第6話 魔法の練習

 次の日の朝、目覚めた俺はランニングを頑張って終わらせて、朝食の席についた。


「おはようございます…」


「おはよう、アーリー。ふふ、お疲れ様。早速で悪いのだけど、今日の座学が終わったら、昨日やれなかった魔法の練習を行いましょう。本来であれば剣術の鍛錬なのだけど、父様に譲ってもらったわ」


「わかりました。場所は昨日と同じですよね?」


「ええ。それでいいわ。まずは座学を頑張ってきなさい」


「はい!」


 ~午後~


「来ましたね。それでは、魔法の練習を始めていきましょうか」


「はい、よろしくお願いします!!」


 ようやくこの時が来た!魔法を教われる!


「と、その前に…」


 あれ、デジャヴ?


「アーリーあなた…勝手に魔法を使っていましたね?」


 え、なんで分かったの!?


「なぜ、という顔をしていますね。まずはそこからですね。あなたのスキルの中にある《魔力操作》。これは、魔力をうまく操れるものにしか発現しません。おかしいと思ったのです。魔力は暴走すると最悪死に至るような危険なもの、子供が一人で魔力操作の練習なんてやるものではありません!暴走していたらどうするつもりだったのですか!!」


「ご、ごめんなさい。そんなに危険なものだったとは知らなくて…魔法が使えると知って浮かれていました…」


「全く。暴走がなかったからいいものの…本当に危険なのですからね…まあいいでしょう。過ぎたことをいつまでも引きずるのは好きではありません。ひとまず切り替えて、魔法の練習に入りますよ。あなたはすでに魔力操作は可能な様ですので、そこはスキップしましょう」


「えへへ...すみません...というか母様、母様も想像魔法については何もわからないんですよね?その状態でどうやって練習をするのですか?」


「それなんだけどね。あなた今、どんな魔法を使うことができるの?一度見せてくれないかしら」


「分かりました!ではまず、炎系から行きますね」


(まずは…初めてやった時とおんなじで、掌の上に火を出すか)


 ぼぅっ!


「これは…無詠唱!?それに、かなり大きな炎ね…アーリー、一度それを撃ちだしてみてごらんなさいな。場所はそうね…《ロックウォール》!これに向かって撃ってみなさい。ただのストーンウォールよりも頑丈な壁よ。思いっきりやりなさい」


 母様は、5メートルほど先の地面に俺より少し大きいくらいの岩でできた壁を作り出すと、俺にそう言った。


「分かりました!…こんな感じかな…?えいっ」


 ドォォォォン!!


 大きな音を立てて炎が壁に当たった。煙が晴れて、壁のあったところを見ると、そこには壁はなかった。いや、正確に言うと壁ものが残っていた。


「ま、まさか、私のロックウォールが《ファイヤーボール》一発で破壊されるなんて…」


 母様はあっけにとられたようにそれを見ていた。


「えっと、取り敢えず、次に行きますね…次は水系です」


 次に俺は、水の球を掌の上に出して、何メートルか先の地面に叩きつけた。


 ドゴォォォォン!!


 見ると、地面に大きな穴が開いていた。


「あ、あはは。おかしいな。普通の《ウォーターボール》を想像したんだけど…」


「アーリー…?あなたは何をしてくれたのかしら…」


「か、母様?その、ごめんなさぁい!!」


「はぁ、しょうがないわね、あれは私が直すわ。《アースリフト》」


 母様がそう唱えると、ゴゴゴゴと土が盛り上がってきて、元に戻った。

 俺は改めて、魔法ってすげぇなぁと思った。


「あ、母様。あと光の玉を出すくらいならできますが、やりますか?」


「光の玉?こんな感じのかしら《ライト》」


 母様の掌の上にほのかな光を放つ玉がでてきた。


「そうです。そんな感じです。というか、先程から思っていたのですが、母様は魔法名を唱えるのですね」


「あぁ、詠唱についてはまだ話していませんでしたね。まず、ほとんどの人は魔法を使うのに長い詠唱を唱える必要があります。母様がやっているのは《詠唱破棄》と言って、魔法使いにとっては使えるととても助かるものです。魔法をある程度使えるようになると身につきます。ですが、あなたがやっているのは《無詠唱》と言って、魔法を極めた者にしか使えないと言われているほど高度な技術で、無詠唱で魔法が使えるものは全魔法使いの憧れと言っても過言ではないほどのものなのです」


