プレイヤーイベント戦@西方2

「あれは!?誰だ!」


「知るか!でも格好からしてベータ勢だろ!」


「ヤバいってヤバいって!いや、この場合助かったのか?いやいやいや。やっぱヤバいって!!!!」


「離れろ!離れろぉぉ!!!巻き込まれるぞぉ!!!」


一部の毛無しザルプレイヤーどもがわめいておる。何事ぞ?

ちらりとそちらに目をやれば、目隠しをした真っ黒な毛無しザル人間が歩いて来ておる。、、、否。あれは歩いているのか?所々て姿がかき消える、他とは異色の雰囲気を放つ毛無しザル人間

くくく。余の本能が用心せよと告げておる。このような感覚はロゼッセ温泉地以来ぞ。


余は己が腕を引きちぎり唱えた。


武器錬成・上位・同位ヴェルント・マイン


余が持つ素材。その中で最上位に位置するものは何か?無論、余自身ぞ。


さぁ、異色の毛無しザル人間よ。余に抗って見せよ!


「『怪域』」


ゾクリ。


背筋が凍る感触とともに一帯の風景が変貌した。

、、、この景観は?否。余は知っておる。これは温泉スライムへと化した際に流れ込んできた女帝級エンプレス温泉粘体スプリングスライムにあったもの!


〔種族特性、『怪域』。あいつのあれはいつ見ても恐ろしいものだな〕


〔あれ?アーツはユーと戦ったことあるんだっけ?〕


〔一度な。あれ以降私は夜に一人でトイレに行けなくなった〕


〔怪奇の都市伝説型が怖いのはわかるけどさ、小学生リリィじゃあるまいんだし〕


〔怖いものは怖い。さて、泉。解説の仕事だ〕


〔逃げた、、、。まあいっか。プレイヤー名ユースティア。レベル、種族は知らない。種族特性の『怪域』では何故か都市を生成。怪域内ので自身の姿を一度でも目にしたものは即死。また怪域内にいるだけで全ステータスが秒間10減少。ユースティアの近くにいるとプラス90減少していく。ステータスの値のうちどれか一つでも0を下回ると強制的にユースティアを目視させられる。基本攻撃は無効化され、特殊な方法でしかダメージが当たらなくなる。怪域の解除方法は本人の討伐か都市内の手がかりを元にして怪域内でのユースティアの封印、だっけ?〕


〔だな。これだから初心者に恐れられ、完全理不尽型などと呼ばれるのだ〕


要するに目を閉じて行動すれば良いということか?だから先ほどから「目を閉じるんだ!見るなぁ!」だの「あっごめん俺死んだわ」だの「目がぁ!目がぁ!!」等と毛無しザル人間の声が聞こえてくるのか。

幸い余らスライムは視覚以外の感覚器官にも優れておる。特に支障はない。

が、問題は討伐方法。余にかかっておるデバフはステータス0.01倍、慢性的な頭痛、吐き気、目眩。さらには大スラ天魔王による『同胞への哀しみ』による憤怒。

この内ステータスの低下は打ち消し、憤怒は温泉での心頭滅却により冷静を保てるようになった。だが、その他は残っておる。さらには残り50分もせずに余は強制的に帰還させられる。

ふむ。遊びなどせずに全力で叩き潰しておけば良かったぞ。されど過去を振り返っても仕方がない。どう抜け出そ、、、っ!?


「グハッ」


なんぞ!この圧は!体が、、、!?


〔あの怪異はなんだ?見つめた対象を過重する能力を持っているようだが。私がやつと戦った時には居なかったぞ?〕


〔出してなかっただけだと思うよ?怪域は怪異にとって過ごしやすい場所。ユースティア、、、めんどくさいからユーって呼ぶね?ユーは何体かあの領域で怪異を飼っている〕


ふざけるな。余を、余をペット風情で倒せるなどと思うなよ、、、!


「がっぐっ、、、がぁぁっ、、、あ"あ"あ"!!!」


ブチッブチブチブチ、、、


〔肥大化して怪異に見えていない範囲だけ脱け出して逃げた、か〕


〔賢い選択だね。怪域では攻撃は効かない。だから逃げるしかない。しかも残りももぞもぞと動くから、止まるまで怪異も動けない。逃げたように見せかけて本体でした~なんてされたら困るし。でも、いつまでもつかな〕






ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、、、」


くそっ息が荒れる。幾度かの分裂でHPが減ったからか?しかし、余の感覚ではあまりHPの減少は感じられない。

どうなっている?


じーーーーーー


っまたぞっ!視線を感じる。

どこに居るというの


ぺちん


振り返った際、余の触手の一部が、何かにぶつかった。居る。何かが、居る。


「じーーーーーー」


口に出して言うだと!?余を舐めおって!


「はっ!」


余は触手を突き刺そうとして、がしりと捕まれた。


「怪奇系の種族、ジョブは他の種族、ジョブに比べて、格段にステータスが落ちる。でもさ、でもさぁ、でもさぁ!、、、、、、こうしてじっくりじっくりってステータスを落とせば、怪奇系よりも弱くなるわけだ。

どう?怖い?苦しい?恐ろしい?私もね?怖かった。苦しかった。恐ろしかった。呪わしかった。私のメルメルをあなたに傷つけられて。

じゃ、お仕置きを、始めよっか」


「あっあっあっあっ」


怖い。根源的な恐怖が、余の身に満ち溢れてくる。こんな気分になったのはロゼッセ温泉地でのーーーーーー







ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「この子は私がゲームで出合った友達。マスターちゃん。この子は私のリアルでの友達のユーちゃん。ここで一緒になったのも何かの縁!今度三人で遊ぼうよ!」


「、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、」


「あっえっと、、、マスターです。あ、あの、そのう、、、よろしくお願いします、、、」


「、、、、、、ユースティア。メルメルは私の。手を出したら、、、」


「えっあっはい!わ、だ、大丈夫です!だ、だだだだからそんな目で見つめないで下さいぃ!」


「ユーちゃん!なんでも呪い殺せそうな目をしてるよ!?そんな目できたの!?」


「メルメルのため」


「私!?」


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る