第5話 アイラブユー

☆中西恭三郎サイド☆


友美がかなりというか。

メチャクチャに怒っている。

そんなに激昂するレベルだったとは.....。

俺は思いながら顎に手を添える。

それから、でも有難いよな。親友としてそこまで、と思う。


そして俺は帰宅する途中で.....ソイツと遭遇した。

誰かと言えば簡単だ。

セーラー服。

他校の制服を着た成瀬.....だ。


俺は眉を顰めながらその姿を見る。

何の用事だ、と言いながら。

コイツはもう彼女ではないのに。


「別れるってどういう事?私何かした?」

「.....お前の心に聞いてみると良い。何をしたかを」

「訳が分からないよ.....こんな簡単にって」

「成瀬。お前良い加減にしろよ?何をしたかっていうのが分からないとは言わせない」

「.....」


ショックを受けている成瀬を置いてから俺は帰る。

すると肩を掴まれた。

待って。あれは.....あれは!、という感じで弁明してくる。

俺は、離せ!!!!!、とイラッとした声を出す。


「.....待って.....い、一度の過ちだよ。だから.....」

「は?.....は?お前マジに何?クズ?」

「やり直せるって。.....あ、そ、それともヤる?私と。気持ちよくしてあげるよ」

「.....お前.....」


俺は静かな怒りを感じる。

そして見ていると、いやいや、と声がした。

背後を見るとそこに何故か部活に行った筈の友美が。

部活を休んで付いて来て正解だった、と言葉を発する。

俺は目をパチクリしながら、そういう事ですか、と理解した様な目をする。


「.....穢らわしい.....」

「友美ちゃん.....」

「いや。友美ちゃんって何?呼ばないで下さいよ。最悪ですね」

「.....私は.....あれは仕方なくだったの.....」

「いや知らないですよ」


冷笑しながら俺の腕を取りながら、行こう。恭三郎、と話す友美。

俺はその姿を見ながら、まあそうだな、と言いながら歩き出す。

待って.....お願い。恭三郎!、と絶叫が聞こえるが。

無視して帰る事にした。


「何なのあの女」

「.....まあ.....理解してないだけだろうな」


それから俺達はそのまま歩き出す。

そして俺を見据えてくる友美。

そうしてから暫く歩いてからいきなり立ち止まる。

何だ?、と思いながら友美を見る。


「ねえ。恭三郎」

「.....何だ?友美.....?」

「.....私じゃダメ?泥棒猫かもしれないけど」

「?.....私じゃダメってのは?」

「つ、付き合う事だよ。私.....なら。何もしないから」

「.....は!!!!?」


な、な、な!!!!?

俺の胸に右手を添えてくる。

それから俺を見上げてくる友美。


そして俺に寄り添ってくる。

俺は通行人が見ているって!、と言うが友美は構わず寄り添ってくる。

俺を愛しい顔で見上げてくる。


「ね。あんな女もう忘れて。.....私は.....貴方を絶対に裏切ったりしない」

「友美.....」

「わ、私なら貴方を幸せにできるから」

「.....有難いけど.....俺は今はそんな気にならない。友美.....ゴメンな」


友美は俺を見上げてくる。

その顔を見ながら、お前はいつからなんだ。俺に恋をしたのは、と聞くと。

私は1年の頃から片思いだよ。

勝ちたかった。

だから今に至っている、と言葉を発する。


「私は貴方が好きだよ。恭三郎」

「.....」

「だ、だからこう言う事も出来るんだよ」

「.....え?」


瞬間。

首に手が回された。

そして下からきた顔に俺の唇が相手の唇で塞がれる。


俺は愕然としながら友美を見る。

爽やかな柑橘系の味がする.....っておい!!!!?

通行人が目をパチクリする。


「心の片隅にでも置いておいて。.....貴方が好きだって。馬鹿だからこういう表現しかできない」

「.....」

「.....私はずっと貴方が憧れの存在です」

「ばかやろ!?お前!つ、通行人が.....」

「私は構わない。.....放送されても晒されても。.....あの女に復讐になるから」

「.....!!!!!」


俺は何も出来ない。

そして離れてから目の前で歯に噛む女子。

その顔に赤面する俺。

それから爽やか系女子は、じゃあ帰ろうか、と笑顔になる。

その姿を見ながら俺は唇に触れる。


「.....ああー!!!!!もう!!!!!」


俺は絶叫してから駆け出す。

意識してしまった。

相手を女子だと。


そう思えてしまった。

心の底から女子と勘違いする。

思いながら歩いて帰る。

そして.....友美を見る。


「.....友美。俺なんかを好きになっても意味ないって。俺はお前の様な優秀な選手じゃないし」

「私はそれでも貴方が好きだから。.....十分だよ」

「ぐ、ぐう」

「.....返事は今は要らないけど.....いつかはくれると嬉しいかも」


そしてゆっくり歩く俺達。

その際に何か背後に視線を.....というか。

気配を感じたのだが。


気のせいか?

思いながら俺は振り返るが.....そこには何もない。

うん?何だ.....?

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