第4話 「私、キス魔っぽいのになっちゃったかも」
手紙を出して2日、そろそろあの王のところへ届いた頃だろうか。俺はベッドの上で寝転がり
「レオンって、恋人とキスしたことある?」
「ない」
シーファの率直な質問に俺は即答した。そう、俺は2人彼女がいたことがあったが、どちらともキスをしたことはなかった。
「へぇ。じゃあ、ファーストキスは私がいただけるワケね」
「まあ、そうだな。シーファはキスしたいのか?」
「いや、まあ、好きな人とだから、というか、レオンとだからなんだけど」
「俺じゃなくても勇者と結婚したかったんなら他人でもよかったんじゃないのか?」
「レ、レオンが私を好きだって言ってくれたから。求められたら、相応のことをするしかないじゃん」
「別に俺は一緒にいられるだけで満足だよ。嫌なら無理しなくても」
「満足しないで!!私はもっと求められたいんだから」
「じゃあ、いずれ侵すか」
「正直なレオンがそうしたいんならすればいいんじゃない?」
俺が正直故に口を滑らし、怒らせるか拗ねさせるかするかと思ったが、羞恥に顔を染めたシーファの返答はあっさりしたものだった。
「お、俺としたことがイケナイことを考えてた…。傷つけたくないから侵したりはしたくないかもな」
「俺としたことが、って言うけどさ、男の子だったら仕方ないことだよ。女の子とあんな事やこんな事をする妄想くらいしちゃうのは」
「そうか。シーファはキスがしたくてたまらないか」
「ま、また私の考えてる事見たの!?まあ、いいけどさ…」
「いいぞ、キスしても。本来、こういうのは男の方が積極的になるモンだとは思うが、どうするかはシーファの判断に任せる」
「そ、それじゃあ…」
俺はさっき覗き見てしまったシーファの脳内を思い出して身震いした。
『ああ…、レオンとキスしたい…。早くキスしたいのに…。あの潤っていて弾力もありそうなその唇を独り占めしたい…。むしゃぶりついてレオンを完全に私だけのものにしたい…。ああ、早く、早く…』
さて、どんなことをされるのだろうか。まず、普通のキスで終わらないことは確かとして、ちょっとアブノーマルなこともしてくるのだろうか…。
ベッドに寝転がった俺の上にのさばったシーファは、俺の目をまじまじと見つめると、そっとキスをしてきた。
「どう?ファーストキスは」
「うーん、何か物足らないような気もする」
覗き見てしまった以上、ヤバいことをしようとしている以上、そっちに誘導してみるしかない。いいじゃないか、少しくらい冒険したって。
シーファは俺の顔を持ち上げると、今度は唇に吸い付いた。ズゥーーと音を立てながら一生懸命に。
そこまで俺のことが好きなのか?いや確かに、理想の屋敷を作ってくれたら溺愛するって話はあったけども。
次に、俺の中に舌を突っ込み、俺の舌と絡ませてきた。
ああ、なんだろう。とってもイケナイことをしてるような気分だ。が、今はこの流れに乗ろう。
そして、シーファは唾液を俺の口の中に垂らし始めた。
「ほら、飲んで」
俺は従うままにシーファの唾液を飲み込んだ。ああ、好きな人の唾液なら何の躊躇いもなく飲めるんだな。
「どう?おいしい?」
「美味しいかどうか、というよりは幾らでも飲みたい、って感じかな」
「じゃあ、もっと…」
そして、俺とシーファは熱烈なキスを続けた。
*
俺たちが我に返ったのは、もう夕日が落ちた頃だった。何者かが玄関のベルを鳴らしたのである。
「まさか、国王の配下に気づかれたか!?」
「悪い方向にばっかり考えてるとそっちになっちゃうよ」
「ま、まあ、ただの村の人だと信じて…」
俺たちが恐る恐るドアを開けると、そこには1人の老人が立っていた。
「おお、あまり見ぬ顔じゃな」
「ええ、まあ、2,3日前に引っ越してきたばかりですから」
「そうかい。それでお2人さん、大変な話があるんじゃ」
「な、何ですか?」
「それが、今回呼び出された勇者様とその付き人の方が亡くなられたらしいのじゃ。今、あちこちで緊急拡散されておるからお2人さんも自分たちの目で確認してみるとよい」
「は、はい、分かりました」
俺たちは、喜びに震える手を気づかれないようにドアを閉めた。
「やったぁ!!これでレントとしばらくは一緒に暮らせるね」
「そうだな。でも、勇者がいない間を狙って魔王軍が攻めてくる可能性もあるからそれにだけ気を付けような」
「うん。それじゃあ、記念として…」
「まだ続けるのか」
俺たちはベッドの上でキスをし続けた。
*
「私、キス魔っぽいのになっちゃったかも」
「まあ、他の男にはしないようにな」
「それくらい分かってるよ!!でも、隙さえあればレオンにはキスばっかりするかもね」
「まあ、俺はそれでいいけど」
「レオンもキスは好き?」
「好きだな」
「じゃあ、もうちょっと…」
こうして夜は明けた。
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