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PM 10:10 36号線の廃病院


 首謀者しゅぼうしゃの魔術師を遭遇そうぐうし、交戦に入る。洗脳した学生たちを使役し、私を追い詰めようとする。

 奴は、洗脳した子達を人形を操るかのように操り、左右から私は攻撃する。

 持ってる包丁を振り下ろすが、私はそれを回避する。

 流石に、一般人を巻き込んでいるようでは、私にとっては非常にやりづらい。


「どうした!? さっきの威勢いせいはどうした?」


 奴は、私が学生たちを攻撃できない事を逆手に、執拗に洗脳した子達を使って攻撃を繰り返す。

 どうしたものか? すると、視界に何かを見つける。

 糸のような、小さな魔力に流れを視認する。どうやら、これが学生たちを洗脳して操ってるらしい。

 私は、すぐに理解した。これを断ち切れば、学生たちの洗脳を解くことができる事を。


「糸……。なるほど、何本かに連結しているなら、1本からジャミングすれば解けるはず」


 私は、その方法を試みる。しかし、それを行うためには、学生たちをどうにかしないといけない。

 私は、ひたすら距離をとる。その間にも奴は、執拗に操られてる学生たちを使って私は追い回す。

 4階から、非常階段で上の階まで登る。5階、6階と上り詰める。次の階を登ると、そこは屋上だった。


「もう追い詰めたぞ! ここで貴様も終わりだ!」


「そうかもな。だが、お前は一つ、重大な失態を犯した事を気づいてないようだ」


「何をほざいている? 追い詰められて、気がおかしくなったか?」


 奴は、勝ちを確信したかのように、私にトドメを刺す。すると、洗脳された学生たちは、突如としてもがき苦しみだす。

 否、私が奴の構築こうちくした術式の乗っ取り、強制的に洗脳を解き始めているのだ。

 左手に宿る『白の色素エレメント』を使い、奴の糸のような魔力の流れを遮断する。そして、奴の魔力の線は燃え始め、消えていった。


「言っただろう? お前は重大な失態を犯したって」


「な、なぜだ!? 私の、使役の術式が、解除されていくだと!! ありえん!! な、何をした!?」


「簡単のことさ。お前が使った洗脳の魔術を構築していた魔力の糸を1本だけを掴み取って、私の『白の色素エレメント』を送り込んだ。

 その結果、お前の持つ『藍の色素エレメント』が拒絶反応を起こし、術式の構成が保てなくなり強制的に術式が解かれたと言うことだ。

 まさか、旧体制の名高い魔術師様も、それに気づかんとはな」


「そんなハッタリ、信用するか!? 私の研究は、完璧だ! こんなのも対処できるはずだ!!」


 奴は、再び学生たちを洗脳する。しかし、彼らは奴の魔術に反応することはない。


「ハッタリなわけないだろう? 同じ魔術は時間をおかないと効果を発揮しないと習わなかったか?

 それとも、目の前の功績にヤッケになってそれすらも忘れたか?」


「馬鹿な!? そんなはず――――――――!?」


 奴は、私の顔を見て、顔面が真っ白になる。私も、奴のことをゴミを見る目で眺める。


「お、思い出した!! 貴様は!! 貴様はァァァ!!」


「ほう? 私を知っているみたいだな? 私を知っているなら、どうなるかもわかっているんだろうな?」


 奴は、後退りで私から逃げ出す。


「か、かつて、元老院の精鋭部隊を全滅に追いやり、その元老院を追い詰めたという伝説を持つ魔術師がいると……。

 その高水準の『魔素マナ』と、『赤、白、黒』の3色を持つ上、たった1人で国を壊滅させれる魔術師がいると聞いたことがある!!

 ま、まさかお前が噂に聞く……」


「あぁ、そうさ。私がその魔術師さ。

 ――――――『特級魔術師イレギュラー キサラギ・アルトナ』と聞けば聞いたことがあろうよ」


 奴は、逃げるように私から距離を離す。しかし、私は容赦なく奴の影を縛る。


「そ、そんなバカな!! まさか、こんな街に貴様が、『魔女まじょ』がいたなんて!!

