第6話(1)キャッチコピー大喜利

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「……第一回、エレクトロニックフォース作戦会議~!」


「わ~♪」


 凛の宣言に心が拍手を送る。


「はい、それじゃあね、作戦会議を始めていこうかなと思うんですが……」


「ちょっと待てや!」


「彩さん、どうしました?」


「何を人のティータイム中に、作戦会議始めとんねん!」


「いや、だってここがアタシたちの拠点ですし……」


「そうかもしれんけれども!」


「マスターはええって言うてくれましたよ」


「自分、なんやその恰好は?」


 彩が躍に尋ねる。躍は洋服の上にエプロンを付けている。


「いや、せっかくやからバイトさせてもらおうと思うて」


「ちゃ、ちゃっかりしとんな……」


「マスターが言うには、どうせ客はほとんどこないからって……」


「ええんか、マスター、それで⁉」


 彩が声を上げる。


「まあ、ともかく作戦会議を始めましょう」


「だから勝手に……!」


「司令官、お願いします!」


「え……?」


「司令官!」


 凛がキラキラとした瞳で彩を見つめる。


「し、司令官か……そういえばそうやったな……ま、まあ、ええか!」


「ありがとうございます!」


「チョロい……」


 秀が呟く。


「とりあえず司令官言うとけばええようどすな……」


 心が笑みを浮かべる。


「それで⁉ どんなことを会議するんや⁉」


「輝っち!」


 凛が輝を促す。


「まずは……変身ポーズと前口上についてですね」


「はあ⁉」


 彩が驚く。


「大事なことだよね~」


 凛が頷く。


「待てや!」


「え?」


「え?とちゃうねん、会議で何を決めとんねん!」


「ダメですか?」


「ダメっちゅうか、なんちゅうか……」


「そうだ……」


 秀が髪をかき上げながら口を開く。


「うん?」


「もっと優先すべき事項があるよ……」


「お、おう、言うたれ、言うたれ」


「『キャッチコピー』さ!」


「はあん⁉」


「あ~なるほど~」


 凛が両手をポンと叩く。


「なるほどちゃうねん!」


「盲点だったな……」


 輝が腕を組む。


「誰も見てへんから!」


「いいえ司令官、プレゼンをする上で重要でしょう……」


「プレゼンってなんやねん⁉」


「……というわけで、皆で考えよう……皆、フリップは行き渡ったな?」


「は~い♪」


「もらったよ」


 心と凛が手を挙げて応える。


「いつの間に配っとんねん!」


「では、思い付いた者から、どんどん発表してくれ」


「大喜利形式⁉」


「司令官、司会をお願いします」


「しかもあたしが仕切りかい!」


「よっしゃ、じゃあウチから!」


 躍が元気よく手を挙げる。


「げ、元気やな……」


「こういうのは勢いが大事なんです!」


「じゃあ、ブラウン、行ってみようか……」


「はい、『遊び人だらけ!』」


「う、う~ん……」


「どうですか⁉」


「遊び人はイメージが良くないんちゃうんか? eスポーツがモチーフとはいえ……」


「アカンですか。まあ、初っ端は大体こんなもんやからな」


「大喜利の流れとかは気にせんでええねん」


「はい……」


「ほい、グレー」


「はい、『戦いとはゲームのようなものさ……』」


「……なんか鼻につくな」


「は、鼻につく⁉」


「『さ……』で終わるところが特に……」


「は~い」


「ほな、パープル」


「はい、『女子たち 遊び戯れ 今日も行く』」


「ちょっと長いな……」


「長いどすか……」


 心が唇を尖らせる。輝が頷く。


「そうだ、長いぞ……はい」


「ほな、オレンジ」


「はい、『戦いは一日一時間!』」


「時間の話ちゃうねん! どこかで聞いたことあるセリフやし!」


「ち、違うのですか? セリフに関しては名人へのリスペクトです……」


「そう思い通りに行かんときもあるし、ていうかそれもそれで長いし!」


「こ、これでも長いのですか⁉」


「大体、三十分……コマーシャルとかを考えたら二十四分くらいや」


「み、短い!」


「はい!」


「ほい、シアン」


「『PEACE平和ボタン連打‼』 どうですか⁉」


「ほう……」


「ダ、ダメですか?」


「『PEACE』と書いて『平和』と読ませたか……案外悪くないかもな」


「あ、ありがとうございます!」


 凛が頭を下げる。

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