第29話 PHASE3 その2 何でここに?
そして土曜日となった。
冬馬と夏子はよく出かけるショッピングモールへと出かけた。
「確か今週にやってたかな、九州の物産の即売会」
冬馬はショッピングモールのアプリで下調べ済みだった。
「ちょうど出店していてよかったなぁ。美味しいんだよな、〇ち吉の煎餅」
冬馬にとって昔、通販で注文して以来、〇ち吉の煎餅が好きだった。
硬くないからお年寄りでも食べれるし、
何よりバラエティに富んだ味のものがセットになっていて、
楽しめるのがいい。元祖〇波屋柿の種と並んで、好物だったりした。
「へぇ、聞いたことないけど美味しいの?」
夏子にとっては馴染みのないものなので、美味しいかどうか疑問に思っていた。
「うち用にも買って食べよう。とりあえずこの期間限定の缶入りのにしようか」
冬馬は、手頃な値段で色々な煎餅が入っているものを選んだ。
「うち用にはこれかな」
更に普段は特定の日にしか売らないお徳用袋をいくつか選んだ。
商品にならない壊れた煎餅を袋詰めにしたお徳なセットだ。
「帰ったらゆっくり食べよう。これ美味しいんだよ」
冬馬は、ニコニコしていて上機嫌だった。
更に別の所で、辛子高菜と地元ではなかなか売っていない、
◯まかっちゃんのインスタントラーメンの5袋セットを購入した。
「豚骨スープがいい味してるんだな。久しぶりに食べるから楽しみだ」
「冬馬くん、楽しそうね。」
こういった地方の物産には詳しくない夏子だが、
嬉しそうに売り場を見て回る冬馬を見ているだけで満足だった。
「夏子は欲しい物ある?」
「うーん、特にないかな。」
冬馬は、おかずになりそうなものと、
おやつになりそうなものを選んで購入し、売り場を後にした。
「夏子、お昼食べに行こう。」
二人はフードコートにあるうどん屋さんで昼食を食べた。
「え、このうどん美味しい!これならいくらでも食べられそう!」
夏子にとって◯亀製麺のうどんは初めてだったようだが、
好みと合って大喜びだった。流石にお代わりまではしなかったが、
お腹いっぱいになり満足気にしている姿は微笑ましかった。
「そろそろ帰ろうか?」
「そうね、あっそうだ、何か甘いもの食べたいなぁ」
「えっ!もうお土産買ったから帰ろうよ!」
それでも夏子は、スイーツを探しにお店へ移動した。
(全く……油断も隙もない。)
そして二人が訪れた店はカフェコーナーだ。
とりあえず二人はクレープを注文する。
オーソドックスなバナナとチョコのクレープにした。
「飲み物はどうする?」
「私は特にいらないかな」
「じゃあよく行く店に行こうかな」
冬馬は生ジュースを販売している店に行った。
「ここは福袋の気前が良くてね、毎年買っているんだ。
3500円で無料チケットが10枚も付いてくるんだよね」
冬馬は一番高いメロンジュースをチケットで注文した。
普通に買うと700円以上するものだ。
「どう?味見してみる?」
「うん、ちょっと飲んでみたい」
二人は席を確保して、一緒にメロンジュースを堪能した。
「わぁ、メロンの味が濃くて美味しい」
「ここのジュースは美味しくて気に入っているんだ。
それなりの値段はするけどね」
二人は一つのジュースを代わりばんこに飲みあった。
「あれ?もしかして北野さん?」
仲良くジュースを飲んでいるところに声をかけられた。
「何で安藤さんがここにいるの?家から遠いでしょ?」
「ここにはたまに服とか見に行ってますよ。
北野さん、やっぱり彼女いたんだ?紹介してくださいよ」
まさか職場の後輩である安藤さんと鉢合わせするとは予想だにしなかった。
冬馬は、やれやれと思いながら夏子を紹介した。
「私、北野さんの後輩の安藤美里っていいます。よろしくお願いしますね」
「わたしは、冬馬くんの一応、彼女になるのかな?
南田夏子っていうの。よろしくね」
夏子は手を差し出し、安藤さんと握手をした。
「それにしてもいい話のネタですね。
真面目一本鎗の北野さんに彼女がいたとはねぇ。
みんなに話さないといけないなぁ」
「安藤さん、この事はご内密に……」
「冬馬くん、別に話してもいいんじゃない?わたしは構わないよ」
「いや、あんまりみんなに冷やかされるのが嫌なんだ。
時期が来たら話すつもりだ」
「う~ん、どうしようかなぁ?私は口が軽いから、つい喋っちゃうかも♪」
安藤さんはもの欲しそうな表情で冬馬を見つめていた。
(こいつ確信犯だな)
「わかった、こいつで手を打とう」
冬馬は、ここのジュース屋の貴重な無料チケットを1枚差し出した。
「もう一声欲しいなぁ♡」
冬馬は渋々、チケットをもう1枚差し出した。
「ありがとうございます♡流石は先輩ですね♡」
安藤さんはニコニコ顔をしていた。
う~ん、どうしても憎めないんだよなぁ。
「安藤さんはどんな服を買いに来たの?」
夏子が興味津々に安藤さんに尋ねてみた。
「私は今年、流行ってるやつと秋物の新しい服を見に来ています」
「へぇ~どんなのが好みなのか聞かせて。
わたしファッション雑誌はよく買っているから興味はあるんだぁ」
夏子が安藤さんに言うと早速、スマホでその服を検索して
「これこれー♪今年の流行なんだよぉ」
「へえーいいじゃない?」
「あ、この色可愛い♪」
とか、2人がファッションの話で盛り上がっていた。
ファッションには疎い冬馬は退屈そうにしていた。
(しかし初めて会ったのにもう仲良くなって。夏子のコミュ能力凄いなぁ)
「夏子、そろそろ行こうか」
「そうですね、南田さん、またお会いしましょうね~♡」
「あ、待って、夏子でいいわよ。ねぇ連絡先交換しましょう」
「私も美里でいいですよ。またお話してもいいですか?」
「うん、職場での冬馬くんの話も聞きたいなぁ♡」
(まさかこれが目的で連絡先の交換を?夏子って意外と策士だな)
安藤さんと別れて二人は店を後にした。
「さて、そろそろ帰るか」
「うん、そうだね。今日は楽しかったね!」
夏子は満足そうにしていた。
明日の事もあるし、リラックス出来たなら何よりだ。
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