第3話(4)ブラウン、参上

「カカカッ、なんだか分からんが、人間が多いカ~! お前らやってしまえカ~!」


「はっ!」


 カラス怪人の号令を受けて戦闘員たちが散らばる。


「きゃああ!」


 女性たちが悲鳴を上げる。


「まさかこんなところにまで怪人が現れるとは……」


「想定外どす……」


「みんなが危ない! 輝っち! 心ちゃん!」


「ああ!」


「ええ!」


 凛と輝と心が、コントローラーを装着したコネクターに繋いで叫ぶ。


「「「『コントロールOK! ゲームスタート!』」」」


「⁉」


 凛と輝と心が眩い光に包まれ、仮面とタイツで顔と体を覆う。


「EFシアン!」


「EFオレンジ!」


「EFパープル!」


「よし!」


「ふっ、決まりましたなあ……」


「良かったよ! パープル!」


「シアンはんもなかなか良かったどすえ」


「ありがとう! パープルもとっても雅な感じが出ていたよ!」


「さすがお目が高い……その辺りにはだいぶこだわっていますからなあ……」


「シアン! パープル! 呑気に褒め合っている場合か!」


「ああ、もちろん、オレンジはんも素敵でしたえ?」


「カッコ良かったよ!」


「別にわたしも褒めろとは言っていない!」


「え?」


「そうなんどすか?」


 シアンとパープルが首を傾げる。


「野生味がよく出ていたと思ったんだけど……」


「なんだ野性味って!」


「パープルの雅な感じに対抗したのかと……」


「していない! そもそもなんだ雅な感じって!」


「さあ?」


「さあ……?」


 シアンとパープルが揃って首を傾げる。


「なんでパープルまで分からないんだ⁉」


「まあまあ、それはともかく……」


「ともかくって⁉」


「皆さんを助けまひょ」


「! ああ、そうだな!」


「はははっ!」


「きゃあ!」


「待ちなさい!」


「む⁉」


「『弱キック』!」


「うおっ⁉」


 シアンの繰り出したキックで戦闘員は倒される。


「ひひひっ!」


「いやあ!」


「待て!」


「ぬ⁉」


「食らえ!」


「うわっ⁉」


 オレンジの放った銃撃を受けた戦闘員は倒される。


「ふふふっ!」


「た、助けて!」


「お待ちなさい!」


「ん⁉」


「それ~!」


「ぐわっ⁉」


 パープルが腕をかざすと、黄色の球体が現れて、雷が戦闘員に落ちる。


「なるほど、黄色い球体は雷の効果があるんどすか……勉強させてもらいました……」


「カ、カラス怪人さま!」


「ど、どうしたカ~!」


「せ、戦隊が現れました!」


「なっ⁉ いくら戦隊飽和時代とはいえ、まさかこんなところに……」


「ど、どうしますか? 一旦体勢を整えますか?」


「そうはさせないよ!」


「!」


 シアンたちがカラス怪人に迫る。


「逃がしまへんで!」


「ああ、ここで仕留める!」


「だ、誰だ、お前らは⁉」


「『エレクトロニックフォース』だよ!」


「全然知らないカ~!」


「ぜ、全然知らないんだ……」


 シアンががっかりとする。


「ら、落胆するな、シアン!」


「でもオレンジ……全然知られていないというのは……」


「まだ日が浅いんだから仕方がないだろう!」


「それにしたって……」


「面倒な奴だな!」


「……陰ながら悪を挫くというのもなかなか乙なもんちゃいますか?」


「か、陰ながら?」


「ええ、そうどす」


 パープルが頷く。


「そ、そうだね! パープルの言うとおりだ!」


 シアンが顔を上げ、前に進み出る。


「ふふっ、なんとも素直な方どすなあ~シアンはんは……」


「……」


 笑うパープルをオレンジが黙って見つめる。


「……なにか?」


「……皮肉で言っていないか?」


「いえいえ、本心どすえ」


「まあ、そういうことにしておこう……」


「覚悟しろ! 『弱パンチ』!」


「ちっ!」


「なっ⁉ と、飛んだ⁉」


 カラス怪人が上に飛んで、シアンの放ったパンチをかわす。


「カカカッ! 空なら手の出しようがあるまい!」


「オレンジ!」


「ちっ……狙いが付けづらい……」


 オレンジが銃を構えながら舌打ちする。


「それならば、わたくしの出番どすな!」


「‼」


 パープルが手をかざすが、無色の球体しか出てこない。何も起こらずパープルが首を捻る。


「……あら?」


「パ、パープル、どうしたの⁉」


「あ~そういうことどすか……」


「ど、どういうこと⁉」


「いや、これはいわゆる『スカ』ってやつどす」


 シアンの問いにパープルが答える。


「ス、スカ⁉」


「ふふっ、なにをするかと思えば! 上空から貴様らを襲ってやる!」


「マ、マズい!」


「『コントロールOK! ゲームスタート!』」


「えっ⁉」


 躍が眩い茶色の光に包まれ、茶色の仮面とタイツで顔と体を覆う。


「EFブラウン!」


「あ、あなたはさっきの優勝者! あなたもコントローラーを⁉」


「せや! こんなこともあろうかと持ち歩いとった! まあ、持ち物は預けとったから、正確に言うと持ち歩いてはおらんかったけど!」


「一人増えようと同じことカ~!」


「せいっ!」


「がはっ⁉」


 空から急降下し、ブラウンに襲いかかったカラスだったが、ブラウンは逆立ちをして、その体勢から鋭い蹴りを繰り出して、カラス怪人の腹を蹴る。


「へへっ! タイミングばっちし!」


「くうっ!」


「ま、また空に!」


「紫の姉ちゃん、その丸っこいのをこっちに投げてや!」


「ええっ⁉」


「早く!」


「は、はい!」


「おっしゃあ!」


 ブラウンがどこからか取り出したバットを振ってパープルの投げた球体を豪快に打ち上げ、カラス怪人の体に当てる。


「ぐはあっ⁉」


 カラス怪人が、あえなく落下する。オレンジが呟く。


「どこかで聞いた名前だと思ったが、スポーツゲームの有名プレイヤーだったか……」


「大阪名物、通天閣打法や、どんなもんじゃい!」


 ブラウンはバットを肩に乗せて、声を上げる。

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