『主人公』の愛の告白(3)

 冒険者ギルドの地下牢で対峙したならず者たちは、異様な雰囲気だった。囚われているというのに、一様にニタニタとた笑いを浮かべている。それを前にしたギルド長はじゆうめんを作っていた。


「こいつらは余所の街の冒険者ギルドでも捕まえたことがあるんだ。が、その度におそらくエルフが魔法で脱獄させている。だからこっちが完全にめられているってわけだ」

「つまりエルフとそれなりに長い付き合いのある人間たち、ということですね」


 それは朗報。わざわざ脱獄させているということは、彼らは固定メンバーの可能性が高い。それならやはりここにいる彼らが、きっと問題を解決するヒントになる。

 私は牢の中の面々を見回した。こちらを見ている者は小馬鹿にしたような顔をしているし、そうでない者は床でゴロ寝をしている。どちらにせよ、誰もが余裕の表情だ。今回もまた、エルフが助けに来る算段になっているのかもしれない。


「何度来たって、わからねぇもんはわからないぜ。ギルド長さんよ」

「そうそう。俺たちでも探し出すことは不可能だ。大人しく呼び出しを待つしかない」

「何せ指定場所は、そのときのエルフの気分次第だからな」

「入れるのは不特定の指定場所からで、だから探し出すことは不可能……ね」


 獄囚たちが口々に言った言葉を、私は敢えて口に出して繰り返した。

 へらへら笑う獄囚たちにギルド長の眉間の皺がより深くなり、それが楽しいのかしまいに彼らは声を上げて笑った。


「すまねぇ、ナツハさん。一応、ギルドメンバーに別方面から探らせてはいるんだが」

「……いえ」


 ギルド長の謝罪に、別のことに気を取られていた私の返事は一拍遅れた。

 続けて、ギルド長にここでの面会はもういいことを伝える。騒がしい彼らをギルド長が一喝し、私たちは地下室を後にした。

 そのままギルドを出る私をギルド長が出入り口まで見送ってくれる。彼は酷く申し訳なさそうな表情をしていた。先の私の態度から、諦めが頭をよぎり気落ちしていると思われたのかもしれない。


「違うんだな、これが」


 冒険者ギルドからある程度離れたところで足を止めた私は、地下室にて返事が遅れた原因を改めて注視しながら呟いた。


「ふふふ……見つけた。やっぱり犯人たちとの会話がフラグだと思ったのよ」


 私の視線の先――メニュー画面の『ワールド』には、しっかりと『いばらの監獄』という地名がNEWの表示とともに出現していた。

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