高慢チキ⁑一華妃真実の愛〈サクセスストーリー〉

tamaちゃん

第1話 マリアと一華



 1996年の桜吹雪舞う春の出来事である。


 高校1年生の谷口マリアは超運が悪い女の子。それは誠に気の毒な話だが、超ブスでバカでチビでデブで、取り柄と言う取り柄が何一つ無い女の子だったからだ。


 だが、こんな何の取り柄も無い女の子が、兄空の友達で都内随一と称される偏差値最高峰私立「開進高校」3年生の超イケメン君涼真に告られ、付き合う事になった。

”エエエエ————————ッ!一体どういう事?絶対あり得ない!”

 青天の霹靂とはこの事。両親も大喜び。


  ◇◇


 マリアは身長148㎝で体重が65kg更には顔が超でっかく、どう見ても5頭身にしか見えない。そして…目鼻立ちにしても目は有るか無いか分からない程の糸のように細い目だ。また鼻は団子鼻で、更にはあぐらかいていると来たもんだ。そして…またまた困ったことに、口元はおそ松くんのイヤミのような出っ歯と、良い所全く無しの超ブス。


「あんなにブスに生まれてしまってマリアは嫁に行けるだろうか?」


「あなたがそんな気の弱い事でどうするのですか、私達親だけでもあの子を信じてやらなくてどうするのですか?」


「んまぁ?そうなんだが……どうしてあの子だけが……あんなブスに……」


「黙って聞いてりゃ酷い事を……一体誰に似たのですか?あなた💢酷い言い方しないで下さい。それもこれもあなたに似たからでは有りませんか?」


「確かに目と鼻はそっくりだが、俺は出っ歯だが、マリアほど出っ歯ではないと思うが?」


「似たり寄ったりです!」


「お前——ッ!黙って聞いてりゃ人をブ男呼ばわりしやがって!そんなブ男の俺となんで結婚した💢」


「それは……それは……あなた外見は決して自慢出来たものでは無かったけれど、学年トップの頭脳だったでしょう。だから……」


「そうだ。そうだった。お前が勉強が出来なくて……それで俺に告ったんだったね。お前は本当にバカで勉強が出来なかった。それで可哀想になって勉強教えてやっている内にウッフッフッフ!」


「全く兄の空は顔が私似で頭脳はあなたに似て、モテまくっていると言うのに……ハア😰……あの子だけがあんなで……本当に可哀想」


 

 両親の心配をよそに、開き直りひねくれ返っているマリア。


「どうせ私なんてブスでチンチクリンでバカよ。フン!それがどうしたのさ。図々しく生きてやる。神様。仏様。何で……何で……私ばっかりこんな……欠点ばかりの女の子にしてくれたの?もうチョット何とかならなかったの?もう神も仏も無いとはこの事だ!嗚呼……もう……グレてやる!」


 そんな時に兄の空が友達として、超イケメンボーイ涼真を家に連れて来る機会が増えて行った。それでもマリアはとっても気の利く女の子。


 兄の部屋にお茶とケ-キをを運んだり一緒に遊んだりしているうちに、やがて、3人で勉強したり映画を見に行ったり旅行に出掛けたりするようになって行った。そして…いつの間にか涼真と仲良くなり付き合い出した。

 

 超イケメン涼真は、マリアを一目見るなりビビッ!ときたと言う話だが、何とも胡散臭い話だ。マリアのどこにビビッ!と来る所が有ると言うのだ?


 こんなブスマリアに、そんなうまい話が本当に転がっているのだろうか?実に怪しい。


 実は…マリアの父親は代々同族経営の家電大手メーカー「エクセレント」社長で、日本でも10本の指に入る家電メ-カーだ。そんな一流企業のお嬢様だったらブスもチンチクリンも関係ない。野心家男子の考える事はただひとつ。喉から手が出るほど欲しい就職先、それをゲットする為だったらどんな事だって出来る。歯の浮くようなお世辞の一つや二つなんてことはない。


 だから……大学卒業時に会社に就職するために、マリアに近付いた可能性も十分に考えられる。だが、マリアが夢中になってしまっているので致し方無い。一体どんな狙いが有ってあんな何の取り柄もないブスに近付いたのか理解に苦しむ。


 

 実はマリアに近付いた涼真は、兄空と同じ偏差値最高峰の高校「開進高校」に通う同級生だった。という事は兄空が家電大手メーカー「エクセレント」社長のお坊ちゃまだと知っていて近付いたということ?


