第2話 異世界転生

  

 


 それでは異世界の物語に入る前に、一華の父涼真がいくら出世の為と言えども、何故あんなブスマリアと結婚したのか、その理由を紐解いて置かなければいけない。

 

 とんだブスに生まれ落ちたマリアだったが、何とも運の良い事に兄空の友達で超イケメンにして超優秀な涼真に見初められ、トントン拍子に結婚と相成った。


 それは、何もマリアが人並み優れた何かがあった訳でも、どこか並外れた魅力があった訳でも無かった。只々代々続く同族経営大手家電メーカーの御令嬢という唯一の肩書きがあっただけに他ならない。


 要は只々人一倍野心家の血が騒ぎ、あんなにブスに手を出しただけだった。実は…この涼真、見かけは良家のご子息と見間違われる、どこか品位の備わった坊っちゃんに映るが、両親が夜逃げして借金に追われる身となったとんでもない人物だった。


 

   ◇◇


 涼真は1978年に、大阪の難波でお好み焼き屋や、たこ焼き屋を経営する両親の元に誕生した。丁度涼真が小学校当時はバブル景気に日本中が浮かれていた時代だった。

 大した腕が無くても店を出せば儲かった時代に、お好み焼き店を大阪に10店舗も展開して行った結果、大して美味しくもないお好み焼き屋は、バブル崩壊と共に一気に客足が遠のき倒産に追い込まれてしまった。


 実は…このお好み焼き屋は夫婦で経営していたが、借金で首が回らなくなって涼真を祖父母に預け夫婦揃って夜逃げしていたのだった。それでも店を手放し借金返済のめども立ったのだが、苦労が祟って相次いで両親は亡くなっていた。


 元来、祖父母も両親同様に計画性が無く働く事が大の苦手であったことから、お好み焼き屋の売り上げ金の仕送りで、生活していたので一気に生活苦に陥った。


 だから……一時は家の前の公園などで、草やタンポポを物色し食べていたし、カマキリも「生」で食べた。又冷蔵庫が無かったので生ものは土に埋めていた。


 また洗濯機に入って体を洗っていた。とはいえ、洗濯機の中は水なので寒い。だから、服を着たまま入って洗濯機を回していた。すると、少しは温かくなるし服も洗えるので、一石二鳥だった。 


 あっ!これでは当時イケメン俳優として名を馳せていた、トレンディドラマの某俳優さんのまんま😜。全くもって微塵も変わらないではないか😰?


 だが、涼真は成績がずば抜けていたので、特待生制度を利用して授業料は全額免除されていた。だが、生活費を稼ぐためにバイトに明け暮れていたので、睡眠時間は2時間ぐらいだった。


 こんな苦労続きだったので、ブスでも何でも構わない。只々金金金金に目が眩んだだけだった。(◎_◎;)



   ***

 

 それではいよいよ異世界の幕開け。ワンボックスカーにひかれた一華はどうなっていくのか?順を追って説明して行こう。

 

 

 一華は幸か不幸か父親の涼真に生き写しである。


 更には父涼真と同じ都内有数の進学校「開進高校」に通う一華は、現在高校1年生。成績優秀にして超美人なパ-フェクトレディ-に変貌を遂げていた。


 艶やかな銀色に輝く美しい長い髪の少女。透き通るような涼しげな目元に、更には花びらを重ね合わせたような愛らしい桜色の唇。小顔の高身長でスラリと伸びた長い足の超美人で尚かつ大手家電メーカー「エクセレント」のお嬢様だ。


 だが、それは表面上の事で、下々の者どもがゴミか奴隷にしか見えない。とんだ高慢チキな娘に成長してしまった。


 母のマリアが超ブスだったので、自分には似ても似つかぬ超美人に成長した事によって、有頂天になり蝶よ花よとおだて上げ、甘やかし放題にした結果、とんでもない思い上がり少女に変貌を遂げてしまった。



『ツンツン』『ツンツン』『ツンツン』


「フン!全くなんで皆あんなにバカなの?何で……あんなにひらたい顔してるのさ?下僕共が!別に私が特別って言ってる訳じゃない無いのよね……?この私が普通なんだってば……だって……西洋人みんなクッキリした顔しているでしょう」


