2章第4話 旅客船で巨大イカ出現

 ストーム王子が港の居酒屋で酒を飲んで楽しむ1日前、私がマリンブルンを出て2時間が経過した。


 目的地のスプリング王国の港町は明日到着予定で私は宿泊部屋にあるベッドで寝る。


 夕食でステーキを食べることが出来るようで私は楽しみだった。女の子の1人旅が危険ともいえるが、私はこの世界では見られない武器であるショットガンを持っているし、Gランクの魔物は容易で倒せる。


 ショットガンを持っていない時の対処として魔法攻撃に短剣も持っている。


 短剣をマスターしているため、通常の剣はもちろんのことで包丁も使いこなせる。


 お姫様なら戦闘だけではなく、料理も優雅であるべきだと私は思っていた。


 そんなことを考えながら私は部屋で本を読んでいた時、外で騒ぎがあった。


「イカの魔物だ! 巨大イカだあああ!」


 巨大イカと聞いて私は驚く。巨大イカはDランクの魔物で攻撃力も防御力も高い。


 巨大イカは触手を鞭のように振るって攻撃してくる。全長2メートル50センチの巨大なイカの魔物で触手を使って船をよじ登り、床を触手で歩く。


 しかも巨大イカの厄介なのは触手攻撃だけではなく、その触手で体を縛ってくる。


 体を縛り付けながら電流を流してしびれさせる攻撃はないが、体を縛りつけられたらゆっくりと締め付けてきて最後は肋骨が折れて、血管が破裂して死に至るようだ。


 そのため巨大イカに体を縛りつけられたら、巨大イカが弱いっているか自力で振りほどくか、助けられるかしかない。


 私はこんな時のために魔物のことをマリンブルンで5年間学んできた。


 その試しということで私はショットガンを取り出して外に出る。


 出てみたら巨大イカは6体。あちらこちらで船員の体を縛り付けては床にたたきつけていた。


 旅客はみんな安全な場所に避難していた。


 そんな私には刺激的なことが物足りない。転生前の男だった時のドS心があるのか、女の子が触手で縛られて苦しみ叫ぶ姿と声がなかった。


 巨大イカに襲われている船員は全員男だし旅客は全員避難している。私はそんなショックもあったが、気晴らしでショットガンを持ち巨大イカを一体の頭を撃って一撃で仕留める。


 助かった船員が私にお礼を言うのと同時に避難を指示する。


「助かりました。ありがとうございます。それよりまだ5体も巨大イカはいます」


「お礼には及びません。残りも倒してきます」


「危険です。5体の巨大イカに締め付けられればひとたまりもありません」


「即死するならそれまでです。私は残りも倒してきます」


 私は目の前に見える巨大イカを2体ショットガンで仕留めた。すると背後から別の巨大イカ1体が襲ってきた。私はとっさにかわしてショットガンを3発討つ。


 襲ってきた巨大イカは倒せたが、もう1体が私を襲ってきた。私はその触手攻撃をまともにくらった。


 私は攻撃をくらうも倒れずこらえる。


「ぐはっ!」


「ああ、お客様! お怪我は大丈夫ですか」


「問題ないです」


 被っている金のティアラの回復効果が巨大イカの攻撃で受けた傷を治してくれる。それよりも黄色いドレスを汚されたことに私は巨大イカに怒りを覚える。


「私のドレスをよくもやってくれたわね! この巨大イカ!」


 私は容赦なくショットガンで巨大イカの頭を撃ちぬいて倒す。


 すると、油断したのか背後にいた最後の1体の巨大イカに触手で全身を縛り付けられた。


「なっ」


「お客様! ああ、ですから……」


 縛られたのは驚きだが私は焦らない。少しずつ痛みが来るがこれは金のティアラの回復効果でどうにでもなる。


 しかし実際に縛られるのは苦しい。今になって思うことは縛られる女の子の気持ちだろう。


 縛られることがどれだけ辛いかレーモンとして生まれ変わって感じた。


 しかし、今さらドS心を感じていた時の後悔をしている時ではない。この状況を脱することだった。


「大丈夫だよ。ちょっと本気出すから」


「本気ですか?」


 船員は不安になっているが、その不安は一気に消える。私はかすかに動く右手でスカートをめくり、スカートの裏のポケットにしまっていた短剣を取り出す。その短剣はちゃんと鞘に納めていて、左手を出来る限り伸ばして鞘に触れて掴む。そして右手で短剣を抜き私を縛っている巨大イカの触手にぶっさす。


 突然の激しい痛みで巨大イカは私を放した。


 この隙を私は見逃さない。


 私は巨大イカに縛られた際に落としてしまったショットガンを手に取ってすぐさま巨大イカを狙う。


「よくも私を縛り付けて苦しめてくれたわね。これはそのお返しよ」


 私は巨大イカに何十発ものショットガン攻撃をくらわせた。


 こうして6体の巨大イカは全滅した。


 これに船員のみならず旅客達が驚く。


「すげえ、あのお嬢ちゃん小さいのに1人で巨大イカ6体倒しちゃったよ」


「あの長い武器も何? すごい!」


「かっこかわいい!」


 私はそんな旅客の声を聞きながら短剣を鞘にしまってスカートの裏のポケットに入れる。


 そしてショットガンを手に取って部屋に戻ろうとすると私を心配していた船員が声をかける。


「ありがとうございます。おかげで巨大イカの脅威から救われました。どうか夕食はお礼をさせてください」


「お礼?」


 私はどんなお礼か気になった。

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