「ま、まさか…自分がそんなにやばいことしてたなんて…ど、どうしましょう母様、こんな子供が無詠唱で魔法を使うなんてばれたら、何が起こるか…!」


「そうね…ならこうしましょう。これから、魔法を使う機会はたくさん来ると思います。その時は、母様がやっていたように詠唱破棄をしているように見せること。可能な限り過去に見せてもらったことのある魔法だけを使うこと。威力についてはこれから練習していきましょう」


「そ、それだけでいいのですか?不自然に思われません?」


「大丈夫よ、何かあったときは私の名前を出しなさい。僕の母親はリリアナ・レグシェルですよってね。それで大体の人は何も言ってこなくなると思うから。それでもだめだったらそうね…その時は連絡をよこしなさい。そのための魔法を教えておくわ…《コール》」


『どう?この声は聞こえるかしら?』


「頭の中に母様の声が響いてます!えーっと…」


『こ、こんな感じでしょうか…』


『ええ。それでいいわ。さすがね、こんなに早く感覚をつかむなんて。この魔法は自分が話したいと思った人のところに、声が届く魔法よ。話せる距離に制限はないわ』


「この魔法、凄いですね!」


 俺はテンションが上がって、興奮状態だった。それを見て母様は微笑んでいた。


「魔法は楽しい?アーリー」


「はい、すごく!!」


「ふふ、それはよかったわ。なら、もっとたくさん魔法を使えるようにならないとね」


「はい!頑張ります!母様母様、さっき母様が使っていた魔法、やってみてもいいですか?」


「え?いいけれど、あの魔法は母様のオリジナr」


「ロックウォール!そんで、アースリフト!」


 ゴゴゴゴゴゴ


「……」


「母様、何か言われましたか?」


「いえ、何でもないわ」


「え?でも…」


「な・ん・で・も・な・い・わ!」


「はい!何でもありません!!」


 なんか逆らったらダメな気がした。うん。


「さぁ、次に行くわよ!」


「はい!」


 そんなこんなで再開したのは、魔法の威力を抑えようという話だった。


「アーリー、今のあなたの魔法の威力は信じられないほどに高くなっています。今のままでは危険です。なのでしばらくの間、魔法の威力を抑える練習をしましょう。残念だけど、新しい魔法はまた今度ね」


「はぁい…具体的には何をするのですか?」


「そうね…取り敢えず、魔法を使うときに込める魔力の調整をできるようにしましょうか」


「魔力の調整?」


「ええ。魔法を使ううときに魔力が暴走するのを防ぐためにも、魔力の調整は重要よ。特にあなたのように魔力量が多いと、ね」


「な、なるほど…」


「じゃあまず、基準を決めましょう」


「基準、ですか?」


「そう。基準の魔力の量を決めておいて、その状態を100として魔法を打つときに出力を調整する。そうしたら、危険も減るわ」


「わかりました。ちなみに、どれくらいがいいとかあるんでしょうか」


「そうね…取り敢えず、最大の魔力量の半分くらいでいいんじゃないかしら。慣れたら、そんなこと考えなくても、感覚的に調整できるようにはなるし」


「わかりました!」



 そうしてこの日から俺は、魔法を学ぶのだった。その前に基礎的な魔力の調整からだったけどね☆



 ~2年後~


「今日はようやく冒険者登録ができる!母様、行ってきます!!」


「いってらっしゃい!気を付けるのよ~!」


「は~い!」



「あぁ、行ってしまったわ」


「なんだリリーあの子が心配なのか?」


「それもないわけではないのだけれど…何か起こる気がしてならないのよね…やりすぎてしまわないかしら…」


「ああ、アーリーの力はすごいからな…まぁあの子のことだ。上手くやるさ」


「そうだといいのだけれど…」


 ―――――――――――――――――


 作者です。


 時間だいぶ飛びました。2年間については特に書くつもりないです。

 あと書いててアーリーだいぶやばいなって思いました。楽しいからいいですけど。


 作者はテンプレ展開がわりかし好きなので、次はテンプレになると思います。


 次回:冒険者登録と言ったら…?


 またお会いしましょう。ではでは~

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る