第9話 三馬鹿トリオが結成したみたいですよ


 けつ王は三馬鹿トリオ。

 あおい妲己だっき、青年を注視し。

 後ろに座る。 

 白い大型犬を見て呟く。



「……よもや、お主ら」



 桀王は何かに察したのか。

 頷いてから続ける。



「余を暗殺未遂した。其方らの所業。本来なら死罪に値するが。今日の余は気分が良い。もし、其の命、夏王朝の為に尽くすというのなら。先の件、不問に、不問に……」



 桀王は先の情景を思い出し。

 眉間にしわを寄せ。

 言葉を繋げる。



「致せぬ」



「不問にしねぇのかよ!」



 碧の突っ込みに。

 桀王はたどたどしく答える。



「この場で処刑を申し渡さぬだけ温情と思うのだ。……雨が降ってきたな。一度、王都へと戻ろうか。お主らの処遇は其処にて決める」



 王の側近である。

 関龍逢かんりゅうほうが理解出来ぬ表情で言う。



「なっ、このような得体の知れぬ者達を王都へと招くつもりですか。許可さえ頂けたら。この場にて処断致しますよ」



「よい」

「ですが!」



 桀王は重い口調で関龍逢に言い放つ。



「……お主も、余が下した決断に異を唱えるのか」

「…………っ」



 関龍逢は乱雑に頭を掻いてから。

 三人に言い放つ。



「王の寛大な心に感謝することだな。さっさと着いて来い。処刑囚一、二、三号」



 妲己は人差し指を唇に当ててから言う。



「えーっと、処刑囚一が、詐欺師さんで。二がツンデレ君。三が哮天さんですか。……嗚呼、二人はどうでも良いですけど、哮天さんだけは赦してあげて下さい!」



「「三はオメェだよ!」」



 碧と青年が同時に突っ込む



「ええぇ!」




 桀王と関龍逢の背後を。

 三人は着いていく。


 

 暫く歩いていると。

 青年は不安を漏らす。



「王都に入ったら、そのまま拘束されて処刑もあるんじゃねぇのか」



「そ、そうですよ。処刑されなくても、仕事と言う名の、恐ろしい重労働をさせられるかもしれません」



 妲己は怯える表情で続ける。



「昼寝が三時間しかくれなかったり。週休が五日しかくれないとか。嗚呼、考えただけでも恐ろしいです。……と言うことで、此処は宝具に解決して貰いましょう」



「また、縄と石みたいなふざけたモン出すんじゃねぇよな」



 青年が呆れるように言うと。

 妲己は真剣な眼差しで言う。



「甘く見ないで下さい。私は、働くぐらいなら死を選ぶ女の子ですよ。此処は、宝具、混元金斗こんげんきんとを使います」



「その変な壺、どう使うんだ」



「壺の口を詰め込みたいモノに向けます。すると、あらビックリ」



 妲己は前を歩いていた。

 関龍逢に向けると。



「……ん? っ、わぁぁぁ!」



 関龍逢は圧縮され。

 小さな壺の中に入った。



「このように成人男性でも壺の中に入っちゃいます。後は、宝具、ナワトイシを使って。この壺を河川に沈めればOKです」



「お前にしては、完璧じゃねぇか!」



「はい、完璧です。ただ、壺の口を見られてはいけないのが欠点ですけどね。さて、次は、この壺の口を、あの王に向けるだ……」



 妲己が得意気に言っていると。

 其の様子を見ていた。

 桀王が妲己をガン見する。



「面白いものを持っているな。で、その壺を一体誰に向けるのだ」



「も、勿論、王には向かう愚か者ですよ。ね、ツンデレ君」

「お、おう」



「……早々に、関龍逢を壺の中から解放してやれ」



「は、はい!」



 妲己は乱雑に壺を叩く。



「でてきてください。おっ、出てきました」



「な、何が起こったんだ」



 関龍逢は先の状況が理解できず。

 困惑していると。



 碧は冷静な口調で。

 桀王に問いかける。



「……桀王。あんた、俺らのこと何処まで知ってやがる」



「さっき見知った関係であろう」



「とぼけんじゃねぇよ。俺らのこと何か知ってんだろう。だから、宝具を見ても驚きゃしねぇし。暗殺未遂した俺らを何かと理由をつけて信任しようとする。隠していることを正直に言え」



 桀王は含みある笑みを浮かべ。

 口を開く。


「まぁ、隠す理由もないか。……お主らを信任したのは、暗闇の巫女から。お主らの存在を聞いておったからだ」



「暗闇の巫女、だと?」



「宮殿の奥に住まう巫女であってな。大きな政策や戦が生じる際。彼女の下に行き。夏の王は神託を貰うのだ。……そして、其の神託は必ず当たる」



「おもしれぇな。ちょっと興味出てきたぜ。その暗闇の巫女ってヤツにな」



 碧らは王都へと進み続ける。



 其の道中で。



 妲己ちゃんがやらかすとも知らずに。

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