第3話 王子様との出会い




 一華が美しい世界に暫くの間見入っていたその時だ。恐ろしいまで金色に光り輝く鋭い目をした巨大な獣だろうか、雷が地面をつんざく程の地鳴りがしたかと思うと

「ガオ————————ッ!  ガオ————————ッ!  ガオ————————ッ!」

 ライオンの10倍は有ろう雄叫びが響き渡った。

  

 一華は逃げて逃げて逃げまくった。そして…大きな穴蔵に落ちて行った。


「キャ————————————ッ!」


 

    ◇◇


 どれくらい経っただろうか、ふっと目を覚ますと大きな穴蔵の中に、ひとりの中年女性が気を失っていた一華を心配そうに覗き込んでいた。そして…心配そうな顔で一華に話しかけて来た。


「お体は大丈夫ですか?」


「嗚呼……ハッハイ!大丈夫です。ここは……ここは一体?……一体?……どこなのですか?」


 するとその時、真っ暗闇の中に何か……人の気配を感じた。そして…その人影は近付いて来た。その近付いて来た少年はまだ子供ながらに、どこか品位の備わった高貴な人物と直ぐに見て取れた。


「あなたは……あなたは……一体誰ですか?」


「シ————ッ!静かに……僕は……訳があってここに隠れているのです」


「エエ————————ッ!何故……何故……隠れる必要があるのですか?」


「それは……今この『ヴィエノワ-ル王国』は温暖な気候と豊かな大地に恵まれたことから果実や野菜が豊富に取れ、また資源も豊かで鉱物も多く出るので他国からこの『ヴィエノワ-ル王国』を奪おうと『メルヴェイユ 王国』が攻め入って来たのです。その為この国は恐ろしい戦争が勃発しています。その為、争いが収まるまでここに隠れているのです」


「それよりあなたは、何故こんな所に忍び込んで来たのですか?」


「それが……高校1年生の私が歩道を歩いていると勢いよく突進して来たワンボックスカーに突撃され、その後の記憶が全くないのです。そして…この異世界に降り立ったのですが、私がこの美しい世界に暫くの間見入っていたその時、恐ろしいまで金色に光り輝く鋭い目をした巨大な獣だろうか、雷が地面をつんざく程の地鳴りがしたかと思うと『ガオ————————ッ!  ガオ————————ッ!  ガ—————ッ!』ライオンの10倍は有ろう雄叫びが響き渡ってきたのです。私は怖くなって逃げて逃げて逃げまくったのです。そして…大きな穴蔵に落ちた。だが、後の記憶が全くありません」


「ああああああ……それは……巨大な魔物で『デーモン鬼龍』です。龍型の魔物で強靭な腕力で攻撃してきたり、口から勢いよく火を吹き、水を吐き出して洪水を起こすことで恐れられているのです。また生暖かいブレスを吐き出して攻撃してくる龍型の魔物で、果実や野菜を守り、それ以外の生物には大ダメージを与える効果があるのです。また、この魔物が作り出す技は喉元に熱気を溜めて、炎の塊の火球を作り、吐き出してくる恐ろしい魔物です。また高い知能を身に着けて素早い動きで翻弄し、爪や角による攻撃だけでなく最上級魔法を放って攻撃して来ます。また魔法使いには魔法を使用できなくしたりします。それでも、魔法を身に着けることができれば、多少は楽に倒せるようになります。ほんとうに恐ろしい魔物ですが、我が王国『ヴィエノワ-ル王国』の強い味方です。嗚呼……それから……今なんて言いましたか?高校生とか……それって何歳ですか?。」


「地球では16歳でした」


「16歳って事はもう直ぐこの国では大人の仲間入りが出来ます。この『ヴィエノワ-ル王国』では18歳以上で結婚が出来ますから……」


「嗚呼……地球でも結婚出来ます。でも成人式と言って20歳を過ぎると大人と見なされていましたが、2022年から(成年年齢)は18歳になりましたから、一緒です」


「あなたはワンボックスカーに激突されて亡くなったという事ですね?そして、この『ヴィエノワ-ル王国』に異世界転生したって事ですね?」


「ハア……この世界は一体どこなのですか?……な~んか宇宙空間のような惑星が空に浮かんでいましたが?」


「ここは『ヴィエノワ-ル王国』と言って小惑星を間近に見れる美しい『ノルン星』と言う星で我々が住んでいる国は『ヴィエノワ-ル王国』という国です。今現在 『メルヴェイユ 王国』と領土争いで紛争の最中だったのです」


「それではあなた方は何故こんな穴蔵にいるのですか?」


「嗚呼……この方はこの国の王子様でレニーといいます。今劣勢を余儀なくされているので、ここに隠れていたのです。それより……あなたは16歳と言いましたが、この国ではどう見てもあなたはまだ幼児にしか見えません」


