三章

都市伝説のヒーロー少女

 ダンジョンの中、一人の少女が走っていた。


「はぁ……はぁ……」


 高校生である彼女は、最近見たとあるお嬢様の動画に感化されてダンジョンに潜った。

 動画の中で、軽い足取りでダンジョンを進んでいく彼女。


 たまに、即死トラップを踏んでしまったりしていたが、それは映像からでもわかるほどガバガバなトラップばかり。

 だからこう思ってしまったのだ、私なら即死トラップなんかに引っかかからないで、もっとうまく攻略できそうだ……と。


 だが、現実はそう甘くはなかった。


 彼女は、トラップを踏み抜いてしまった。

 

 幸い、踏み抜いたトラップは即死トラップではなく、転送系だったため、命は助かった彼女だったが起き上がった先で絶望することになった。


 転送された先は、巨大な鬼の魔物であるオーガがいた。


「ひっ……」


 ただの少女に過ぎない彼女が勝つことなんて不可能な、怪物が。



 ……そして現在、彼女は通路を全力で走っていた。


 息を切らせ、止まりそうになりながらも一生懸命走る少女。


「……あっ」


 しかし、怯えすくんだ足は絡まり、彼女大きな音を立てて転んでしまう。


「……痛い」


 そう言って上半身を起き上がらせた彼女は、近づいてくる足音に気がつきふと後ろを振り向く。


「ひっ……」


 振り向いた先、そこには今すぐにでも、その棍棒を振り下ろそうとするオーガの姿があった。


 

「誰か、誰か助けて……」



 願う事しかできず、死を覚悟して目を瞑った少女。


 しかし、いつまでたっても彼女が覚悟していた衝撃は来なかった。

 まさか、もう死んだの?


 そう思って、ゆっくり目を開けた少女が目にした物は……黒髪ツインテールの少女が、オーガの金棒を受け止めている光景だった。


「……もう大丈夫、僕が来た!」

「え?」


 突然現れたツインテールの少女を見て、困惑する彼女。

 ツインテールの少女はそんな困惑する彼女を気にせずにオーガに向けて、飛び掛かった。


「……ってなわけで、君の相手はこの僕だ!」


 そう言ったツインテールの少女は、拳を握ると、棍棒に叩きつけた。

 そんな光景を見て……少女は、ふと友達が話していたダンジョンの都市伝説を思い出していた。

 

 何故今思い出すのか、そう思いながらも思い出したそのダンジョンの都市伝説とは……「ヒーロー少女」


 ピンチの時に、最強のヒーローが颯爽と現れて助けてくれるという、何ともご都合主義的な都市伝説。


 だが、その伝説は。少女の前で現実になっていく。

 

 颯爽と現れ、ピンチを救った彼女の拳は、鋼鉄で出来ているはずの棍棒をたやすくへし折り……


「さあ、次でフィナーレだ!」


 ツインテールの少女はニヤリと笑うと、オーガに回し蹴りを繰り出すた。


「ライジング……バスター‼」


 そう叫び放たれた一撃はオーガをたやすく粉砕し……ダンジョンの壁すらも吹き飛ばしていったのだった。



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読んでくれてありがとうなのです!

作者からの少しの宣伝なのです。

新作を始めましたのですよ!


タイトルは『転生したら幽霊船だったので、この世のお宝すべて手に入れてやろうと思います。』

https://kakuyomu.jp/works/16817330665162212961


……知ってます? 船って彼女なのですよ。

是非読んで……コメントいただけたら最高に嬉しいのです!


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