第22話 テレデレです。

あれから数週間経ち、準備期間も大詰め。明日は文化祭当日。クラスメイトみんなで協力して作ったプラネタリウムは最後のライト設置を機に完成を迎えた。


「じゃ、とりあえず一度流すか」


文化祭実行委員の子が教室のカーテンを閉め暗くし、プラネタリウムを起動する。教室の天井を空に見立て映し出される星々の数々。皆一様に感じた。綺麗だと。

上を見上げていると俺の横に人の気配を感じ、気配の主を見る。


「由ちゃんどうしたの?」


「仁太と見たいって思ったから来たの」


この子は…俺の心を掴むのが上手すぎる。非常に困る。

そう、あの日から由ちゃんは周りの目を気にせず、俺にも普通に声を掛けてくれるようになった。あの恥ずかしがってる由ちゃんをもう見られないと思うと惜しいと感じるけど、今の激甘対応の由ちゃんはさらに心臓に悪い。簡単に言うとドキドキして落ち着かないだ。


「あの由ちゃん、いくら暗くても周りに人がいる場所でそんなにくっ付かれると…」


「じゃあ人がいない場所ならいいの?」


「ぐっ…」


心臓が痛い。肩から彼女の呼吸が伝わってくる。上目遣いの彼女。暗い教室で周りの生徒は上に夢中。なのに俺たちは互いに見つめ合っている。


「あの、いい雰囲気の所悪いんだけどね。一応ここ教室ね」


「「!?」」


俺と由ちゃんの間から康ちゃんが顔を覗かせる。今のはやばかった。康ちゃんが来ていなかったら俺は由ちゃんにキスしていたかもしれない。


「康ちゃん助かった。ありがとう」


「…?良いって事よ?」


感謝。その後、問題なくプラネタリウムの上映が終わり俺と康ちゃん、野々くんとでお昼ご飯を食べに中庭へと向かった。


「ね~由ちゃんを文化祭の日に一緒に回ろうって誘いたいんだけどどうやって切り出したらいいと思う~?」


「え、そりゃ一緒に回れね?って言えばいいじゃん。二人は付き合ってるんだろ?」


「え?」


「え?」


困惑。康ちゃんの口から出た言葉が頭の中で反芻する。


「いやいやいや違いますけど!!!」


「はあ?じゃあ最近妙に距離が近かったのも気のせいか?」


「確かに距離が近くなったよね。周りも薄々感づいてるんじゃないかな?」


「野々くんまで!?」


「なぁ聞いてくれよ鳴海ーこいつ教室が暗いことをいい事に藤咲さんにキスしようとしてたんだぜー?」


「えー付き合ってないのにー?最近の若者はマセテマスネー」


「だああ~もう!相談した俺が間違いだった!康ちゃんはともかく野々くんまでふざけるとは思わなかった」


「ごめん」


「こらこらじんたん。鳴海を虐めてやるなよ」


「虐められてたの俺ね!!」


二人に相談したけど、相手にされなかった。相談する人を間違えたようだ。でもほかに相談するような人いないし。結局、悩んでいたら放課後になったし、由ちゃんは誘えなかった。

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