第6話(2)口上を決めよう

「では、キャッチコピーは……?」


「とりあえずシアンのでええんちゃうの?」


 輝の問いに彩が答える。


「そうですか、それでは……」


「うん?」


「口上の方に移らせていただきます」


「ええ?」


「ちなみにこちらは変身後にポーズを取って、名乗りをあげる際に述べる台詞です」


「い、いや、あの……」


「仕切りは引き続き司令官にお願いします」


「大喜利形式継続⁉」


「はい……」


 秀が手を挙げる。


「あ、グレー、早かった……」


「はい、『戦いはいつも灰色決着! EFグレー!』」


「アカン、アカンって」


「え?」


「え?ちゃうがな」


「いつもじゃなく、たまにの方が良かったですか?」


「頻度の問題とちゃうねん」


「では……?」


「灰色決着というのがアカンやろ」


「お言葉ですが……」


「あん?」


「物事というのは必ずしもはっきりと白黒がつくものとは限りません」


「おお、社会人らしい意見だ……」


「大人どすな~」


 輝と心が感心する。彩が手を振る。


「いや、ちょっと待て、社会っていうのは確かにそういうものかもしれんけど、戦いにおいては白黒つけんと困るねん」


「それでは……どうすれば?」


「……『君とボクのシンデレラストーリー!』とか? 灰かぶりから連想したんやけど……」


「なるほど、グレーのボーイッシュさを強調すると……」


「そうや、オレンジ。女性ファンが付くんとちゃうんか?」


「なかなか良いかもしれないね……」


 秀が笑みを浮かべながら頷く。


「はい!」


「元気ええな、はい、ブラウン」


「はい、『茶々入れまっせ! EFブラウン!』」


「アカン」


「そ、即答⁉」


「茶々入れとるヒマあったら戦わなアカンやろ」


「せ、正論……!」


 躍が肩を落とす。輝が問う。


「……それではどうすれば?」


「『ニッポン、茶々々!』は?」


「日本とはまた大きく出ましたね」


「オレンジ。こういうのは多少ハッタリをかますのが大事なんよ」


「元気の良さは伝わりますが……」


「ちょっとチアダンスっぽい振りを入れたらなおええんちゃう?」


「ふむ、なるほど……それで考えてみますわ」


 躍が頷く。心が手を挙げる。


「はい……」


「ほい、パープル」


「はい、『紫煙をくゆらせて……EFパープル!』」


「アカン、アカン!」


「ええ……?」


「こっちがええ?よ」


「紫煙と私怨をかけとるんどすが……」


「かけんな、怖いな。っていうか、私怨に囚われんなや」


「はあ……」


「問題はそこやない。なんやねん、自分喫煙者なんか?」


「いいえ」


「じゃあ、ますます意味分からんわ」


「紫だけに……」


「それは分かるけど。タバコをイメージさせる言葉はちょっとな……」


「大人の女性っぽくないどすか?」


「むしろ子供への親しみやすさを押し出さんと……『グー、チョキ、パープル!』っていうのはどうや? 普段の大人しい感じとのギャップにもなるし」


「ふむ……悪くないどすなあ」


 心が頷く。


「ほな、次は……」


「はい」


「よっしゃ、オレンジ、行ってみようか」


「『元気サンサン! 殺る気マンマン! EFオレンジ!』」


「ちょっと惜しいな」


「惜しい⁉」


 輝が戸惑う。


「ああ」


「わ、我ながらいい線いっていたと思ったのですが……」


「やる気のイントネーションがな……」


「殺る気ですか?」


「ちゃうねん、なんか余計な力がこもってんねん!」


「余計な力?」


「もうちょっと爽やかに行こうや」


「爽やかに……『元気サンサン! やる気マンマン! EFオレンジ!』」


「うん、ええんちゃうか?」


「ありがとうございます」


「ほな、これで終いやな……」


「はいはい!」


「分かっとるがな、冗談や。ほな、シアン」


「『空の様に天衣無縫! 水の様に自由自在! EFシアン!』」


「え……」


「あ……ダメですか?」


 凛が不安気に尋ねる。


「……いや、ええやないか!」


「ええっ⁉」


「なんで一発回答やねん!」


「ダ、ダメでした⁉」


「ダメちゃうけど、ダメ出ししたかったわ……」


 彩が唇を尖らせる。凛が戸惑う。


「そ、そんなこと言われても……」


「まあええわ。大体決まったな」


「グッと戦隊っぽくなったな!」


 躍が笑みを浮かべる。凛も笑顔になる。


「そうだね!」


「それでは次の議題に……」


 輝が話を進める。

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