目がハートになってる気がする。


「そういえば!最近、フォレスんちに女の子来たよね?」

村人の一人が言った。


「‥でも人間じゃない。猫族だけど?」


ぼくは素直に答えた。

まさか、シオリが勇者なんて有り得ない。

まだ小さい子供だし、女の子だよ?


「一応確認しに行こうか。案内してくれるかな。」


ぼくは仕方なく、家に案内した。


「シオリ帰ったよ。お客様もいるけど‥。」

家のドアを開く。


「おかえりなさい。ご飯できてるよ。」

エプロン姿のシオリは笑顔で出迎えてくれた。


「狭い家だけど、どうぞ。」

ぼくは騎士団長に椅子に座らせる。


「お客様?お茶の方がいいよね。」

シオリはそそくさとお茶を入れて、テーブルに置いた。


騎士団長はシオリを見つめている。


「子供だな。」


「そう言ったでしょう。」


シオリは不思議そうに見つめている。


「お茶有難う、今日はここで城に帰るよ。」


ぼくは騎士団長を見送って、ため息をついた。


「疲れた~。」


「さっきの人は何しにきたの?」


「ん~大したことじゃないよ。」


ぼくは嘘をついた。

本当の事を言えば、シオリがおびえるかもしれない。

そう思ったから。


つい昨日まで、ぼくはこの村でシオリと暮らしていこうって思っていた。

昨日まで。

今日、騎士団長って人が勇者を探しに来るまでは。

シオリが勇者かどうかなんて分からない。

でも、平穏な生活が脅かされるのは嫌だった。


「シオリ君さえ良ければ、一緒にここを出ないか?」


「?」


「イリエ村を一緒に出て行かないかって言ったんだよ。」


「どうして?」


「どうしてって‥。」


本当の事を話したらいいのだろうか。

もし話したとして、シオリはどう思うのだろうか。


「いいよ。私一人だし、フォレスと一緒なの嫌じゃないし。」

どう返答しようかと考えていたが、シオリが了承してくれたので取り合えずいいかな。


「良かった。じゃあ少しずつ準備するね。出発は明後日でいいかな?」


「うん。わかった。」


シオリは年齢の割に賢そうなところがあるので、感づいているのかもしれない。

こればかりは聞いてみない事にはわからないが。


「ここの生活、楽しかったんだけどなぁ…。」

シオリはぼそっと呟いた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る