第2話(1)お泊り会

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「という訳でさ……」


「ああ……」


「連絡先も交換したわけで……」


「うむ……」


「今度はアタシの部屋でお泊り会をしなくちゃね~」


「お、お泊り会って! ま、まさか泊まって行く気か⁉」


「うん!」


 凛が力強く頷く。ポニーテールが縦に揺れる。


「い、一点の曇りもない眼!」


 輝が眩しそうに眼を逸らす。


「今後としての方針を確認したいし……」


「ほ、方針ってなんだ?」


「いや、同じ戦隊なんだし……」


「同じ戦隊って⁉」


「うん」


「そんなこといつ決まった?」


「さっき」


「さっき⁉」


「言ったじゃん」


「了解はしていないぞ!」


「え~」


 凛はぷうっと頬を膨らます。


「え~じゃなくてだな……」


 輝が頭を掻く。


「それじゃあ代わりにさ……」


「代わりに?」


「アタシはeスポーツチームを立ち上げようと思うんだ」


「あ、ああ……」


「それについてのミーティングをしようか」


「同じことじゃないか!」


「え?」


「え?じゃない! 大体なんでお前のeスポーツチームにわたしが関係あるんだ⁉」


「え~だって輝っちが言い出しっぺじゃん」


「あくまでも提案しただけだ! あと輝っちってなんだ⁉」


「あだ名」


「それは分かるが!」


「だってさ、所属チーム決まっていないんでしょう?」


「ああ、そうだな……」


「もうアタシのところで良いじゃない」


「良くはないだろう!」


「FPS・TPS部門は任せるから」


「一人しかいないのに部門も何もあるか!」


「そうか、分かったよ……」


「ええ……?」


 凛が輝の左肩にポンと手を置く。


「輝っちには我がチームのアンバサダーをお願いするよ」


「いらん!」


 輝は肩を突き上げ、凛の手を払う。凛が首を傾げる。


「え~ダメ?」


「肩書の問題じゃない! 大体、アンバサダーとか曖昧だろう!」


「バレたか……」


 凛が舌を出す。


「バレるわ!」


「う~ん、でもさ~」


 凛が首を傾げる。


「……なんだ?」


「同じようなコントローラーとコネクターが送られてきたわけじゃない?」


「!」


「これはなにかあると思うんだよ」


「まあ、それは確かにあるかもな……」


 輝が腕を組む。


「でしょ? きっと前世からの運命的なやつがさ~」


「そこまで大げさなものじゃないだろう」


「え~そうかな?」


 凛がガッカリする。


「そうだ。何らかの作為的なものは感じるが……」


「それで思ったんだけどさ……戦隊って5人くらいでしょ?」


「例外もあるにはあるが、まあ、それくらいだな……」


 輝が頷く。凛がパッと顔を明るくする。


「つまりだよ!」


「さっきから声が大きいな……近所迷惑だ!」


 輝が凛を注意する。


「え~輝っちの方が叫んでいると思うけど……」


「誰が叫ばせているんだ、誰が……!」


「とにかくアタシらの他に後3人はいるってことだよ」


 凛が指を三本立てる。


「む……」


「そう思わない?」


「いや……案外2人だけかもしれんぞ」


「ええっ⁉ ……まあ、それはそれで良いか」


「良いのか⁉」


「目立つじゃん、この戦隊ヒーロー飽和時代にさ」


「そういう目立ち方は嫌だな……」


 輝が苦笑する。凛が勝手に話を進める。


「2人だとコミュニケーションは取りやすいと思うけどね」


「既に大変なのだが?」


 輝が凛をジト目で見つめる。凛が首を捻る。


「2人だとマズいことある?」


「純粋に戦力が不足気味だろう」


「あ、そうか……やっぱり後3人を探した方が良さそうだね……」


「どうやって探すんだ?」


「そりゃあ、SNSでさ」


 凛が輝の端末を掲げる。輝が慌てる。


「ま、待て! 何を人のアカウントで発信しようとしているんだ⁉」


「いや~自分のアカウントだとさすがにちょっと恥ずかしいし……」


「人のでやるな、乗り気なのはお前の方だろうが!」


「う~ん、別アカウントを作るか~」


「ああ、まあ、それが無難じゃないか……」


「えっと……『夕餉戦隊エキセントリックフィフス』……」


「『遊戯戦隊エレクトロニックフォース』だ! 全部間違っている!」


「……まあ、その辺は追々考えようか?」


「飽きるの早いな! っていうか帰れ!」


「だって、もう終電終わってるし……」


「む……し、仕方がないな、今回だけだぞ? 私は明日早いから……」


「よっし、『金鉄』の99年モードで対決しよう♪」


「全然寝る気無いだろう!」


 輝の声が虚しく響く。

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