4章第3話 ダークフォレスト

 廃宿、ダークフォレスト。元々はウィンドウが所有する廃宿だが、一時的に私が管理することになった。


 うさ耳のメイドさん達も私の言う事を聞いてくれる。また、お小遣いもなさそうなので与えてあげる。


 そんな気持ちでダークフォレストの宿内を歩くが、部屋はどこも綺麗。うさ耳のメイドさん達は、毎日掃除は欠かしていない。


 また、私の要望にも応えてくれる。例えば私が紅茶とケーキが欲しい時。


「あのさ、紅茶とケーキはある?」


「はい、紅茶はミルク、レモン、ストレートとあります。ケーキはショートケーキ、チョコレートケーキ、ホットケーキとあります」


「ホットケーキか……」


 ホットケーキはまあ、ケーキかと思い私はレモンティーとホットケーキを頼んだ。理由はホットケーキがどのような物か気になるから。


 しばらくして金髪ショートのうさ耳のメイドさんがパンケーキとレモンティーをお盆に乗せて持ってきた。


「お待たせしました。パンケーキとレモンティーでございます」


 私は1階の大広間の机でパンケーキとレモンティーが置かれると驚く。


 パンケーキは上にグルグル巻きのホイップ、周りにスライスカットされたキウイフルーツとイチゴとマンゴー。それにはちみつがかかっている。


 レモンティーはティーポットの中にレモンの入った紅茶。金髪ショートのうさ耳のメイドさんがティーポットを持ってティーカップに注ぐ。


 こういうのはうさ耳のメイドさんがやってくれるようだ。


「すごいねこれ」


「とんでもありません。これが私達の努力でございます」


 ホットケーキは甘い。甘すぎずホイップとはちみつの味がマッチしている。


 ほっぺが落ちるほどのおいしさで、ホットケーキをある程度食べた後、レモンティーを飲むとレモンの味に紅茶のストレートティーが合わさって甘さに侵された舌を直してくれる。


 これを繰り返すことで食事が進む。


 このような食事は、これからチェスのデスゲームを行う者とは思えない感じだろう。


 しかし、これからそのデスゲームの準備をするのだ。


 食事を終えた私はうさ耳のメイドさんにチェス盤を用意するように伝える。そしてレモンティーを入れてくれた金髪ショートのメイドさんには赤髪のロングヘアーのうさ耳メイドさんと一緒にロープで体を締め付ける拷問道具を用意するよう頼む。


 これに金髪ショートのうさ耳のメイドさんが答える。


「チェス盤はありますがレーモン様がお求めの拷問道具があるかどうかは分かりません」


「そうなんだ。一応探してみて」


「かしこまりました」


 うさ耳のメイドさん達はすぐにチェス盤や拷問道具を用意した。


 チェス盤とチェスの駒はすぐに用意されたが拷問道具はまだ用意されなかった。


 私は暇つぶしでレモンティーを飲みながら、青髪セミロングのうさ耳のメイドさんとチェスをする。


 青髪セミロングのうさ耳のメイドさんは私のチェスの強さを褒めたたえる。


「さすがはレーモン様でございます。ウィンドウ様以上にお強いのではないですか?」


「そうかな?」


 勝ったとはいえ青髪セミロングのうさ耳のメイドさんも強かった。確実にどの駒を取るべきかとか駒の移動方法を熟知し、対策出来ている。また、決断力もある。


 チェスの大会があれば優勝も出来そうだ。


 それでも青髪セミロングのうさ耳のメイドさんは私を褒める。


「はい、ウィンドウ様は何度かチェスで私と対戦いたしましたが、私に勝てたのは4度くらいです。その4度は私も本気ではなかったのですが、まさか最初からレーモン様が本気の私に勝つとは」


 青髪セミロングのうさ耳のメイドさんの話では、本気を出しているかどうかは分からないように私は感じる。だからもう一度チェスをやろうと私は頼み込む。


「本当に本気? 4度ウィンドウに本気出さずに負けたんでしょ? 本気だったらウィンドウに負けないんだよね?」


「はい、私の本気はウィンドウ様には遠く及びません」


「私も今の話を聞いてあなたが本気を出しているとは思えない。だから再戦しよう」


「かしこまりました」


 青髪セミロングのうさ耳のメイドさんを先攻にしてチェスを再戦した。


 彼女のホーンの動かし方にビショップやナイトでキングを守り、クイーンでキングを取らせないようにする守りの陣形。


 ルーク2つでうまく倒せないかどうか悩む。


 私を悩ませるほどの強さ。しかしそれも簡単に崩せる。青髪セミロングのうさ耳のメイドさんでもミスをすることがある。


 チェスはミスをすれば相手に隙を突かれる。チェスは相手のミスを見つけられるかどうかの探り合い。


 1つのミスで駒の進みと戦況が変わり、駒を失うと当然失った者は焦る。


 そしてミスを連発する。その隙を見逃さず、チェックメイトへ追い込む。


 冷静な感じの青髪セミロングのうさ耳のメイドさんだったが、1つのミスを犯した時点ですでに勝敗は決した。


 駒を多く失えば、あとはキングが相手の駒に囲まれてチェックメイト。これがチェスだ。


「あなたは強かった。でも1つのミスを見逃さない私の勝ち」


「さすがで」


 ちょうどこのチェスを終えた時に金髪ショートのうさ耳のメイドさんが拷問道具を持ってきた。

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