第5話 選択授業

 教室を出た俺たちは寮に向かっていた。俺はもちろん(?)寮の場所を知らないのでルーノについて行っているだけだが。


「ここだね。1年生の寮」


「おぉ~」


 やっぱりでかい。外観とか完全に貴族の屋敷だし。この学園金かけすぎてんだろってレベルで全部でかいな。


「すっげ。予算とかえぐそう」


「そこに目が行くんだ……さ、入るよ!」


「失礼しま~す」


「ようこそディリシア魔法剣術学園一年寮へ」


「!?」


「驚かせてしまったようで、申し訳ございません。管理人のニーナと申します。これから一年間、顔を合わせることになると思いますので、よろしくお願いいたします」


「「よろしくお願いします」」


「お二人はアリオスト・レグシェル様とルーノ様ですね。こちらへどうぞ。お部屋へご案内いたします」


「様だなんて、僕は平民ですし、そんなにかしこまらなくても…」


「いえ、相手が誰でも敬意をはらって接する。それが私のスタイルですので」


「スタイル、ですか」


「はい、スタイルです」


 案内されたのは三階のルーノと隣同士の一人部屋。ベッドと机といすの置かれているリビング的な場所とトイレ、バスルームがあるシンプルな内装の部屋だ。


「荷解きが終わりましたら、食堂の方へお越しください。場所は一階でございます」


 ニーナさんはそう言うと下に戻っていった。


「この部屋の大きさちょうどよくて落ち着くなぁ。前世を思い出す」


 荷解きを終えるとルーノがやってきて


「アーリー、荷解き終わった?夕飯食べに行こうよ」


「終わったよ。今行く!」


「この学園で食べれるご飯、全部無料なんだって!ありがたいな~」


「そうなんだ。やっぱり無料はありがたいんだね」


「もちろん!というか僕、お金はなるべく節約するようにしてるんだ。将来のためにも。自分で稼いでるわけでもないしさ」


「ルーノはえらいなぁ…ていうか、ルーノもお金稼げばいいじゃん」


「そんなこと言ったってどうやって…」


「え?簡単じゃん。


「ぼ、冒険者!?僕じゃ無理じゃない…?」


「いやいやいや何言ってんの!あんだけ魔法使えたら最低でもBランク、Aランクだって狙えるわ!」


「そ、そんなに?」


「当たり前!今度の休み登録しに行こ!ね!」


「わ、分かった、行くよ」


「よし」


「よしってどんだけ行かせたいの、もう…ほら、ついたよ食堂。何食べる?」


「そうだなぁ、これとか――」


 割愛。


 夕飯を食べ終えた俺たちは特に何をすることもなくそれぞれの部屋に戻り眠りについた。


 翌朝


 いつもよりも少し早く起きてしまった俺は、それならランニングを早めに終わらせようと思い立ちそっと部屋を出た。


(どこを走ろうか。やっぱ寮の周りかなぁ…って、あれ?)


 寮と教室の間には広場のような場所があるのだが、そこに人影が見えた。


(あれは……ノーセント・シーディス君?何をしてるんだ?こんな朝早くから)


 目を凝らしてよく見てみると、どうやら剣の素振りをしているようだった。



(なんだ剣の鍛錬か。邪魔しちゃ悪いからな、俺はさっさと走ってこよ)


 ランニングを終えたので、ノーセント君がいた場所をもう一度見てみたが、もう戻ってしまったのか、そこに彼の姿はなかった。


 寮に戻りシャワーを浴びて学園に向かう準備をする。朝食を食べてルーノとともに学園へ向かった。


「そういえばアーリーは選択授業どうするの?」


「選択授業…あーなんかあったねそんなん。特に決めてないけど…取り敢えず魔法と剣術関係のは取っとこうかな」


「そっか。アーリーは剣術もできるんだもんね。結構珍しいんだよ両方取る人」


「そうなの?」


「そりゃね。大体の人はどっちかに集中するから」


「なるほどね~。ちなみに薬草学とかあったりする?」


「確かあったと思うけど...取るんだ」


「まーね。俺一応ポーション調合のスキルあるしさ。薬草の事知っといて損はないでしょ」


「確かに…てかアーリーさらっとすごいこと言ってんね…」


「そうなんかな?なんか気づいたら持ってた系多いけど」


「ほかの人がそれ聞いたら怒り狂うね」


「バレなきゃ問題ナシッ」


 そんな話をしているうちに教室に着いた。


「おはよう諸君。今日はまず、選択授業についてだ。皆知っているとは思うが一応説明しておこう。本校では全員が受ける座学のほかに、選択授業というものを行っている。これはそれぞれの得意分野を伸ばすなり、苦手な分野を克服するなり、生徒が自分のやりたいように学習するためのものだ。数に限りはあれど、多くの先生方が君たちに知識や技術を与えてくださる。君たちにとって最良の選択ができることを祈っているよ」

「まずこの紙に自分の選択するものを書いてくれ。午前中に集計を終わらせ午後から授業を行う。午前は座学だ」


 配られた紙にはたくさんの授業の名前が書かれていた。


(ふむふむ。まずは魔法、剣術、薬草学…と。あとはそうだな…お、体術もあるじゃん。そいえばセルヴィア先生最初の自己紹介で体術の先生って言ってたな...ん?これは――)


 他にも面白そうなのが2個ほどあったので、それも選んだ。

 午前の座学はこの世界の歴史がメインだったが、知っていることがほとんどだった。試験の結果見た時も思ったが、メイス先生優秀すぎないか?


