友達 田中 絵里

「ほんと……わけわかんない奴だよ、あいつは」


 そう言って、私……アスカは自分のベッドに腰掛けた。

 公園での一件の後……簡潔に言うと私とエリは友達になった。



―――――――

【数時間前……公園】


「これで良し……」

「は、はわわ……こ、これが伝説の【LEIN】の友達登録」

「伝説って、大げさな……」

「大げさじゃないですわよ‼ ぼっちだった私にとって友達登録という物がどれだけ神聖な物か……ああ、生きてて良かったですわ‼」


 そう大げさに言って、スマホを見ながらにへらとにやけてるエリを見て……私は、もう一度確認を取った。


「ねえ、本当に良いの? 私なんかが友達になって?」

「へ? そんなのあたぼうなのですわ! むしろ、私を友達にしてくれてありがとうですのっ!」


 そう言ってぺこりと頭を下げるエリを見て……心がズキズキと痛んだ。


 なぜならば、まだ私は、エリに謝れてもいなかったから。

 でも……でもだ、友達になった訳だし。けじめはつけなきゃ……いけないよね?


「……あのさ」


 ごめん。その言葉を言う前に私の口は止まった。


「どうしたのですの?」

「いや、何でもない……」


 そう言って、目を伏せる。


『また、一人ぼっちになりたくない』


 エリはどうやら私が虐めていたという事を気にしてない……というか気づいていなかった。


 でも、もしも……もしも、私が虐めていたと、エリに謝ったら。エリはどんな反応をするのか。


 もしかしたら、私の事を軽蔑して離れていくかもしれない。

 それくらい酷い事をやってきたんだ。

 離れられるのは仕方ない……だけど。


『一人ぼっちになりたくないよ』


 一人ぼっちに………一人だけで、皆から攻められ続けるのは……

 そう、思考の海に沈んでいた時だった。


「あの、大丈夫ですの? 顔、青ざめておりますけれども……」

「あ……」


 そう言われて、私は自分が顔が青くなっていることに気がついた。

 いけないいけない。

 平静を保たないと……じゃないと、突っ込まれて……虐めて……たこと、言わなきゃ……いけなくなる。


「大丈夫、ちょっと雨に打たれて寒くなっただけだから……」

「そうですの? 確かに、寒いですからね。早く帰って服着替えてあったまった方がいいですわ」


 何とかごまかせたかな?


「そうだね、早く帰って、あったまろ……あ、エリも服着替えて、風邪ひかないようにね?」

「私は大丈夫ですわ。私、ゾンビですもの!」

「そ、そっか……そうなん、え?」


 ゾンビ?

 ゾンビってどういうこと?


 私がそう聞き返そうとした時、エリのスマホがブルブルと震えた。


「ほえ? あ、リオ姉さまですわ……もしも……え? 映画終わった、へ⁉ もうそんな時間たってたんですの⁉ あ、す、すぐに行くのですわ。ひ、すぐに行くので帰ってVRホラゲさせるのはやめてくださいで諏わ⁉」


 な、何の話してんだ?


 スマホを手に持ち騒ぐエリを見て、私が呆気に取られていると。エリはスマホを切った。


「すみませんわアスカさん。そう言う事なので、私早くリオ姉さまたちの元へ戻るのですわ……それじゃ!」

「あ、うん」


 どういう事だろ。


 訳が分からない私を置いて、エリは走り出し……


「あ、そうですわ」


 そう言ってエリはふと止まると私の方を見た。


「もし悩み事があったら、いつでも私に相談してほしいですわ。私たち、友達ですから。それではさよならですわ~おーっほっほっほっほ」

「あ……うん」


 そう、言って彼女は高笑いしながら走り去っていった。


―――――――

【そして現在】


 私は、ふとスマホを開く。


 そこに追加された、新しい……私の唯一の友達を見て私は静かに……呟いた。


「本当に、あんたはさ……人の子と信じすぎる馬鹿で……」


 私の頬を、雨じゃない水滴が伝った。


「………いい子過ぎるよ」

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