3章 滅んだ国の王子 アマクサ王子

3章第1話 アマクサ王子

 政治と経済の悪化なのか、それともこの国の王も王子も姫も、家臣達が暗愚なばかりに反乱を起こされその隙を狙った魔物によって滅ぼされたのか。


 内部抗争が起きるように仕組まれた事だったのか。いずれにせよメサイア国と呼ばれた国は民が逃げ出し魔物によって蹂躙され、王も死に絶えた。


 その国で優雅にコテージを建てて魔物対策を行い、自由気ままに過ごすアマクサ王子。


 王子といってもそんな格好はしていない。筋肉ムキムキでもないのに上半身裸で短パンだし、髪型も寝ぐせが多くてだらしない。


 年齢20歳で身長は175センチと男性で、性格がテンションが高いだけの馬鹿。


 そんなアマクサ王子は、一緒にコテージで暮らしている家臣というか弟分で身長は180センチで筋肉ムキムキの体形がすごい斧使い、ゴーケツと楽しく暮らしていた。


 ゴーケツは元闇組織の人間でこの町で散々暴れまわったようだ。闇組織に落ちた理由は今の国が乱れているという理由で、裏で国を滅ぼそうとしたこと。


 奴隷にされた女の子や容赦なく支配される者をほったらかしに出来ず、国の家臣はおろか姫や王子も殺したことがあるという。


 それが原因でアマクサ王子とゴーケツは敵同士で戦ったが、これが凄い戦いだった。


 ちなみにこの戦いは最終的にお互いに事情を知った2人は戦いをやめて密かに和解したみたいだった。


 2人はこの話を朝ごはんの牛のステーキを食いながら話していた。


「ゴーケツ、あの時の戦いはすごかったな」


「そうですなアマクサの兄貴。兄貴の剣さばきと素早い動きで俺の斧と怪力、スピードではどうにもなりませんでした」


「あれはどう考えても俺が悪いよな。何しろ俺の親族共がしでかしてきたことだ。闇組織の者が活発化して当然だな」


「そんなことありませんよ。兄貴だけがそのクソ王族の中でもまともでしたぜ」


 アマクサ王子は王族の中では分家の3男で本来王どころか王子とも呼ばれない存在。


 しかし、闇組織の反乱などで王族が次々と倒されたり捕らえられたりで国が乱れ、王も逃走中に魔物に襲われ絶命。最終的に滅んだメサイア国でアマクサ王子が生き残った。


「俺は国が滅んでほしいとは思っていなかったが、実際そんなことに加担したもんだ」


「兄貴が気にすることはありません。あれは正しい選択ですよ。俺や他の闇組織に密かに資金援助していたこと。この恩は一生をかけて恩返しします」


「一生か。もうこの国には何もないぞ。いるのは魔物どもだ」


「こういう奴らを潰しつつ食料を調達して生きていくサバイバルはやってみたかったんですよねえ」


「そうだな! だからこそ俺たちは滅んだこのメサイア国で残りの人生を楽しむってわけだ!」


「テンション高いですねえ。もはやこの国の王なのでは?」


「亡国の王も悪くねえな。だが王だったら、俺以上の王位継承権を持つ王家の末っ子の姫が、王とは別の国に逃げたまま行方不明だからな。姫の生死が確認できねえと俺が王になれねえ」


「亡国となった国で法律とか決まりってなくなったんじゃないですかい? そんなルール守る必要などないですって」


「守るさ。少なくとも姫の生死が分かるまではだけどな。それまでは王子だぜ」


「なら王子様。どこまでもお供しますぜ!」


「照れくさいな」


 アマクサ王子は、はがねの剣を持って金の斧を持ったゴーケツと一緒に魔物退治をし続けて海辺に向かう。海の魚は死んでおらず、魚が取れる。野菜はコテージで作った畑でどうにでもなる。小麦や米も作っている。


 そんなサバイバル生活でアマクサ王子とゴーケツは立ちはだかるミイラを倒していく。


 包帯で巻き付ける攻撃はアマクサ王子が剣で振り払ってカウンター攻撃で返り討ちにする。


 ゴーケツの斧攻撃はミイラを真っ二つにするほどの威力。ミイラは倒しても倒しても恐れずにアマクサ王子とゴーケツを襲うため、2人も油断は出来ない。


「このミイラ共、厄介だよな」


「しかもうめき声で仲間を呼び寄せるのですからそれも厄介ですな」


「だが、飯が食えるならそんな厄介なことも乗り越えるけどな!」


 アマクサ王子はものすごい速さでミイラ達を斬り倒していく。


 次々と倒されるミイラ達を見てゴーケツも驚く。


「流石はアマクサの兄貴、きっとこの国を再興させるだけの実力者ですかな?」


 ミイラ達を倒し終えたアマクサ王子は反応する。


「この国をか? そんな話あるかよ。姫がこの国にやってきたらそれまでだろうし、きっとコテージ生活でだらけちまう。政治経済はめんどくせえよ」


「野菜とか小麦に米を売れば経済発展にはなりそうですが」


「政治経済に大事なのは信頼だろ? 俺人望ねえし、無理だな」


 この時のゴーケツは思っていた。アマクサ王子のような自由人はきっとこの国を復活させる英雄になるという事を。


 だからこそ今は自分が私利私欲に走らず、アマクサ王子を支えていかなければいけない。

 そんな風に思っていた。


 そんなアマクサ王子は海辺に着くと、ゴーケツに守られながら釣りをしたり貝などを取ったりするのだった。

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