4章第4話 裏カジノ姫を誘い出す

 私が廃宿ダークフォレストでチェスの準備を行っている頃、ウィンドウは私の対戦相手となる者を探していた。


 その者はスプリング王国にいるようで今でも王国の裏カジノで大金を荒稼ぎしているようだ。多額の借金がありながらもギャンブルがやめられない20代前半の女。


 それでいて最近はチェスで大金を得てはその金を美容やらかわいい服で身にまとい、借金を重ねているとか。


 当然借金は返さないし、借金取りが取り立てに来れば容赦なく殺す。


 そもそも自分にとって嫌なことがあれば癇癪を起すタイプで、その時のストレス発散でギャンブルとかかわいい服に美容を重ねているわけだから金などいくらあってもすぐになくなって当然だ。


 そんなクズ野郎を見つけ出して私と対戦させるために、ウィンドウはストーム王子に出会う。


 まずはこれまでの報告をする。


「ストーム王子、ただいま戻りました」


「おお、ウィンドウか。レーモンは?」


「今は私の別荘に」


「そうか、それでメサイア国はどうだったか?」


「はい、すでに滅ぼされた国で、いるのは魔物くらいでした」


「そうか。それなら危険だな。温泉はどうだ?」


「魔物が多く、温泉など見つける余裕はありませんでした。しかし、面白い者達がおりました」


「面白い者達?」


「はっ、アマクサとかいう滅んだ国で自ら王子と言っているものです。今は廃墟の屋敷に住んでいます」


「なんじゃそりゃ。まあいいや。いずれそのアマクサに会うこともあるだろう。それで、まだ何かあるようだな」


「はっ、折り入ってお願いがございます」


 ここからがウィンドウにとっては本題だ。レーモンはチェスが強く、このチェスでレーモンと対等に戦える者がいないかを聞いた。するとストーム王子には心当たりがある人物をウィンドウに教える。


「レーモンのチェスの相手か。あの女がいいか?」


 ストーム王子の言うあの女、その者こそ私の対戦相手となるサーキュ。彼女は借金が多いが学んでいる女なのだろう。最近のギャンブルでは大金を獲得し、特にチェスの賞金がかかった大会では優勝しているようだ。


 とはいえ金遣いが荒いせいで借金金貨200枚以上。おまけに見た目は美少女なのに性格は最悪。


 ウィンドウがどう思ったか分からないが、ストーム王子にサーキュとレーモンをチェスで勝負させることを頼み込む。


「レーモンとその女をチェスで勝負させてください。ただしレーモンには考えがあるようで」


「考えだと?」


「その女には命を懸けることになるチェスになりますがよろしいですか?」


「デスゲームというところか。確かに奴は俺もいい野郎だとは思っていない。もしチェスで負けて死ぬというならそれも運命だろう。奴が調子に乗って人を殺したり借金をためたりでな」


 ストーム王子もサーキュのことを良くは思っていなかった。何しろ自分の部下にもサーキュはお金を貸していたようで、返せなくなって取り立てに来ると、サーキュはそのストーム王子の部下を殺してしまっている。


 これは明らかに指名手配になる案件。それでもサーキュが捕まらないのは、サーキュを守る者によってかばわれたり、裏カジノや安宿などの見つかりにくい場所に潜伏しているからだろう。


 しかし、そんな生活も終わり。これからウィンドウによってとっておきのチェスを行えるという話をちらつかせ、廃宿ダークフォレストで行うチェスで負けて死んでもらうのだから。


「ストーム王子、お許しは問題ありませんか?」


「問題ない。レーモンにもよろしく伝えてくれ。あとその女の名前はサーキュ。噂だとスプリング王国の裏カジノで大金をかけたチェスをやりまくっているとか?」


 ストーム王子に許可をとったウィンドウは、スプリング王国の港にある闇組織が経営する地下の裏カジノに行き、同じ猫耳の亜人、トメイトと出会う。


 トメイトは赤の髪色のショートヘアーで黄色い色の目に赤いゴシックドレスを着た亜人。


 身長140センチで小柄なことから幼児な感じだが、年齢はウィンドウと同じ。ウィンドウが闇組織で働いていた時の同期だ。


「やあ、トメイト。元気にしてた?」


「ウィンドウ、久しぶりだねえ。今は表で王子様の護衛なのかな?」


「そんなところ。トメイトはここで裏カジノの経営?」


「そうだよ。オーナーだけど仕事は部下任せだよん」


「相変わらずやることが汚い」


「それはウィンドウもでしょ? それで今日は用事だよねえ?」


「そう、この店に大金をかけたチェスで勝ちまくっている女、サーキュを知らない?」


「知っているよ。あの女はむかつくんだけど、大金も持っていこうとして私の部下が始末しようとしたら返り討ちにあってさ。それで最近は金だけ持ってかれて困っているんだよ」


「そうか、じゃあ問題ない」


「問題ありありだって。ウィンドウ! 何とかならないの⁉」


 トメイトも困っている感じだ。しかしストーム王子の許可は得たし後はサーキュを誘って廃宿ダークフォレストに誘うだけ。


 大金がもらえるならサーキュもデスゲームとはいえ乗ってくるはず。


 ウィンドウはそう思っていた。

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