 あ、ありえない!! この街にいるなんて、何も聞いていないぞ!!」


「ほう? それはそうだろうな。あの老害共にとって、私はトラウマとも言える存在だからな。

 それと、今の言葉を私の前で言ったらどうなるか、わかるな?」


 どうやら、こいつは私を怒らせる天才らしい。あれだけの悪行をしておきながら、その言葉を言ったのだから。


「な、何をする気だ!?」


「昔からの決まりでね。身内以外の奴が『魔女』といえば、誰であると殺すことにしている。

 それが例え、あのじじい共であってもな」


 私は、奴を殺すために接近する。すると、奴は必死にもがいて術式を唱える。

 奴が術式を唱えると、後ろから魔物を召喚した。


「この後に及んで、魔物とはな」


「そ、そうさ!! 貴様を殺すには、十分だ!! 貴様さえ殺せば、あの方々にまた融資ゆうしを出してもらえるはずだ!!」


 私はグラムを展開し、魔物を相手に戦闘を行う。


「『牛魔人ミノタウルス』か、少々厄介だな」


「こいつは特別だ!! 貴様でもどうにも出来まい!!」


 奴は、再び勝ちを確信しているようだ。『牛魔人ミノタウロス』は雄叫びをあげ、拳を振りおろす。

 私は避けるが、再び拳を振るう。


「どうだ!! その魔具だけでは、貴様も耐えられんだろう!!」


 確かに、グラムだけでは、どうにもならない。しかし、まだ私は保有している魔具がのだから。


「仕方ない、これを使うか」


牛魔人ミノタウロス』が、私は潰すように拳を振るう。


 ボォォォォォォン!!

 

牛魔人ミノタウロス』の拳で私が圧殺されたと思ったその時だった。


「『喰らい尽くせ! 『ティルフィング』』!!」


 私を潰したと思われる右腕の拳が、抉られる。いや、違う。喰らい尽くされたのだ。

牛魔人ミノタウロス』は右腕を喰らわれた為、雄叫びを上げながらもがく。

 

「う、嘘だろ!! 何故だ、何故魔具を二つも持っているのだ!?」


「確かに、魔具は本来は1人一本しか持つことができない。だが、私は特別でね。このように、魔具を複数持てる。

 まぁ、この二つの他に持ってるんだがな」


 奴は、私の両手に持ってる魔具を見て驚愕する。白の大剣と、黒の大剣を携える魔術師を見ていると、誰であろうと恐怖を感じているのだろう。


「一気に肩をつけるか」


 私は、『牛魔人ミノタウロス』にとどめを刺す。『牛魔人ミノタウロス』は立ち上がり、雄叫びを上げる。


「『三重術式 上級展開 黒炎こくえん』!!」


 右腕に、黒い炎を纏いそれを『牛魔人ミノタウロス』の左腕を補食する。左腕を食い千切られた『牛魔人ミノタウロス』は再びもがく。


「これで、終いだ!!」


 大きく飛び上がり、『牛魔人ミノタウロス』を縦に真っ二つにする。そして、『牛魔人ミノタウロス』は切られたところから炎が広がり、灰になった。


「何故だぁ!! あの『牛魔人ミノタウロス』が消えるとはぁ!!」


「私の『黒の色素エレメント』は少し特別でね。対象の魔力を捕食ほしょくして、私の魔力のストックになるのさ。

 そして、その分だけ私は魔術を行使するのに使う魔力を抑えられるわけだ」


奴は、そんな私の状況に怯え出す。


「茶番はここまでだ。お前に選択肢をやろう。

 お前の研究で死んでいったものたちに懺悔ざんげしながら死ぬか、むご残酷ざんこくに私に殺されるか」


 奴は、あまりの恐怖で、漏らしてしまう。そして、首を泣き顔と共に横に振るう。


「拒否権なんざ貴様には無いぞ。さぁ、選べ。懺悔して死ぬか、無様に殺されるか」


 奴は、私の提示した選択を選ばない。そうしているうちに、私の怒りも限界に達している。

 そうこうしていると、物を音が聞こえ振り向く。


「冗談だろ?」っと私はドン引きを隠せないでいる。

 なんと、さっきの『牛魔人ミノタウロス』と昨日の『蛇怪女ラミア』がまた現れたのだ。

 その隙に、奴は屋上のドアから逃げる。私は奴を追うが、あの2体に行く手を阻まれる。


「どうやれ、こいつらは早めに潰さないと聞けないらしい」


 私は、グラムとティルフィングを携えて2体の魔物に挑む。

 こうして、私と2体の魔物の戦闘が始まるのであった。

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