第4話 入学

 俺は今日、学園に入学する。


 試験から一週間が経った。この一週間、俺はいつもと変わらない生活をしていた。朝からギルドで依頼を受けたり、魔物討伐をしたり……すると、今までにないものがステータスに増えた。それは【耐性】だ。実をいうと、耐性系については母様に教えられたことがあり目をつけてはいたのだが、今までは魔法を使ってくる魔物や状態異常系の魔物とは戦ったことがなかったので(さすがに危ないからって母様に止められてた)耐性系を獲得する機会がなかった。


 そして先日、母様から許可をもぎ取った俺は早速戦うことにしたのだ。

 戦ったのはポイズンフロッグ。よくある毒系の攻撃をしてくる魔物だ。こいつはランクがEランクと低く、攻撃に使ってくる毒も弱いもののため、すぐに倒すことができた。しかし、さすがに一匹倒しただけで耐性を獲得できるほど甘くはなく、何匹も倒してようやく手に入れたのだ。そのおかげでお金も稼げたのでよかった。


 そして今、俺はウキウキで学校に行く準備をしていた。


「ルーノに会うのは一週間ぶりかぁ。楽しみだな~」


「アーリー、そろそろ出るわよ~」


「はぁい、今行きます!」


 部屋を出て屋敷の入り口の方に行くと、使用人が数人と母様が待っていた。


「うん。制服、とても似合っているわ」


 今、俺は制服を着ていた。学園の制服は黒色を基調としたもので、何者の干渉も受けない、という意味があるらしい。アレンジは自由だそうだが、よく分からないので何もしていない。


「ありがとうございます、母様。それでは、行ってきますね」


「行ってらっしゃい。気を付けてね」


「はい!」


 こうして俺は、学園に向けて出発したのだった。


 ――――――――――


 学園に着くとなにやら人が集まっていて、見ると掲示板のようなものに試験の結果とクラス表が貼ってあった。この学園はクラスが試験での成績順にA,B,Cの三つに分けられる。


(人多いなぁ。俺のクラスは…と)


 Aクラスのところに名前があった。Aクラスの人数はとても少なく、10人ほどしかいない。Bクラスは20人ちょい、Cクラスは残りの全員、といった感じだ。


(お、あったあった。ルーノは…おっし、一緒だ。探しに…いや、クラス行ったら会えるか)


 次に、試験の結果を見に行った。そこには筆記、剣術、魔術それぞれ上位3名の名前が書いてあった。


 筆記

 1位 アリオスト・レグシェル 486/500

 2位 ウォルター・ルヴァント・ディリクトリー 435/500

 3位 ファルティア・ノーリッシュ 408/500


 結構できたとは思ってたけど、ここまでだったとは。少し意外だな。


 剣術

 1位 ノーセント・シーディス

 2位 アリオスト・レグシェル

 3位 ウォルター・ルヴァント・ディリクトリー


 1位はやはり例の《王の剣》の家系と言われていたノーセント・シーディスくんだ。俺の2位はおそらく、Aランク冒険者から一本取ったのがでかかったのだろう。


 魔法

 1位 アリオスト・レグシェル

 2位 リシャール・ミッティア

 3位 ルーノ


 またもや1位だ。2位の子がおそらく神童と呼ばれる子なのだろう、そしてルーノの名前が3位にある。やっぱすごかったんだなルーノって。


 結果を見てそんなことを思っていると


「クラス表を見た人からこちらの大講堂に入ってください。入学式を行います」


 と、声が響いてきた。声を張り上げているわけでもなさそうなのにこんな大きな声が聞こえるなんて、何か魔法を使っているのだろうか……気になるが今は大講堂に向かわねば。


 声が聞こえてきた後みんな一斉に動き出したので、その波に乗って大講堂に入った。大講堂の中はクラスごとに場所が分けられているため、俺はAクラスのところに向かった。そこにはルーノを含めすでにAクラスの人がそろっているようだった。


「ルーノ、久しぶり。俺もしかして来るの遅かった?」


「久しぶり、って言っても一週間ぶりだけどね。別に遅れてはないと思うよ。他の人が単に早かっただけで」


「そ?よかった」


「これより、入学式を始めます。生徒の皆さんは注目してください」


「始まったね。てかさっきも思ったけど声が響いてるの、なんかの魔法なのかな」


「拡声魔法だけど……アーリー知らないの?そんな人いないと思ってたんだけど...?」


「へぇ~、やっぱ魔法なんだ。知らんかった」


「やっぱアーリーって変なとこ抜けてるよね」


「ソ、ソンナコト、ナイヨ?」


「おい、私語は慎め」


 誰かに怒られた。


「あ、ごめんなさい」


「ふん」


「怒られちった。あれ誰だ」


「え、知らないの?ノーセント・シーディス君だよ。剣術試験1位の」


「あ、あの子がそうなんだ」


「まずは、学園長のお話です」


「学園長の話はさすがにちゃんと聞くか」


 学園長らしき人が壇上に上がる。おぉ、よく見ると耳とがってる。ほんとにエルフだ。


「本日このディリシア魔法剣術学園に入学を果たした皆さん、初めまして。学園長を務めさせていただいております、シュリテール・ウィーロンと申します~。皆さん知っての通りこの学園は親御さんの干渉を受けることはありません。ですので、身分の差や派閥など気にせず新たなご学友を作るなり、自分の好きなことに没頭するなり、自由な学園生活を送ってくださいね~。私たちは皆さんを歓迎します――」