「エエエエ————————ッ!それって事は5歳以下という事でしょうか?どうして……どうして……そのような事に?」

 一体どうしてそんな幼児に生まれ変わってしまったのか?合点がいかなかった一華はその理由を聞いた。


「嗚呼……きっと『デーモン鬼龍』が、あなたの事を、不審者と見なし抵抗できないように魔法をかけて幼児にしたのだと思います。あの『デーモン鬼龍』は一度怪しいと疑ったら中々手が付けられません。あなたは『デーモン鬼龍』に認められるように必死になって努力をして下さい」


「エエ————————ッ!そんな幼児になってしまったなんて……困ったな?この穴蔵に姿が見れる鏡が有りますか?」


「そんなものは有りません。我々はここで息をひそめて戦争が終わるのを待っているだけですから……」

 その時一華はピンときた。あの神様雷蔵が言っていた言葉を思い出した。

(そうだ!手鏡を使って見よう。変身できると言っていたが?ためしてみよう)


 手鏡を取り出して「『テクマクマヤコン』『テクマクマヤコン』姿見にな~れ」と唱えて見た。するとどうでしょう。大きな姿見が目の前に現れた。

「エエエエ————————ッ!何なのこれは?」

 

 5~6歳の女の子になっていた一華は余りの事に啞然となった。それでも……王子様もどう見ても以前の自分と同じくらいの、15~16歳くらいにしか見えなかったのでホッとしたが、レニー王子の方は一華をかなり年下の幼児としか見ていない。


「ちなみにレニー王子様は何歳ですか?」


「僕は今16歳だよ」

 こんな穴蔵での生活を余儀なくされた2人一華とレニー王子は子供同士という事もあって、すっかり仲良くなった。だが戦闘は一段と激しさを増して行った。  


 爆撃や大砲で一時は壊滅状態が続いたが『ヴィエノワ-ル王国』には何と言っても恐ろしい秘密兵器が有った。それはあの世にも恐ろしい巨大な魔物で『デーモン鬼龍』だった。


 龍型の魔物で強靭な腕力による攻撃で敵陣を片っ端からバッタバタ倒して行った。

 更には口から勢いよく火を吹き、敵国を炎の海に変え焼けつくし、更に水を吐き出して洪水を起こして敵国を水攻めにして一気に攻め入った。

 

 また生暖かい緑色のブレスを吐き出して攻撃している。


『ハ———』『フュ————』『ハ————』『フュ————』

 

 この魔物が使用する緑色のブレスには果実や野菜を守ってくれる魔物だった。そして……それ以外の生物には大ダメージを与える効果があるので、敵国の兵士達は瞬く間にバッタバタ倒れて行った。


 また、この魔物が作り出す技は喉元に熱気を溜めて、炎の塊の火球を作り、吐き出してくる恐ろしい魔物だった。

『ヒュ——————ッ!』「ヒュ——————ッ!』『ヒュ——————ッ!」


「あっあつ熱い!}


「ギャ——————ッ!たた助けてくれ————ッ!」


 また高い知能を身に着けて素早い動きで翻弄し、爪や角による物理攻撃だけでなく最上級魔法を放って攻撃して来るので、『メルヴェイユ王国 』は手も足も出来ず、休戦状態になった。

 「ええええい!爪と角で攻撃してくれるわ!ワ~ッハッハッハ————ッ!」

 

 ”ガリガリ”  ”バリバリ” 『ズン』 『ズン』

 

 それでも……『メルヴェイユ 王国』には、恐ろしい魔法使いロンリーが居るのだが、この『デーモン鬼龍』どこまで優れた魔物なのだろうか、更には魔法使いロンリーには魔法を使用できなくした。こうして無事に『ヴィエノワ-ル王国』は勝利を掴むことが出来た。

 

    ◇◇


 やっと『メルヴェイユ 王国』に勝利して安心していたのも束の間。レニー王子には、9歳年上の25歳の魅力的で且美しい女性が、いつも付かず離れず側にいる事に気付いた一華だった。


 レニー王子が窮地に陥ると駆け付け、影になり日向になりして支えているのだ。だから……気が付くといつもレニー王子の側にいる。


 一華は5歳だがハートはしっかり16歳だ。美しい王子レニーの事がいつの間にか好きになって、あの女性の事が気掛かりで仕方がない。こんな幼児の一華では到底勝ち目のない。怪しげで美しいあの女性は一体何者なのか?


 レニー王子も、あの美女が側にいないと暗く沈んでいる。幾ら一華が頑張ってレニー王子の気を引こうとしても心ここに有らずなのだ。この恋の行方には想像も付かない展開が待っている。💛💛💛










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