第13話 言えない秘密です。

あれからバイト先のカフェに着くまでに落ち着きを取り戻した俺はみんなとは別にカウンターへと座り、大樹さんに先の経緯を話す。


「今日父親を…いや、慎二を見かけました」


俺が戸惑いながらも話す様子を見て大樹さんはいつものにこやかとした表情から一変、親身になり聞いてくれた。


「あの子たちには言わないのかい?」


「康ちゃん達をこんな家庭の事情に巻き込みたくないです。俺が、ずっと一緒に居たいと思えた友達達だから」


康ちゃん、夜巳さん、カトちゃん、由ちゃん。俺の友達をあいつなんかのために危険に晒したくない。


「ずっと一緒に居たい友達ならなおさらこの事を言うべきじゃないかい?」


「…」


「危険な事態に巻き込まない為にも仁太の周りに起こりうる危険について知っててもらうことが重要だと思うんだ。でも決めるのは仁太だ。僕はその選択を尊重するよ」


そう言い大樹さんはほほ笑む。大樹さんの言っている事はたぶん正しい選択だ。でも俺は怖いんだ。また自分から人が離れていくことが。


俺は心配そうにこちらを見ている友達の下へと歩く。俺はまだ選択できないでいる。


「大丈夫なの仁太?」


「うん、大丈夫。軽い眩暈だよ」


「どうせ勉強のし過ぎで寝不足だったんだろー?じんたんは勉強の心配はいらないって言ってても心配になるタイプだからな」


「そうかも」


ああ楽しい。この時間が永遠に続けばいいのにと思う。


「さ、気を取り直してお疲れ様かいをしましょ!」


「さ、父さん料理持ってきてー」


大樹さんの作る料理を食べながら語り合った。楽しい時間は永遠には続かない。すぐに終わってしまう。夜も遅い時間となり解散となった。


俺はそのまま病院へと向かう。今日は学校から帰ったらそのままみんなに連行されたため病院には行けていない。病院に向かいながら今日伝えることを考える。

志乃に父親のことを話すべきか、でも話すことで志乃を不安にさせるかもしれない。そんなことを思いながらも病室につき扉を開ける。


「あら来たのね」


「母さん!?仕事は!?あっ…」


そこには仕事で忙しく家にあまり帰ってこない母さんが来ていた。志乃は眠っているようで俺は大きな声を出した口を両手で覆った。


「一段落したから志乃のお見舞いにね。それと今日はアイツの釈放日だから一応警戒しておかないとね」


「母さんそのことなんだけど…」


俺は今日あったことを母さんに話した。


「私は今日からしばらく志乃のそばに居るわ。ホントは仁太の近くにも居たいんだけど…あんたも気をつけなさい。アイツのことだから逮捕された逆恨みで何してくるか分からないわ」


「分かった。俺は志乃が無事ならそれでいい。俺のことは気にせず志乃のこと見ててよ。今日は顔見れてよかった。じゃ俺もう帰るね」


俺は寝ている志乃の頭を撫で、病室を後にする。


「私は息子にも無事にいてほしいんだけど…」


病室に眠るわが子。私の我がままで傷つけてしまった。もう、同じ轍は踏まない。


「もう一度、私の家族に手を出してみろ。次は逮捕だけじゃ済まさない」

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