配信者メルメル 一日目

「どっもー。初めましてメルメルです!今日からVRゲーム、バルキリー・トゥルー・オンライン、通称VTOで配信して行くね!よろしく!」


 宙に浮かんでいるカメラに向かって、私は元気に挨拶した。でも、コメントとかの返信はない。同接0人なんだもん。仕方ない。


「さて、私は今、始まりの町のウーノにいます!大陸は西のソラスティー大陸にしました!!」


それからも時に周りを見渡し、時にカメラ目線で語りかけたり、色々としながら町の外へと歩いて行った。

同接は相変わらず0。しょうがない。だって他のゲームで人気だったりした配信者も配信してるから。基本、みんなそっちに流れて行って、私みたいな無名の配信者は誰も見向きもしてくれない。

、、、正直、つらい。誰も見てくれてないのに喋り続けるってのは、周りの視線も相まって、かなり精神的にくる。でも、私は喋り続ける。

このゲームで、βテスターをしてた幼馴染みで親友の優ちゃんが言ってた。


『配信したいならどんなに同接が減っても喋り続けるの。誰も見てなかったとしても気を抜いちゃだめだよ?アーカイブとかはずっと残り続けるんだから。あとになって、だれが見に来るか分かんないでしょ?』


って。だから、私は黙らない。黙ったら何も伝えられないから。黙ったら配信する意味がないから。


「とうちゃーく!皆さん、始まりの平原、アレハに着きました!早速魔物を討伐して行きます」


「てい!おりゃ!とう!」


私は杖で魔物を殴る。ジョブの見習い神官の最初に使える魔法は、小回復ミドルヒールだけ。攻撃魔法じゃないから、杖で殴るしかない。


「どわぁぁ!?ウルフに囲まれた!?ど、どうしよ!?ど、どうすればいいかな?って痛いっ!噛まないで。噛まないで。あっどんどんHPが減ってく!?キャー!!」


ウルフの群れに囲まれた私は、そのままデスポーンしてしまった。


「痛てて。てへっ死んじゃいました!むむ。思うとあれってウルフに噛みちぎられて死んだんですよね?現実だったら恐ろしい絵面に、、、!今度は囲まれないように再挑戦です!」


>>草


わっ初めてコメントが来た!嬉しい。じゃなくて!反応、反応しないと!


「しょ、初見さんですよね?って、配信始めたのは今日なんだから、みんな初見さんか。

 あっ違う違う!えっと、コメントありがとうございます!配信者のメルメルです!精一杯がんばって行くので応援よろしくお願いします!」


見てみたら、同接がいつの間にか10人まで増えてた。嬉しいな。えへへ。


「まだ見習いなのでデスペナルティはありません!どんどん行きましょう!」


私の配信冒険は、まだまだこれからだ!

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