 更には、冴えない妹マリアを夢中にさせて、行く行くは家電大手メーカー「エクセレント」の頂点に上り詰めようという野望から、マリアに近付いた可能性は十分考えられる。


   ◇◇


 やがて涼真は一流大学卒業と同時に念願の家電大手メーカー「エクセレント」に入社した。本人の実力も当然の事ながら、マリアの彼氏という事で甘々で入社できたのは言うまでもない事だが、この数年後に2人はメデタク結婚した。


 そして…結婚して1年後に玉のように可愛い赤ちゃんが誕生した。その子は女の子だったが、マリアと違ってとってもかわいい女の子だった。


 どうも……パパに似たらしい。名前は一華と名付けられた。一華(いちか)の一は、一番輝いて欲しいという願いを込めて「一」とした。また、華という漢字には「春」「美しい」「華やか」「女性的」のイメージがあり、マリアが容姿で苦しんだので、何としても美しい娘になって欲しくてつけた名前だった。


 その甲斐も有って、何と一華ちゃんはとんでもない美少女に成長した。



    ◇◇

 現在高校1年生の一華ちゃんは、超美人で尚且つ大手家電メーカー「エクセレント」のお嬢様だ。下々の者どもがゴミか奴隷にしか見えない。とんだ高慢チキな娘に成長してしまった。


『ツンツン』『ツンツン』『ツンツン』とんでもない鼻持ちならない少女に成長してしまった一華。

「一華ちゃん重いでしょう。私がカバン持ってあげるね」


「アッ!サンキュ」


「じゃ―これ持って行くね」


「チッ💢アッ!キキッ汚い……チャンと手洗ってきてから私のカバン運んでくれない?」


 マリアのようにブスでいじけてグレるのもどうかと思うが、一華の高慢チキな態度は取り返しがつかない。


 結局はマリアが、自分には程遠い超美形少女に育った一華のことで有頂天になり、一華の人間性磨きを疎かにした結果だった。


 だが世の中そんなに甘くない。一華ちゃんに天罰が下される事となった。そういう悪戯な行為は神様が見逃さない。一華ちゃんは不慮の事故で天に召される事となった。


   ***


『もわん』 『もわん』 『もわん』


 一華ちゃんは学校の帰り歩道を歩いていると、勢いよく突進して来たワンボックスカーに突撃され即死した。


「エエエエ————————ッ!」


 もわん もわん もわん もわん もわん  もわん 



「コッここは一体どこ?」


 一華ちゃんは、永遠世界の雲の上で不思議な体験をした。


 白い長い髭の白髪頭を肩まで垂らした、格好は白い衣にはかま姿の、杖をついた「雷蔵」という名のおじいさんで、日本の神様のような格好の老人が現れた。


「アア……よう来たのう。ワシはこの永遠世界の神様で「雷蔵」だ。おぬしは運悪く交通事故で死んでしまった。前世では実に高慢チキで、いけ好かない女の子だったが、まぁそれでも…?死の間際に唯一野良猫を助けて、家の使われていない部屋で世話をしておった。お前さんは……取り分けこれから動物に助けられる事じゃろう」


「エエエエエエ————ッ!私死んじゃったんですか?全然痛くもかゆくも無かったんですが?」


「ああ……そういう事か?それは即死だったからじゃ!おう…おう…気の毒にのう。学生服姿じゃが、それでも何か一番大切なものがその中に無いか~?」


「まぁ?強いて言うなら、この胸のポケットに入っている手鏡が大切かな?」


「分かった!今一番大切なもの、その手鏡を銀色に変えてやる。その銀色の手鏡がピカピカ点滅したら手鏡を取り出して『テクマクマヤコン テクマクマヤコン ○○にな~れ』と唱えるとどんなものにも変身できる。だが、必要以上に使い過ぎると効能が薄れるかも知れん……その時はこの真言を唱えると良い『おん あぼきゃ べいろしゃのう まかぼだら まにはんどま じんばら はらばりたや うん』最低3回唱えるといい。口に出して唱えても心で唱えても、それどころか聞くだけでも御利益がある真言。じゃ~分かったな?ほ~れ一華、おぬしの行先はここダ—————ッ!」



 グル グル グル グル グル グル グル グル グル グル




「アレ————————————————ッ?」

 一華はどこに異世界転生出来たのだろうか?



 ※〈願いを叶える日本最強の真言『おん あぼきゃ べいろしゃのう まかぼだら まにはんどま じんばら はらばりたや うん』【光明真言】は全ての困難、災難を取り除き、除霊や運気上昇など万能の霊験あらたかな真言〉

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