第3話 「私は34歳だよ」 「へぇ、34…ん?34?」
俺はシーファに国王へ手紙を書いてもらったが、ここで今更とある問題に気づく。
「そういえば家どうする?忘れてたんだが」
「できれば眺めのいい物件がいいんだけど…。役所に訊きに行ってみる?」
「そうだな」
*
役所から眺めのいいちょっとした屋敷のような場所を紹介してもらい、現地に行ったのだが…。
「一体、何年放置されてたらこんな悲惨なことになるんだ?」
「もはや廃墟としか言えないね。どうする?」
「そういえば、もう前にスキルを生成してから2時間経ってたな。ここは、この屋敷をどうにかできるようなスキルを作らないとな」
キーワードは「再利用」、「天恵」、「プレゼント」、「清掃」。さて、どんなスキルができるか。
スキル<ギフト・リボーン>。
能力は対象を理想通りの形や色、材質に生まれ変わらせることができる。
またしても使いどころの少なそうなチートスキルが生まれたな。
「なあ、シ-ファはどんな屋敷に住みたい?できれば家具まで詳しく想像してくれ」
「そうだな…」
そして俺はスキル<思考解析>を使ってシーファの想像を覗き見た。
なるほど、こんな屋敷か。確かに、なんかシーファらしいな。
「もし、俺がシーファの理想の屋敷を完全再現できるとしたら?」
「一生レオンのことを溺愛する、かな。それと、よっぽどのことがない限りいやらしい要求も受け入れてあげるし」
「じゃあ、そうさせてもらうよ。<ギフト・リボーン>!!」
俺はシーファの想像をそのまま投影した。つる草の絡む荒れ果てた廃墟と化していた屋敷が、緑色の光を放つとともにその理想へと書き換えられていった。
「こ、これって…。私が想像してたヤツじゃん!?一体どうやって?」
「その…、<思考解析>ってスキルで覗き見させてもらった」
「ちょっ、それって私がその時妄想してたいやらしいこともバレバレってこと!?」
「え?いやらしい事?」
「恥ずかしい…!!」
顔を真っ赤に染めた涙目のシーファは可愛かったが…。
左手に魔力のようなものを溜めていた。
「え…?な、何する気?」
「お仕置きの1つくらいしっかり受けてもうらからね!!」
俺が<アブソリュート・プロテクト>なんてスキルを持ってなかったら、きっともう死んでた。
激痛、生まれて初めてのレベルの激痛。きっと、陣痛ってこんな感じなんだろう。ああ、世界中の母親は偉大だ…。
そして気絶した。
*
目が覚めると、俺はシーファの胸に顔を埋めさせられていた。
「これ、どういう状況?」
「いや、レオンの体って正直じゃん?だから、こうしてれば早く目を覚ますかなって思って」
「言ってることは間違ってないけど、変な意味に聞こえるだろ」
「どうせここは村からもそれなりに離れた辺境中の辺境。昼間っからイチャイチャしてたって誰かに見られるなんてよっぽどないよ」
「それより、早く離してくれないか?このままでいたいけど」
「このままでいたいって正直に思うんなら離さなくてもいいじゃん」
「でも、息苦しいのも事実だぞ」
「分かった」
そして開放された俺は、改めて屋敷を見回す。我ながら上出来だとは思う。ただ、ここまで便利な家具が揃っていながら豪勢な屋敷って…。
「シーファって本当に聖女なのか?聖女にしては煩悩が多いように感じるが」
「おっと、正直なのが裏目に出たようだね。その失言を取り消すか、もう一回絞められるか。選んでいいよ」
「俺はウソが吐けない体なんだ、その失言は言いたくなかった。許せ」
「冗談だよ。聖女なんて協会で働けるようになるまで修道院で身を清め続けなきゃいけないから私くらいの歳の聖女なんてみんな欲求不満。だから、聖女になっても仕事しない人の方が多いんだよね。っていうか、聖女なの、じゃなくて私はもう死んだことになってるから元聖女だよ。それに、レオンの付き人になれた時点で聖女だろうが国だろうがクソくらえだ」
「そ、そうか。そういえば、シーファって何歳な…」
容赦なく右の頬にフックが入った。聖女ってもっとお淑やかなイメージあったけど単純に身体能力でいうとシーファの方が絶対に上だ。
「レントの元いた世界ではそれってタブーじゃなかったんだね。じゃあ、私が教え込んであげないと…」
「いや、タブーだった、タブーだったよ!!でも、気になったから正直に言うしかなくて…」
「…ふふっ。ごめん、冗談だよ。レオンにだったら年齢だろうと何だろうと教えてあげるよ。私は34歳だよ」
「へぇ、34…ん?34?」
「言ってなかったけど、私ハーフエルフだから15歳以降になると30歳になるまで体の成長が止まって、31歳以降は普通の人間と見た目が年齢の2分の1になるんだ」
「へ、へぇ…」
まだまだシーファについては知らないこともあるし、色々お互い質問しあったりしてみるか。
…怒ってるフリ、俺をからかってる時はマジで冗談に見えないし、怒らせるようなことだけは絶対に避けよう。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます