2章第3話 ストーム王子、港へ行く。

 銀の温泉の件について、一旦タイフーンに任せたストーム王子は、護衛を何人か連れて馬車で港へ向かう。


 護衛の中にはタイフーンと同じ闇組織の一員で白い猫耳と猫尻尾の弓使いの女の子、ウィンドウがいた。


 彼女は中学2年生くらいの見た目の子。年齢は分からないが成人はしている。弓使いというのもあり動きやすく露出度の高い服を着ている。丈が短い半袖の水色のシャツに短パンにベルトをつけ、靴も皮のサンダル。ストーム王子がタイフーンと同等に信頼している亜人。彼女はストーム王子が乗っている馬車の横で馬に乗りながらゆっくり移動している。


 亜人はこの世界では嫌われているが、ストーム王子はそんな亜人でも人間と同等に接してくれる優しい人なのだ。


 ウィンドウはストーム王子を王子様と呼んで慕っていた。


「王子様、そろそろ港町に着きます」


「そうか、長旅ご苦労だった」


「王子様なら馬車ではなく馬で駆けて行った方がよろしいと思います」


「馬に乗っていくときは緊急の時さ。こういう長旅ではゆっくり行くのがいい」


「そうでございましたか。私は速いのがスカッとするのです」


「お前は薄着が好きだからな」


「私のような猫の亜人は薄着を好むのです。厚着は熱くて死にそうになるので嫌なのです」


 ウィンドウは薄着好きというのもあったのと、弓を使うのが得意なのもあり、ストーム王子は重用していた。


 闇組織にいた時は凄腕の弓使いで失敗をしたことはないらしかった。


 しかし、ストーム王子の父親、ウィングの徹底的な闇組織潰しで追い詰められたウィンドウをストーム王子がかくまったことで命を救われた。


 そのため、ウィンドウのストーム王子に対する忠誠心は高い。


 ストーム王子はそんなウィンドウに優しくするのは当然だった。


「ウィンドウがそう思うなら俺は否定しない」


「ありがとうございます」


 そんな話をしているとストーム王子達は港町に着いた。


 港町に着いてストーム王子にはやりたいことがあった。それを護衛達に伝える。


「今日はここで飲んで寝る」


 それにウィンドウが質問する。


「まさか、ご飲酒なさるおつもりで?」


「そうだ、飲み会だからな。ウィンドウも来い。護衛の仕事はここまででいい。朝まで飲むぞ!」


「お待ちを! 外の護衛はいかがいたしますか?」


「ああ、町の者にやらせればいい。今日は奴らが当番だからな」


 そんな感じでストーム王子はウィンドウを居酒屋に誘った。


 その居酒屋は王子が入るとは思えない普通の居酒屋。ストーム王子の身分なら高級居酒屋でワインを飲みまくるのが普通だと思われるが、彼の考えでは一般市民とも仲良く接したいのと風呂上がりのおつまみとビールが美味いことからその居酒屋へ入る。


 また、居酒屋の近くに銭湯があってそこにある風呂は全て温泉の効能を持った薬湯。


 露天風呂もあって星を眺めることも出来る。


 飲む前にストーム王子とウィンドウは銭湯に行き夜の風呂を満喫する。


 ストーム王子は1人銭湯でのんびりしているが、ウィンドウは風呂の中で町娘の小学生くらいの子と会話している。


「お姉ちゃん、もしかして亜人?」


「亜人だけど? もしかして悪いかな?」


「ううん。耳と尻尾かわいい」


「かわいい……のかな?」


「お姉ちゃんは王子様の護衛さんなの?」


「うん、そうだよ。守るのも苦労だよ。こういう温泉で疲労回復だよ」


 ウィンドウは白猫の亜人である分、人間と違って風呂好き。


 そのため体を洗うにしても風呂で温まるにしても気持ちよいのが好きなのだ。


「お姉ちゃんの体洗ってもいい?」


「ふえ?」


「白猫の亜人さんはふかふかなのが好きだって」


「うん。でも遠慮しておくよ。町娘に体洗われるのは子供らしいし恐れ多い」


「いいんだよ。タダでやってあげる」


 町娘はウィンドウの体を石鹸やシャンプーで洗ってあげた。町娘はふかふかな耳と尻尾を触れて満足のようで、ウィンドウは体を触れられて気持ちよい。


 まさに一石二鳥だった。


 体を洗い終えたウィンドウは町娘にお礼を言って銭湯を出る。そして先に出ていたストーム王子と合流する。


「遅かったな」


「申し訳ございません、王子様。護衛ともあろうものがこんなに遅く」


「今は娯楽の時だから気にしなくていい。さあ、飲みに行こう」


「はい!」


 ストーム王子とウィンドウは居酒屋に入った。そこではストーム王子を歓迎する町の人達がたくさんいた。


 酔っ払いの何人かがストーム王子を見て話しだす。


「ストーム王子! 既に飲んでます」


「こいつなんて酔いすぎです」


「今日取れたこのまぐろの刺身は最高です!」


 港町というのもあってこの居酒屋のおつまみは魚の刺身やホッケ。さんまの塩焼き、シーザーサラダなどが多かった。


 もちろん、フライドポテトに鶏のから揚げ。さらには枝豆にたこ焼き。〆の海鮮丼もある。


 ストーム王子はこの居酒屋でしか味わえないおつまみとこの町の酒屋が作っているビールを朝まで堪能するのだった。


 ウィンドウはお酒が強い方だが5杯で酔ってしまう。


 ストーム王子はお酒に弱く、ビールのジョッキ1杯で倒れてしまうくらいだ。


 それでも気力でストーム王子もウィンドウも飲むのだった。

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