第6話 モヤモヤ

☆セリナ、サイド☆


歩いて帰っていると衝撃的なものを目にした。

それは中西さんが女子とキスをしている部分だ。

私は驚いたまま壁の陰に隠れてしまった。

何故こんな事をしているのだろうか?

中西さんとはそんな関係ではないのに。


「私も大概おかしいものですね」


そんな事を呟きながらまた私は歩き出す。

それから帰っていると、お嬢様、と声がした。

背後を見るとそこに.....女子が立っている。

セーラー服の女子。

男の様な短髪でボーイッシュな感じであるがこれでも女子にモテるらしい。


「山崎.....」

「どうかなさいましたか?お嬢様。何か悩みながら歩いてらっしゃいましたので」


山崎港(やまさきみなと)。

この女の子の名前だ。

私の召使いである。

高校1年生で同級生に該当する。

だが山﨑は、私は雇われの身ですので、という感じの控えめな感じをいつも出す。


「お嬢様が悩んでいるのが気になります」

「.....そうね。私が悩んでいるのは.....」


あれ?私は何を悩んでいるのだ?

よく分からないまま私は山崎を見る。

それから、大丈夫よ。彼の事ではないわ、と告げる。

すると山﨑はホッとした様な感じを見せる。

そして、良かったです、とゆっくり笑みを浮かべる。


「あの男のせいでお嬢様の青春の時間を奪われるとか最悪ですから」

「.....そうね。.....余計な事はもう考えない様にするから」

「それが良いかと思います。.....今度お嬢様が好きなケーキを買って参ります」

「ありがたいけど無茶はしなくて良いわよ」

「無茶ではありません。私めは貴方様が心配なだけです」


そして私にかしずく山﨑。

私はそんな山崎を見ながら、山崎、と聞いてみる。

すると山﨑は、は、と言いながら私を見る。

山崎に聞いた。


「.....このモヤモヤは何かしら?とある男子の事についてなんだけど」

「.....とある男性の事でございますか?」

「そうね。.....その男性には借りを返しただけなのだけど。それだけの関係で私はあの男子に特に何もないのだけど」


だけどその、と言いながら私は考える。

女子生徒とキスをしていたの。

それから、それを見て恋以外で考えられるものは何かしら?、と聞いてみる。

すると山﨑は、そうなのですね。.....幸せな男性ですね、と笑みを浮かべる。

山﨑は考える。


「お嬢様がお優しいという事でしょう」

「そうかしら」

「きっとそうですよ。.....お嬢様は本当にお優しい方だ」

「でもそのお陰で弱みにつけ込まれた.....のよね」

「.....別の素晴らしい男性の方がいらっしゃいますよ。お館様もゆっくり探されている様なので」

「.....」


お父様、か。

思いながら私は空を見上げる。

それから、帰りましょうか、と山崎に告げる。

すると山﨑は、ええ。帰りましょう。お嬢様、と笑みを浮かべる。


「それにしてもお嬢様も災難でしたね。今回は」

「あの人は最低だったわ。だけどきっと良い人はどこかに居るわよね?」

「その通りでございます。お嬢様」

「.....」

「.....お嬢様?」


考える私。

良い人は何処かに居る。

そう言いながらも私はやる気が以前より出なかった。

出ないっていうのは簡単だ。

良い人を探す気力が無いのだ。


「.....私、疲れているみたい」

「大丈夫ですか?お嬢様」

「ええ。何だか昔よりやる気が薄れているわ」

「.....やる気が薄れている?」

「そうね.....でもまあ大丈夫よ。帰りましょう」


それから私は歩き出す。

何だか複雑なものだ。

私は何故こんなにもやる気が薄れたのだろうか。

探す気も起こらない。

何が起こっている。


☆中西恭三郎サイド☆


友美にキスされたんだが。

どうなっているんだ。

思いながら俺は周りの家事をしようとしたが。

集中力が保てないんだが?

どうしたら良いのだ。


「.....がああああ!?」


俺は赤くなってから布団の上で飛び跳ねる。

横の壁から壁ドンがきたが。

それにも構わず俺は飛び跳ねる。

クソ恥ずかしい。


「何なんだよアイツ!友美の野郎!」


思いながら俺はまたバインドする。

それから立ち上がってから、よし、と顔を叩いた。

するとスマホにメッセージが。

見ると.....友美からだった。


「な、何だ」


俺はそんな一言を発しながらスマホを見てみる。

そこにはこう書かれていた。

今日はありがとう。色々あったけど久々に一緒に帰れたね、という感じで。

赤くなりながら俺は、そ、そうだな、とメッセージ。

すると、あの女の事を忘れさせてあげるぐらい頑張るから、とメッセージが来た。


「.....」


成瀬.....か。

何故あんな事をしたのだろうな。

いくら魅力があるって言ってもな。


そう思いながら居ると。

ピンポーン、とインターフォンが鳴る音がした。

どうも新聞屋の様だが。

俺は、こんな時に、と思いながら断るつもりでドアを開けると。


「あ.....えっと。こんばんは」

「.....え?!」


何故か久城が居た。

は?、と思いながら、お前何をしに来た?、と聞いてみると。

久城は、近所だから。.....これ、と何かを差し出してくる。

それは冬瓜の煮付けっぽいの。


「え?.....いや.....良いのに」

「放っておいても碌なものを食べてなさそうなので.....」

「.....はは.....そうか。わざわざありがとうな」

「.....」


あの、と切り出してくる久城。

俺はプラスチックパックに入った冬瓜の煮付けを置きながら、はい?、と返事をしてみる。

すると久城は、部屋を.....片しても良いですか、と向いてくる。

俺は、?!、と思いながら久城を見る。


「え?い、いや。そこまでお世話になる気は」

「見るからに汚いので。プライドが許せないです」

「.....」


ジト目になる久城。

何でここまでしてくれるのだ。

意味が分からない、と思いながらも部屋に招き入れた。

それから俺を見てくる久城。

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