第11話 もうすぐ誕生日です。
7月に入り、照り付ける太陽の日差しが強くなっていく今日この頃。放課後のバイト先では…
「早伊香ここ間違ってるよ」
「うそー!?」
「あれー?和栗はこんな問題も解けないんだぁ?」
「だぁー!!カトうるせぇぞ!!」
「うるさいとは暴言だ。教えてあげてるのに」
「はい…すみませんでした」
バイト中の俺を茶化しに来たのか、皆で押し寄せここでテスト勉強を始めやがりました。
「モモちゃんにこんなにも友達が出来てたなんてお父さん感動だよ!!」ズビビ
「大樹さんコーヒーお願いします」
「はい、すまないね仁太君。テスト前だって言うのにお店手伝わせて…」
「その分お給金弾んでもらってるんで大丈夫です」
「志乃ちゃんは元気かい?」
「元気ですよ、今日この後会いに行く予定です。リハビリ頑張ってて少しだけ歩けるようになってきたんです。もう少しで誕生日なので何かプレゼントあげれたらって思ってるんですけど…」
「そう言いうのは俺じゃなくもっと詳しい子がいるじゃないか?」
そう言いながらカウンター越しにテスト勉強に励んでいる由ちゃんたちの方へと目を向ける。そのことに気づき俺は俯く。
「…まだ話してないんです」
「そうか…」
少し気まずい空気になったが、コーヒーが出来上がったことでその場を離れお客様に届ける。
バイトの時間が終わり俺は皆が勉強しているテーブル席へと向かう。
「仁太お疲れ様」
「槙野くんお疲れ」
「ありがとね~今日は勉強会に混ざらないで帰るね。康ちゃん時間ある?」
「おお、じゃ俺とじんたんは一足先に上がるぜ」
「なら今日はここまでだね。和栗はさっきの続き頑張りな」
「おうよ!」
俺と康ちゃんは3人を残し一足先に店を出る。その理由はカトちゃん以外の二人には話してない内容が関係してるから。
俺と康ちゃんが向かった先はこの町の大きな医療施設。つまり病院である。
病院の受付で話をして面会時間は過ぎているが少しの間だけなら大丈夫とお許しを貰い、407号室へと向かう。
「志乃、今日は康ちゃんも来てくれたよ」
「お兄ちゃん!康二さん!来てくれてありがと!!」
「少し歩けるようになったって聞いたぞ。偉いな志乃ちゃんは」
「えへへ」
それから少し話をしながら花の水を変えたり、身の回りの整頓をする。だが案外片づいていることに疑問をもつ。
「あれ、今日母さん来てた?」
「うん。お昼休みに来てくれてたよ!」
母さんは女手一つで俺たちを育ててくれている、編集者で働くバリバリのキャリーウーマンである。忙しいはずなのに…
「そっか良かったな」
「うん!」
その後、学校の事など色々な話をして病院を後にする。病院からの帰路で康ちゃんが神妙な面持ちになるので俺は身構える。
「志乃ちゃん可愛い過ぎね?」
「そりゃそうでしょうとも。妹はやらぬぞ?」
「お兄様」
「やめてよなんか背中がゾワゾワする」
「え、本当に嫌がってんじゃん。ごめんて」
「でも、どこの馬の骨とも知らないやつよりは康ちゃんの方が良いかな~」
「おっしゃあ!お許しが出たぜ!!」
「違うけど」
そんな悪ふざけの中心が自分の将来のことだとは病院に居る志乃自身は知る由もなかった。
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