第6話 - 1
頭の中に、昨日大島先輩と話していたことが思い出された。
「はっきりと、言葉にして伝える」・・・。
そうしなければ、修一くんとずっと行き違ったまま・・・。
僕は、決意を固める。
既に、「抜いてやろうか」とか「気持ちよさそう」とかいろいろ言われて恥ずかしさで死にそうだったけど、それでも告白は勇気のいることだった。
「違うの・・・。僕は、修一くんのことが好き・・・ずっと前から」
僕は修一くんに背を向けているので、修一くんの顔は見えない。かといって、今振り返るのは僕の精神力が足らない。
修一くんはどう思っているんだろう。僕のことが、気持ちよさそう・・・て言ってたよね。
自分でもよくわからない。普段たたせようと思ってもたたないアレが、修一くんに触られることでぐんぐんしてしまった。そしてこれは、きっと僕が修一くんのことが好きなことと関係があるのだろう。ほかの人ではそうならないだろうから。
僕の好きという気持ちは、修一くんとエッチしたいって気持ちだったのだろうか。もう自分のことさえ分からない。
とにかく、手と足が震えて、自分があまり冷静ではないことだけがわかる。
僕の背後で、修一くんが口を開く。
「ずっと前って・・・いつから?」
「ち、中3のときから・・・?」
「その間ずっと、俺のことが好きだったのか?」
なんか、めっちゃ質問してくる。
「うん、そう」
すると、修一くんが息を大きく吸って、吐いて深呼吸する。
「すまん。気づいてやれなかった」
修一くんが言った。
気づかなくて当然だ。
「隠していたから。僕が悪い。・・・謝らないで」
「男同士だからとか、そういうこと意識して、言わなかったのか?」
「そ、そうだよ。僕、修一くんと一緒にいられたら満足だったんだよ。だから・・・今日のことは忘れて。明日になったら、友達として、やり直しでいいから」
そう言って僕は部屋の出口へ向かって進み始める。
一刻も早くここから出たかった。これ以上ここにいても、自分の恋が報われないことが分かって、余計に自分を傷つけるだけだ。
「あ、待って!」
修一くんに呼び止められた。振り返ると、目が合う。修一くんは、少し焦ったような表情だ。
だがすぐに目をそらし、言葉を続ける。
「違うんだ。勝志が、嫌いになったとかでは決してなくて・・・ちょっと考えるから、待ってて」
すると修一くんは、やけに真剣な表情で、考えるしぐさをした。
何を考えているのだろう。さっぱりわからない。
「さっき、えっと・・・体を触ったのは、謝る」
修一くんは、本当に申し訳なさそうに言った。どうしてそんなに謝るんだろう・・・。
そう考えて、ハッと気づく。結局のところ、修一くんは、僕を優先した。自分のことは退けておいて、僕のことを考えてくれた。あまりにも優しい対応だ。
そしてこれは、今までの言動に比して、特別おかしい感があるわけではない。そう、ずっと修一くんは僕に対して優しかった。今まで僕が遠慮してちょっとしたわがまましか言ってこなかったけど、もしかすると今までも、例えば僕が大きな悩みを相談したりすれば、こうして真剣に悩んでくれたのかもしれない。
なんで今まで気が付かなかったんだろう。こんなに優しくしてくれているのに、僕が勝手に傷ついたりするのは、的外れだ。修一くんのことを思えば・・・僕は君の前からいなくなるべきかもしれない。しっかりとけじめをつけて、もう修一くんに迷惑が掛からないようにしないと。
それにしても・・・もう今までの関係は絶対に復元されないと思うと、来るものがある。涙ができてしまいそうだ。
涙を見られる前に、これを終わらせないと。そう思っていたら、修一くんが話し始めた。
「俺は・・・多分、勝志に欲情した。それで冷静を欠いていた」
一瞬、思考が停止した。ヨクジョウ・・・ヨクジョウってなんだっけ・・・?
だけども、修一くんは話すのをやめない。
「自分の性欲に負けて無理やり触るなんて・・・本当にクズだ。この点については、本当に申し訳なく思っている」
修一くんは、深々と頭を下げた。
いや、いやいや。待って。
要は・・・僕がエロく見えたから触ったってこと?本当に?何か勘違いしているとかじゃなくて?
とりあえず、目の前で90度のお辞儀をされるのはやめてもらいたい。なんともいたたまれない気分になってくる。
「大丈夫だよ。本当に大丈夫だから」
修一くんが顔を上げる。
「本当に?大丈夫なのか?自分が性欲の対象になっているんだぞ」
「いや、だって、それは・・・何か勘違いじゃないの?ほら、明日になった違ったってなるかもしれない」
「うん・・・それはちょっと同意する」
え、同意しちゃうの??
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