 とんでもない鼻持ちならない少女に成長してしまった一華。


「一華ちゃん僕たちと途中まで一緒に帰りませんか?お荷物お持ちしますが?」


「アッ!私バカ嫌い!それと……私面食いなの。あなた達みたいな雑魚イヤ!」

 

 ともかく性格が破綻しきっている一華。学校でも家でも成績優秀にしてこの美貌なので、誰からも注意を受けた事が無い一華は、皆が雑魚、ゴミ、にしか見えない。とんだ勘違い女子で思いやりの欠片も無い少女に成長してしまった。


 やがて天罰が下り想像も付かない悲劇に見舞われる事となった。


 

   ***


 一華ちゃんは学校の帰り歩道を歩いていると、勢いよく突進して来たワンボックスカーに突撃され即死した。


「エエエエ————————ッ!」


『もわん』 『もわん』 『もわん』 『もわん』 『もわん』 『もわん』 



「コッここは一体どこ?」


 一華ちゃんは、永遠世界の雲の上で不思議な体験をした。


 白い長い髭の白髪頭を肩まで垂らした、格好は白い衣に、はかま姿の、杖をついた「雷蔵」という名のおじいさんで、日本の神様のような格好の老人が現れた。


「アア……よう来たのう。ワシはこの永遠世界の神様で「雷蔵」だ。おぬしは運悪く交通事故で死んでしまった。前世では実に高慢チキで、いけ好かない女の子だったが、まぁそれでも…?死の間際に唯一野良猫を助けて、家の使われていない部屋で世話をしておった。お前さんは……取り分けこれから動物に助けられる事じゃろう」


「エエエエエエ————ッ!私死んじゃったんですか?全然痛くもかゆくも無かったんですが?」


「ああ……そういう事か?それは即死だったからじゃ!おう…おう…気の毒にのう。学生服姿じゃが、それでも何か一番大切なものがその中に無いか~?」


「まぁ?強いて言うなら、この胸のポケットに入っている手鏡が大切かな?」


「分かった!今一番大切なもの、その手鏡を銀色に変えてやる。その銀色の手鏡がピカピカ点滅したら手鏡を取り出して『テクマクマヤコン テクマクマヤコン ○○にな~れ』と唱えるとどんなものにも変身できる。だが、必要以上に使い過ぎると効能が薄れるかも知れん……その時はこの真言を唱えると良い『おん あぼきゃ べいろしゃのう まかぼだら まにはんどま じんばら はらばりたや うん』最低3回唱えるといい。口に出して唱えても心で唱えても、それどころか聞くだけでも御利益がある真言。じゃ~分かったな?ほ~れ一華、おぬしの行先はここダ—————ッ!」



 グル グル グル グル グル グル グル グル グル グル




「アレ————————————————ッ?」

 一華はどこに異世界転生出来たのだろうか?


 どうも……ここは「ヴィエノワ-ル王国」という異世界らしい。

 緑と色とりどりの花々があふれる美しい国に降り立った一華だったが、そこには蝶のように美しい紫や緑にピンクの羽を広げた妖精たちが、光り輝くステッキを手に持ち花々を飛び回っていた。


「何という美しい幻想的な世界なのだろうか?」

 そんな事を思いながら暫く見入っていると、辺りは瞬く間に夜の様相を呈して来た。


 地球では夜になると満点の星が輝いていたのだが、この世界は紫の闇の中に美しい光り輝く雲だろうか霧なのだろうか?青や紫やピンクの雲が傍若無人に動き出し何とも幻想的かつ怪しげで不思議な世界が広がっている。


 更には巨大なブルーの半円形の惑星のようなものが目の前にそびえ立って、遠くには金色に輝く丸い惑星が見える。地球の夜空も綺麗だったが、その比では無い。何とも幻想的かつ美しい世界が広がっていた。


 それでは一華は、この不思議な異世界の住人として、これからここで生きて行く事になるのだろうか?


 だが、その時想像も付かない事が起こった。


 一華が美しい世界に暫くの間見入っていたその時だ。恐ろしいまで金色に光り輝く鋭い目をした巨大な獣だろうか、雷が地面をつんざく程の地鳴りがしたかと思うと

「ガオ————————ッ!  ガオ————————ッ!  ガオ————————ッ!」

 ライオンの10倍は有ろう雄叫びが響き渡った。

  

 一華は逃げて逃げて逃げまくった。そして…大きな穴蔵に落ちて行った。


「キャ————————————ッ!」


  














  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る