決戦、最終戦。

 そして尺の都合上カットされたが色々あった。

弦貴少年は無力化されたまま何百とか何千とか死んで、怪獣の方も、能力の応用で体液を循環させていたが何だか死にかけだった。

つまり。どちらももう限界気味だった。

勿論、弦貴少年には再生能力があったが、しかしその能力の限界がいつ来てもおかしくないくらいには死んでいた。怪獣だって、もう敵はいなかったけれど、能力の使用をやめた時点で自分が死ぬかもしれないというのを理解していた。


 そんな中、弦貴少年が最後に残した伏線的なものが着々と成長していた。彼の美少女然とした腹のなかで何かが成長していた。別に変な意味ではなく、それは彼の再生能力の応用であるところの肉体改造だった。彼は腹の中で、大砲のようなものを育てていた。勿論、それがただの再生能力(些か自由度は高いが)である以上火薬やらなんやらを用意することはできなかったが、そもそも水中だから用意したところでという話でもある、それは「ばね」を使って動く大砲というか玩具に近いような物だった。


 体の構造をあまり知らないというだけで、大まかに想像できれば体内で工作的なことも可能である弦貴少年は(ただ、一瞬で爆散するのと比べると継続的な痛みが結構きつい)体の中に玩具の銃のようなものを作っていたのだった(一時期、というか少し前に学生間でボールペンを改造してシャーペンの芯だか消しかすだかを飛ばすのが流行らなかっただろうか。彼が体内に作り出した大砲擬きはあれとよく似ていた)。


 そして、また更に尺の都合でいつの間にやら大砲の完成まで時間が進んでしまった頃。

怪獣の方も少し集中が緩んでいた。慢心というのはいつだって人を弱くする。人ではないが。

そして、水球から肉の砲弾が放たれた!

次の瞬間、ぼろっと自壊した弦貴少年を見て、「それ」は慌てて意識をそちらに向けて。

しかし時既に遅し。ヒーローは待ってくれない。

弦貴は怪獣の頭蓋(おそらく)に肋骨ソードを突き刺した。次の瞬間爆散した彼が怪獣の頭の中で再生し、決着がついた。


 ふう、と一息ついてそれからすぐにプロとしてのスマイルを取り戻し、弦貴少年は目元で横ピースするタイプの決めポーズを取り、そして叫んだ。

「世界に代わって爆殺完了☆エスペランザシャイニングッ!!!」

その台詞を聞くファンはいない、というか人類皆死んじゃったし、折角の衣装も謎の体液でびちょびちょだったけど、とりあえず男子中学生で最強の魔法少女はもう少しだけ勝利の余韻に浸っておくことにした。


 それはそれとして、その後の彼はしっかり生存することができずめっちゃ餓死した。

勿論死んだか死んでないかくらいで再生はするのだけどそれで胃の中身が満たされる訳でもなく死ぬまで常に空腹で過ごした。

さしもの彼も(自らを含む)人肉を食そうとまでは思わなかったらしく、ごく普通に木乃伊になって、たまに美少女として復活するだけの一生を送ったとのことだ。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

超常決戦 白雪工房 @yukiyukitsukumo

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