第2話(2)女子大へ行ってみた

「いやあ、京都はやっぱり交通機関が充実しているよね~」


「……ふああ~」


「おいおい輝っち~? ちゃんと寝ないとダメだよ~?」


 あくびをする輝を凛がからかう。


「誰が言っている、誰が! お前がなかなか寝かせてくれないから!」


「え……?」


「ん? はっ⁉」


 輝は周囲から視線が集まっていることに気付き、顔を赤くする。


「いや~輝っち、これまた大胆な発言を……」


「う、うるさいな! 大体……」


「うん?」


「なんでお前がここにいるんだ⁉」


「いや、用事があるんだよ」


「誰に?」


「輝っちに」


 凛が輝を指差す。


「わたしはないぞ!」


「アタシはあるから」


「勝手なことを言うな、大体わたしは専門学校の授業があるから……」


「大変だね~」


「そういうお前だって、短大はどうした?」


「あ~それはちゃんと出るよ、ご心配なく」


「そうか……」


「ってかさ、昼休みは空いてるんでしょ?」


「ま、まあ、それはそうだが……」


「じゃあ、その辺りでまた集合しようよ」


「どこにだ?」


「昨日言っていた場所だよ」


「ああ……」


 輝が思い出したかのように頷く。


「行ってみる価値はあるでしょ?」


「適当に言ってみただけなんだが……」


「いや、案外いい線突いていると思うんだよね……」


「そうか?」


 輝が首を傾げる。


「そうだよ」


「今日じゃなきゃ駄目なのか?」


「やっぱり人が多いのは平日でしょ?」


「まあ、それはそうだな……」


 輝が頷く。


「それじゃあ、後でまた集合しよう!」


「そんなに時間は取れないぞ?」


「大丈夫、大丈夫♪」


 2人は一旦別れる。


「……ったく……」


「ごめん、ごめん、お待たせ~」


 凛が謝りながら集合場所に現れる。


「まったく、言い出しっぺが遅れるな……」


「いやいや、輝っち、そこは違うでしょ~」


「ん?」


 輝が首を捻る。


「『わたしもちょうど今来ばかりだから……』って、ちょっと恥ずかしがりながら応えるところでしょう?」


「な、なんでそんなカップルみたいなことをしなくてはならんのだ!」


「え~誰もカップルなんて言ってないんだけど~?」


 凛が悪戯っぽく口元を抑える。


「う、うるさい! ふざけるなら帰るぞ!」


「ああ、ごめんごめん、ちょっと待って……」


 その場を離れようとする輝の前に立って、凛が両手を合わせて頭を下げる。


「ふん……」


「機嫌治った?」


「別にそこまで機嫌を損ねてはいない……」


「それなら良かった」


 凛が笑顔を浮かべる。


「ただな。提案しておいてなんだが……」


「え?」


「ここを探すのは大変なんじゃないか?」


 輝が指し示した先には広大なキャンパスが広がっていた。


「お~さすが、名門女子大だね~建物も立派だし~」


 凛が感心する。


「学生数も桁外れに多い……わたしたちと同様にコントローラーをもらった者を見つけ出すのは困難だ……」


「でも、輝っちの推測はあながち間違ってはいないと思うんだよね~」


「そうか?」


「うん、アタシたちと同世代の女の子にコントローラ―やコネクターが配られた可能性は十分に考えられると思うよ」


「ふむ……しかし、この規模ではな……」


 輝が後頭部を抑える。


「なんでお昼に指定したか分かる?」


「そういえばなんでだ?」


「それは行けば分かるよ!」


「あ、お、おい!」


 凛が大学構内に入っていく。輝が慌ててついていく。


「……」


「なるほど、学生食堂か。いや、この場合はレストランと言った方が良いか……」


「ここなら多くの学生が出入りするよ」


「まあ、それは分かるが……この後はどうする?」


「え?」


「まさかずっと周囲の話に聞き耳を立てているのか?」


「う~ん、片っ端から聞き込みする?」


 凛が親指を立てて横にする。輝が首を振る。


「やめろ、つまみ出されるのがオチだ」


「どうしよっかね~?」


 凛は腕を組む。


「そこからはノープランだったのか……」


「一応eスポーツ同好会みたいのはあるみたいだけど……」


 凛が端末を取り出して、検索画面を輝に見せる。


「ほう、お堅いイメージがあったが、そういうのがあるのか」


「とりあえず、この同好会の方にDMを送ってみようか?」


「……なんて送るつもりだ?」


「『エレクトロニックフォ―スですか?』って……」


「即ブロックされて終わりだろう!」


「あ、送っちゃった……」


「おいおい……」


 輝が呆れる。


「あ、返信来たよ……」


「ええっ⁉」


 輝が驚く。

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