3章第2話 サバイバル
アマクサ王子とゴーケツによる2人っきりの生活はサバイバルそのものだ。本来2人は国を出て他の町へ行き援助を行う方が幸せになれるはず。しかしそれをしないのは彼らが今の生活を楽しんでいる証拠だ。
アマクサ王子による魚釣りに貝取り。ゴーケツは立ちはだかる魔物を蹴散らしていた。
「アマクサの兄貴、海辺だと魔物も厄介ですぞ。ミイラは強いのとフグの魔物まで」
フグの魔物に海蛇の魔物も出てくる。海の魔物は弱くてもFランクであるため、数で攻めてくればゴーケツでもしんどい。
これに対してアマクサ王子は決断する。
「欲はかかないほうがいいな。今日はこれくらにして退散だ」
アマクサ王子はゴーケツに守られながら退散した。
アマクサ王子がコテージへ戻ると、ゴーケツに魚介類と貝、そして小麦粉などを用意させてパスタを作らせた。
パスタはゴーケツ自らが1から作って、のりや油といったもので痛めて作り上げた。
これにアマクサ王子は喜ぶ。
「すげえぞゴーケツ、ただの暴れん坊かと思っていたがこんな料理も出来たわけだな」
「そうですぜ。これでもサバイバル生活のプロでしてな。その環境の中でこういった料理を作れるようになったわけですぜ」
「そこまでいくと感激というか驚きというかな……」
アマクサ王子も言葉で説明できないくらいのことだったが、分かりやすく説明すると、ゴーケツがとんでもない才能を持っているという事だ。
そして出来上がったパスタというのもアマクサ王子にとって美味いものだった。
「こいつはうめえよ。何杯でもお代わりできるぜ」
「そんなに食材は持ってきてないではないですか?」
「3日分はあるだろ?」
「3日分もすぐに尽きてしまいます」
食料管理はコテージの下に穴を掘って管理している。魔物対策もしているため危険ではない。
それにコテージで寝るのは心地良いし、晴れている時の夜空を見ながらの食事は良いものだ。
そんなアマクサ王子はゴーケツにこんな話をした。
「なあ、ゴーケツ」
「どうしました?」
「もしもさ、このあたりで女の子が来てさ、それもとんでもなく可愛いお姫様だったらさ、お前だったらどうする?」
「そりゃあ、どこの国の姫なのかを聞いてその国に送り届けます」
「俺、その子を彼女にして結婚してみたい」
これにはゴーケツも呆然とした。意味が分からず驚きを通り越していたのだろう。
それに姫の気持ちもあるはず。それについてもゴーケツはアマクサ王子に話す。
「とはいえ、そんな都合よくいく事ではありません。この国も姫もろくな姫ではありませんでしたし」
「そういうなよ。行く当てがなくてここへ来た姫なら、ここで暮らしてこの国のお姫様にするってわけさ」
「やれやれですねえ」
ゴーケツも呆れるしかなかった。とはいえアマクサ王子は毎日を楽しく過ごすニートのようなもの。そんなニートのような王子の護衛を行っているだけではなく、女の子がこの町に来たらお姫様にして結婚したいなどというわけだから、それは呆れるというもの。
そんな夢物語と言える話があろうはずがないとゴーケツは思っているだろう。
食後は水浴びをしながら寝るだけ。結局はなんということもない日々をすごしているだけなのだ。
次の日、アマクサ王子はある提案をしてきた。
「おはようゴーケツ! 今日は少し遠出をしようと思うんだが」
「遠出ですか。苦労することは嫌なのですが」
「どうせここでじっとしていたってつまらねえし、そのまま一生を過ごすのか?」
「それは……」
「お前だっていつかは何かしなきゃって思っているじゃねーか。そうと決まれば実行に移さねえとな」
「はい……」
ゴーケツは結局このアマクサ王子の提案を受け入れ、遠出をした。
メサイア国は広い国。そのため国の統治というのは大変なものだ。一国の王が親族に地区ごとに統治を委託していたのだから、反乱などが起こるなんて当たり前のことだった。
アマクサ王子はそんなメサイア国のアメ地区にやってきた。そこはアマクサ王子が拠点としているコテージから10キロ離れた場所。
徒歩でそこまで行くのは当然時間がかかるし魔物と戦いながら行くわけだから移動するにしても辛い。
それにアメ地区にも魔物は生息している。
その魔物のほとんどがゾンビのミイラや死体、骸骨に巨大なハエの魔物ばかり。
そんな魔物は無双のごとくアマクサ王子が剣を取って斬り倒していきゴーケツもそれに続いて魔物達を倒していく。
メサイア国の魔物はそういう魔物ばかりでアマクサ王子やゴーケツにとって大した魔物ではない。
だから魔物との戦いはあまり害がない。
しかしゴーケツにとって問題となったのはアマクサ王子の発言だった。
「ゴーケツ、ここに新たな拠点を作るぞ」
「はい? 拠点って前のコテージはどうするのですか?」
「あんなもん、放置していれば魔物に襲われておじゃんになっているかもしれねえぞ」
「だからってここに拠点って、住み慣れていない土地でですか?」
「どこ行ったって同じだ。それじゃあそういった場所探そうぜ」
ゴーケツはアマクサ王子の発言に呆れながらもしぶしぶ受け入れ拠点を探した。
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