第4章 決戦

第36話 明かされる真実


「な……」


シバが絶句していた。


「なんで、ハコガラ教の名前が出るんですか……?」

「報告の会話にハコガラ教って名前が出てたの」


申し訳なさそうにナイラが告げた。


「彼、上手くいってよっぽど嬉しかったみたい。私たちがまんまとやってきたこととか、自分の手柄で足止めをしたこと、あと人質の場所も言ってくれた。攫われた人は大聖堂の地下に幽閉されてる」

「かーっ、俺らがいたとこじゃねぇか!舐め腐りやがって!」


パジーが怒りのままに叫ぶ。


「報告の相手はニコラって呼ばれてた。けど、声は昨日教祖と一緒にいたハルネリアって人と同じ」

「じゃあ、あの女が指示を出してたのか」

「多分」


ナイラが頷くと、暗い表情をして言った。


「……それで、ごめん。実は二人に隠してたことがあるの」

「ん……?なんだよ改まって」


ナイラはしばし言い淀んだが、顔を上げて言った。


「実は、ニコラって私のいた家の古株の人と同じ名前なの」

「……あぁ?」

「直接会ったことはないから、同一人物かはわからないんだけど。私たちの長女みたいな立ち位置だった。母の右腕みたいな人」


ナイラが指先を弄りながら続ける。


「事件の話を聞いたときは、過去の話するつもりなかったから、そのままにしてて……。今まで隠しててごめん」


ナイラが頭を下げると、パジーが笑った。


「気にすんな。俺らだけじゃ、そもそも教団に行き着くこともできなかった。お手柄だよ」

「うん」


褒められて少し照れるように、ナイラは下を向く。

すると、シバが間に割って入るように訴えた。


「ま、待ってください!まだハコガラ教が黒幕だとはわからないじゃないですか!」

「いや、ほぼ黒だろ……」

「た、例えもしハルネシア様が犯人だとしても、メルク様は何も知らないかも知れないですよ!ね?関係ないですよね、ナイラ?……ね?」


シバが懇願するように問いかける。


「そう、だね……」

「なんで目を逸らすんですか!ねぇ、ナイラ!」

「同情はするが、腹を決めろ。お前がジタバタしても事実は変わらねぇんだ」


パジーの戒めに、シバは力なく頭を垂れた。


「……はい」

「しかし、問題はどうやって行くかだな……」


 パジーが翼を組む。

 車が壊された今、三人の移動手段は我が身一つしかない。


「あれだけ大騒ぎしたのに、誰も様子を見にこなかったね。隣家なんてないみたい」


ナイラが周囲を見て冷静に言う。


「おっちゃん、ここら辺の地理わかるか?ここから人のいる場所までどれくらいかかるかな?」


パジーの質問に、運転手が眉を寄せた。


「歩いてだろう?二時間くらいかなぁ」

「やっぱ、間に合わねぇな。せめて署への連絡手段がありゃあ……。あ、マヤから共鳴器奪うか?」

「でも、今署で動けるのはアンナだけです。どちらにしろ間に合わないのでは……」


シバが悔しげに唇を噛んだ。

そのとき、四人の背後から懐かしい張りのある声が聞こえてきた。


「お困りですし?」



――――――――――――――――――――


次話、あの人が再登場します。





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