第3話

ファビオラが悪役令嬢としてヒロインの『アリス』の前に立ちはだかるのが十六歳。

ファビオラの正統派の悪役令嬢でプライドが高く、我儘で傲慢な美少女。

ちなみにあまり頭はよくない。トレイヴォン・ダイヤという公爵令息で騎士はアリスの幼馴染だ。

ファビオラはマスクウェル・ハート・トランプの婚約者であることを誇りに思っていた。


薄々気づいている方はいるだろうがテーマとなっているのは『トランプ』である。

他の攻略対象者にサンドラー・スペードとカイド・クローバーがいるが、トランプ学園に通うまでは関係ないので今は割愛させていただこう。


マスクウェルはいつも柔らかい笑顔でいるのだが、本当はこの婚約に大きな不満がある。

しかしハート女王はマスクウェルの気持ちよりも王家を優先された。

今、王家は貴族達からの不満を受けて板挟み状態だ。

これは新興貴族の勢いと古参貴族の不満を中和するために組まれた縁談だった。

王家の真の目的はブラック伯爵家の勢いを抑えて管理下に置くこと。

そしてお金目的で近づいてくる貴族の令息達の中でファビオラがマスクウェルを選んだ理由は……顔がいいことと王子様であることだ。


アリスとファビオラ、真逆な性格な二人なのだが、どちらを選ぶのか明白だろう。

そして引き裂かれたアリスとマスクウェル。

ブラック家の一人娘で女王様として育ってきたファビオラはマスクウェルとの初めての顔合わせで「あなたの顔が好きだから婚約者にしてあげる」と言った。


しかし今のファビオラもマスクウェルの顔に惚れ込んでいるため、性格は違うけれど物語上は道筋通りに進んでいるのである。

そんなファビオラの態度にマスクウェルがどう思ったのか……考えれば簡単だ。

マスクウェルにとってファビオラは好きでもなんでもなく全く興味を持っていない。


しかしそんな関係性に変化が起こる。

婚約してからファビオラはマスクウェルに本気で恋をしてしまう。

顔がタイプで王太子として完璧に振る舞い、民達に慕われる優しさを持っているマスクウェル。

裏の顔とのギャップがまたたまらない。

間近で見ていて惚れるなという方が無理だろう。

立場はいつの間にか逆転していき、マスクウェルの魅力にファビオラの方がハマってしまう。


十六歳でトランプ学園に入学した際に、アリスとマスクウェルは久しぶりに再会する。

アリスはマスクウェルの疲れた心を癒していき、以前は恋心がなかった二人の関係に変化が訪れる。


ファビオラはマスクウェルの気持ちの変化に気づき、アリスをあの手この手で追い詰めようとする。

しかしアリスは持ち前の明るさと粘り強さでファビオラに対抗していく。

マスクウェルとアリスの絆はより強固なものとなり、そこでファビオラは二人の絆を見せつけられて絶望へ。

そしてマスクウェルの愛が絶対に手に入らないことを悟り、ついに凶行に走る……とのことだ。


その中でも絶対的にアリスを慕っており、彼女の魅力にどっぷりと浸かっているのが幼馴染のトレイヴォン。

アリスのためならどんなことでもしてしまう闇深い一面もあり、ファビオラを断罪する騎士。

つまりマスクウェルと共にアリスを守り、ファビオラを断罪する瞬間、最高に盛り上がる。

トレイヴォンを選んだ場合も同じようなことが起こる。


しかしアリスを虐げることは今のファビオラには不可能だ。

だからアリスがマスクウェルと幸せになるためにできることをする。それしかない。


その前には断罪されないために、マスクウェルと関わらないようにして婚約者にならないようにしようと考えていた。

もし婚約者になったとしてもアリスを虐めないようにしてマスクウェルがヒロインに惚れたらそっと身を引けばいい……と思っていたがその野望は見事に砕け散った。

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