 午後になり、俺は選択授業の教室に向かっていた。今日受けるのは薬草学。俺のスキル、ポーション調合は調合するときの作業効率が上がったりポーションの効果が高まったりするスキルだ。よくわからんがポーションを作るには才能が必要らしく、まったく作れない人もいるんだとか。そのためポーションを作れると重宝され、このスキルを持っているとより良いらしい。


「それでは薬草学の授業を行うぞ。ワシは薬草学の教師ガルム・イータという。薬草は薬にも毒にもなる。正しい知識を持って扱うんじゃ。授業の流れはその日扱う薬草についてを学習したのちそれを使ったポーションを作成していく、といった感じじゃ」

「今日扱っていく薬草はこれ、ウラン草。傷を癒す効果のある薬草じゃ。これとライル草を一緒に調合することでただの傷薬よりも効果の高い、回復ポーションが出来上がる。皆知っているだろうが、ポーションの作成にライル草は必須、これがなければ何も作れんからの。さて、薬草の説明はここまでじゃ。取り敢えず、各々調合してもらおうかの。分からんところがあったら聞いとくれ。では、始め!」


(いや、雑!職務放棄じゃねぇか!俺は作れるけど…他の奴らは大丈夫なのか?)


 周りを見ると狼狽えているものとさっさと調合を始める者は半々、といったところか。


「先生!質問があるのですがよろしいでしょうか!」


「なんじゃ、レグシェル」


「《ポーション調合》のスキルは使ってもよろしいでしょうか」


「お主、スキル持ちじゃったのか。もちろん使ってよい。ああ、言い忘れていた。今回は初めての授業じゃ、調合ができない者も多かろう。評価はつけん。じゃが次回からは評価をつける。観点は2つ、完成したポーションの質と作業のスピードじゃ。プライドが邪魔して質問もできないようであれば、いい評価がつくことはないじゃろうな」


「ッ!」


 何人かの生徒がびくっと肩を震わせた。おそらく貴族なのだろう。変なプライドなんて持ってても何の意味もないのに。


「さて、俺はさっさと作っちゃいますか。まず《ポーション調合》っと」


 スキルを発動させ、手早く調合を済ませる。


「せんせーできましたー」


「む!?いくらなんでも早すぎないか?適当に作ったりして質が落ちておったら、本末転倒じゃぞ?」


「大丈夫ですよ」


 先生はそんなことを言うが、俺は自信しかない。何故って?そりゃもちろん、俺のポーション調合のスキルが普通のじゃないからだ。なんたって俺はだからな。


 -------------------------------------

《ポーション調合》

 ポーションを作成する際作業効率が上り、質のいい物を作りやすくなる。


【称号】《転生者》により、通常のスキルより効果が高まる。

 -------------------------------------


 つまり、作業効率はさらにあがり、質が落ちることもなくなるのだ!ふははは!ということで……


「な、なんだこの透明度は!ただの質のいいポーションという次元の話ではない……これはまさか、上級ポーション!?どうやったら一生徒にこれを作ることができるというのだ!?」


 まぁこうなる。


「いや、どうといわれましても、スキル使って作ったらこれができるというか…」


「ではスキルなしではどうなるのだ?一度やって見せてくれ!」


「えぇ?今ですか?」


「今じゃ!ほれ、早う!」


「分かりました!急かさないでくださいよ~」


 スキルを使わずポーションを作る。


「はい、できましたよ」


「スキルを使わなくてそのスピードか、質のほうは…先ほどのより落ちてはいるが十分高い。うむ、なんとも素晴らしい能力じゃ!ぜひ我が薬草学教室に入らんか?」


「え~っと、嬉しいお誘いなのですが、あいにく今のところどこかに所属つもりはなく…お断りさせていただきます」


 教室とは、学校で言ういわゆる部活のようなものだ。生徒の中でどこかに所属しているのは半分くらいだ。何故知っているかって?勉強したからだ(ドヤァ)


「そうか…残念じゃが今回は諦めるとするかの。気が変わったらいつでも来ると良い。大歓迎じゃぞ!」


「は、はい。ありがとうございます」


 そんな感じで初めての選択授業は終わった。ガルム先生強引な人じゃなくてよかったぁ。


 ――――――――――――――――――


 うすうす思ってたんです。《転生者》の称号で得られる効果だいぶチートでは?と。そんな予定なかったのに…


 次回:新たな友


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 またお会いしましょう。ではでは~

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