 おお、なかなかにいいこと言うじゃないか。まぁ、そんな簡単なことじゃないだろうが。この前みたいに身分を笠に着る貴族も少なくない数いるだろうし…


 残りの話は割愛。


「はー、終わった終わった」


「途中から寝そうだったね。アーリー」


「いや~、なんで教師の話ってこうも長くて眠気を誘ってくるんだろう。不思議だ、なんかの魔法だろもはや」


「そんな魔法ないよ(笑)」


「では、新入生の皆さんは教室へ移動してください」


「教室の場所知らないんだけど…ルーノは?」


「一年塔に行けばわかるってさっき説明されてたけど、まさか塔の説明も聞いていないの?」


「そんな話をしていたようなしていなかったような…?」


「いや、してたから!しょうがないなぁ。まず、この学園は教室のある場所が学年ごとに違う。一年生の教室は一年塔、二年生は二年塔って感じで教室は塔の中にあるんだ。塔の中は上からAクラス、Bクラス、Cクラスになってるよ」


「へー」


「ほんとに何も聞いてなかったんだ…」


「はっはっは」


「はぁ…っと、ここだよ、一年塔」


「おぉ~ここか。なかなかにでかいな」


「そりゃそうだよ。5,60人入るんだもん」


 すると、塔の入り口に立っていた事務員さんかな?に、話しかけられた。


「新入生の方ですね。こちらへどうぞ」


 促されて塔の中に入ると、そこは特に何もない部屋だった。いや、正確にいうと床に複雑な魔法陣と台座に乗った水晶があるだけの部屋だった。


「ここは……?」


「ここは教室の入り口です。まず、魔力を登録します。お二人とも、こちらに魔力を流していただけますか」


 さっき見た水晶。魔力を流すと、水晶が一瞬光った。


「これでいいですか」


「はい、大丈夫です。これから教室に入るときは、ここに魔力を流して魔法陣の上に立ってください。自分の所属するクラスに転移するようになっています」


「転移ですか」


「はい、そうすることで不審人物の侵入を防いでます」


「なるほど、登録されてない魔力じゃ魔法陣が作動しないようになっているんですね!」


「そういうことです。では早速、実際にやってみてください」


「はい」


 魔力を流すと足元の魔法陣が光って、視界が歪みはじめた。気持ち悪くなりそうで目を閉じると次に目を開けたときには教室にいた。まだ誰もいない。


「すげぇ、これが転移……!」


「転移するとこんな感じなんだね…ちょっと酔いそう」


「確かに」


「どこ座ろっか」


「そうだな……中央あたりが一番いいかな?」


 この教室、教卓と黒板を半円状にぐるりと囲むような形になっていて、どこに座っても見やすさにあまり差が出ないようになっている。

 俺たちが席に着いて少しすると、続々と人が入ってきた。最後の一人が入ってきた後しばらく待っていたらおそらく担任になるのであろう先生が一人入ってきた。


「ふむ、全員そろっているな。私は今日から君たち1年Aクラスの担任を任されたセルヴィア・アントレだ、以後よろしく。ちなみに私は体術の教師だ。今日は簡単な自己紹介等をしてもらう。まずは――」


「私からいかせてもらおう。ウォルター・ルヴァント・ディリクトリー。一応王子をやっている。が、この学園では身分を気にせんでも良いからな。気軽に接してほしい」


 王子もいたのかよ!てか気軽にって中々に難しいのでは……?


「では次は私が。ノーセント・シーディスだ。学生の身ではあるが、ウォルター殿下の護衛も兼ねてここにいる。よろしく頼む」


 流石は《王の剣》といったところか?学生のうちから将来が決まってるなんて、大変だなぁ。


「じゃあ次は俺!ヴィンセント・カイムだ!強くなるためにこの学園に来た。体を動かすのが好きだぜ!よろしくな!」


 ちょっと騒がしいタイプだな。


「え、えっと、ファルティア・ノーリッシュ、です。よ、よろしく、お願いします…」


 おどおどしてる。典型的なガリ勉タイプか?確か筆記試験2位の子だったな。


「私、リシャール・ミッティア。よろしく」


 少なっ!《神童》だったか。しかし何だ、近くで見るとかわいいな。


「ヤエニア・コルシィですわ。よろしくお願いいたします」


 清楚で礼儀正しい模範的な貴族令嬢って感じだな。


「ラーニン・シェフス。よろ~」


 いや軽っ!?異世界にもいたのかこんな奴。


「僕はラミーア・ウェリシア」


 ボクっ娘やぁ。んでみんなもっと言うことないの!?


「次は僕、かな…?えと、ルーノ。平民、です。よろしくお願いします」


 緊張してるなぁ。ま、そりゃそうか。こん中で唯一の平民だし。


「最後は俺かな。アリオスト・レグシェルです、よろしく。仲良くしてくれると嬉しいな」


「これで全員だな。では、今日はこれで解散だ。各々寮に向かってくれ。荷物は先に届いていると思うから、安心してくれ」


 先生はそう言い残すと早々に教室を出て行ってしまった。


「これで終わりかよ。あの先生もたいがい適当だな」


「確かにね…ま、僕たちあとは寮に行くだけだし、いいんじゃない?」


「じゃあ俺らも行くかぁ」


 そうして俺たちも教室を出るのだった。


 ――――――――――――――――――


 登場人物の名前考えんの大変ですわ...


 次回:初の授業は……?


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 またお会いしましょう。ではでは~

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