第3話 予言

シオリは外で、食器を洗っていた。

井戸から水を汲んで桶につけて洗っているのだ。

黒い尻尾しっぽがふりふりしている。

今日は機嫌がいいみたいだ。

もふもふ一度触ってみたいな。


「しっぽ、さわってもいい?」


「え?いいけど‥。」


「ふわふわする。やわらかいな・・。」

暖かい…尻尾。


ぼくは優しく触る。


ビクッ!

何これ、この感じ…。

「…気持ちいい…何これ…。」

こんなの聞いてない!

目がとろんとしてきた。

ちょっとヤバいかも。


「もういい?」


シオリは半ば強引に、離れて行ってしまった。


もうちょっと触りたかったな。



****



「はぁ〜。」


尻尾…。

まさか気持ち良くなるなんて‥うかつに触らせない方がいい。


今は人間の体じゃないから色々気を付けないと。


私は 枝葉えだは しおり 異世界転移してきたらしい。

日本にいた頃は16歳の高校生だったのだけど。

何故か10歳の猫族になっちゃってるし。


知識不足で異世界に放り出されても生きていけない・・と思った私はフォレスに同居を申し込んだのだ。


幸いフォレスは一人暮らしなので、すんなり話が通って良かった。

これからの事は後で考えればいいや。


「シオリ」


フォレスが寝室にやって来た。

私の寝床はフォレスの両親が使っていたベッドだ。


「シオリのステータスだけ見ちゃ不公平だと思って。」


「ステータス」

ぼくはシオリに見えるようにステータス画面を開いた。


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フォレス15歳 人間 村人

HP 50/50

MP 40/40

スキル 鑑定

魔法属性 火魔法、土魔法

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「スキル鑑定で、普段は他人のステータス見るとかはやらない。モンスターに会ったら、レベルや特性が分ったりするのでそれは便利なんだ。会いたくはないけどね。」


「今度黒い耳も触ってみたいな。良い?」


「ダメ!」

シオリの顔は耳まで真っ赤になった。



****



教会の大聖堂。

王都クリミアにある教会の本部。


「お、おおお……。」

大神官ハーネスが驚きの声を上げていた。

初老の男性、白いあごひげが長く伸びている。


「どうなされましたか。大神官様。」

神官が、声をかける。


「勇者が‥勇者が現れましたぞ。」


「まだ幼い子供のようだが・・今のうちに保護しておいたほうがいいかもしれん。」



****



王都クリミア城

「大神官の予言か‥どこまで信用してよいものか‥。」

金色の王冠を被り、鮮やかな銀髪、透き通った青い瞳。

エリル王は悩んでいた。


大神官の言う言葉は重いものなのだが‥。

勇者とかおとぎ話としか考えられないからだ。

魔物とかの報告は聞くが魔王とか有り得るのか?


「魔王か・・本当にこの世に出現するものなのか?勇者とか‥。」


「一度偵察に行かせてはいかがでしょうか?」


「イセカイテンイなるものが存在するのかを。」


「そうだな。ワット騎士団長、偵察を頼むぞ。」


「はい。かしこまりました。」

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