第21話 仲直りです。
俺に馬乗りになって襟首を掴みわんわんなく彼女に頭が混乱する。
(お弁当食べようと思って転がってったお箸拾おうとしただけなのになぜ…???)
俺は彼女が落ち着くまで背中を撫でる。優しく。さっき教室であんな事を言ってしまった手前ひじょーに気まずいのだけど。
「馬鹿仁太」ズビ
「はい…ごめんなさい」
「何があったのか知らないし!仁太の気持ちを100%理解できるなんて思ってない!けど!仁太の思ってる事!抱えてる事話してよ!もう抱え込まないで!」
俺は由ちゃんに会いたくなかった。由ちゃんにあったら自分の情けなくて幼稚な部分を彼女に曝け出しそうになるから。好きな子の前ではカッコつけたいって、嫌われたく無いってそう思った。
「ごめん。言わなきゃ分かんないよね。余計不安にさせちゃうよね。話すから聞いてもらっていい?」
「うん…」ズビ
夏休みにあった事。その全てを話した。恨んでた父親に会ったこと。その父親が妹にした事への動機。そして父親の死。自分の気持ち。
「俺は恨んでた父親が死んだって聞いた時、悲しくなった。最低だよな。あいつは志乃に酷い事した奴で、最近まで恨んでて会いたくないやつだった。でも一度会って、話して、今まで持ってた気持ちが変わって苦しくなって。こんな事みんなには言えなくてそれで余計苦しくなって。由ちゃんにも当たっちゃた。本当にごめん」
「もう1人で抱え込まないで」
「うん」
「もう死のうとなんてしないで」
「うん…うん??」
「?」
「死のうとなんてしてないよ?」
「え?」
今さっき彼女がどうしてこんなに取り乱していたのか理解できた。
(俺がお箸を拾いに行ったときちょうど由ちゃんが屋上に着いた。その構図的に俺は飛び降りようとしていたって見えてもおかしくない…)
「勘違い…?」
「そうなるね」
「は、恥ずかしい!!」
由ちゃん的にはこの体制は恥ずかしくないのだろうか?
「そろそろ降りて欲しい…」
「っー!!!」
叩かれた。痛くはないけど、俺悪いかな?いや、悪かったです。ごめんなさい。
彼女の思っている事、俺の思っている事。言わなければ分からない。超能力者でもないただの人間なのだから。
その日から由ちゃんは周りの目を気にせず俺に話しかけてくれるようになった。嬉しいけど周りの視線がキツく刺さるように感じる。いや、生暖かいような…?でも嫌な視線ということは確かだった。
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