第7話 冒険者登録

 アリオスト・レグシェル、只今街にある冒険者ギルドに向かっております。

 

 この世界では、冒険者登録ができるのは7歳の誕生日を迎えてからと決まっていて、俺はこの日をずっと待っていたんだ。


 この前7歳になったことで冒険者登録ができるようになったので、早速向かっているわけだ。異世界に来て絶対やりたいことの一つ、「冒険者になる」

 ようやくだよ!!ようやくなれる!


「ふんふふ~ん♪」


「おやおや、アリオスト様じゃないかい」


 声をかけてきたのは屋敷の近くに住んでいて、よく会うおばさんだ。

 この街の住人たちは皆、子供相手なら領主の子だろうが変わらず接してくれるので、とてもありがたい。堅苦しいのは苦手だしね。


「こんにちは!」


「こんにちは。これからどこか行くのかい?」


「はい!この前7歳になったので、ちょっとギルドに冒険者登録しに行くんです!」


「おや、もう登録するのかい。早いねぇ、でも気をつけるんだよ?まだ子供なんだから。無理はしないようにね?」


「分かりました!ありがとうございます!それでは!」


「それじゃあねぇ」


 その後も時々街の住人に会ってはちょっと話をして、というのを繰り返しているうちに冒険者ギルドにたどり着いた。


「ここがギルドだな。よーし、行くぞー!」


 ガチャ


 ドアを開けると、ギルド内はざわめきに満ちていて、少しお酒の匂いがした。

 中に入ると、大人たちはこちらをちらっと見て、また話しをし始めた。


「こんにちは!」


「こんにちは、依頼かな?」


「あ、いえ、冒険者登録をしに来たんです!」


「と、登録?えっと、一応年齢を聞いてもいいかな?」


「この前7歳になりました!登録は7歳からできるんですよね?なので年齢は大丈夫です!」


「そ、そうね、なら問題は無いわ。えっと、お家の人とかは…」


「いません!一人で来ました!」


「そ、そう…なら登録の手続きをしましょう。その後に奥で軽い検査があるけど、大丈夫かしら?」


「はい!大丈夫です!」


 そしたら紙を一枚渡された。


「字は書ける?書けないんなら代わりに書いてあげても…」


「いえ、書けるので大丈夫です!」


「そ、そう…」


 名前と年齢、種族等々…全て書き終えた俺は、紙を受付嬢さん(名前がわからないので)に渡した。ちなみに名前はアリオストにした。苗字は家名利用してる感があって書きたくなかった。


「お願いします」


「は、はやっ…!?あ、えっと、貰うね。なになに…アリオスト君7歳…種族は人族、職業ジョブは無しと。まあそうよね。はい、確かに。それじゃあ、登録はこれで終わりね。次は検査よ。5歳の時もやったと思うのだけど、水晶に手をかざしてもらって、軽い魔力量と属性のチェックを行います。その後冒険者カードが発行されるので、少し待つことになるから」


 そう、ここ。俺は冒険者になれるということに浮かれすぎて、説明をしっかり聞いていなかったのだ。


「はぁい」


 そして言われるがままに奥へ行き、水晶に手をかざした。そう、かざしてしまったのだ。

 瞬間、水晶が白く輝く。


「な、なにっ!?」


(あ、やっべ!)


 光が収まると、受付嬢さんが詰めよってきて、


「アリオスト君!これどういうことですか!?白色なんて聞いたことありません!あなたの属性は!?」


「えーと…その…」


「言いづらいだろうけどごめんね?ギルド側は知っておかないといけないの」


「ですよね…でも…うーん…」


「おいロー、いつまでやって…って、ギーんとこのアリオスト坊じゃねーか。どうしたんだ?」


「へ?ギルマスがギーって呼ぶのって領主様でしたよね…じゃあ、何年か前に生まれたご子息!?でも名前…」


「ギルドマスターこんにちは。属性のことでちょっと…それと、家名を利用するのは嫌だったので、名前だけ書かせてもらいました」


「なんだ、名前しか書かなかったのか。まあ、お前はそういうやつだよな。それと属性な。話はギーから聞いてるぞ。なんでも全属性なんだってな?うちのギルドでは見たことないからな。ローが驚くのも無理はない」


「なっ…全属性!?世界に数えられるだけしかいない!?」


 受付嬢さんはローというらしい。にしても全属性ってことにすんのか。公表したら面倒なことになりそうだな...でも助かったぁ…


(コール)


『ギルマス、ありがとうございました。誤魔化してくれて』


『坊か。ま、いいってことよ。そんで、どうすんだ?公表…はしないか』


『まぁ、そうですね。面倒ごとはなるべく避けたいですし…外では何個か属性を持ってるってことにしときます』


『普通全属性持ちってのはすごいことなんだがなぁ…それを面倒とは、さすがはギーの息子だ』


『それ褒めてます?』


『褒めてる褒めてる。ま、わかったよ』


「ロー、少しいいか」


 俺たちが話している間、一人でずっと悶々と何か考えていた様子のローさんに、


「こいつの属性の話なんだがな、全属性って事は隠して、何個かの複数持ちってことにすることになっててな。なんでも面倒ごとを避けたいんだと。ってことで今日ここで見たことは秘密な。誰にも話すなよ」


「え、公表しないんですか!?面倒ごとって…まぁでも、そうですよね…アリオスト…様はまだ子供ですし、国に目を付けられでもしたら…わかりました!このロー、秘密は墓場まで持っていきます!」


「墓場までって…ふふっ、お願いしますねローさん。それと、俺のことは様付けしなくていいですよ。あと敬語も。貴族といっても三男坊ですし」


「そう?じゃあわかった。これからよろしくね、アリオスト君!」


「はい、よろしくです!」


「はいこれ。冒険者カードよ。なくさないようにね」


 そう言って木のカードを渡された。


「わぁ。ありがとうございます!」


 なんか冒険者になった実感がわいてきた。


 魔力測定を終えて戻ると、なぜか冒険者たちがこちらをちらちら見ていた。なんだろうと思いつつ、俺は早速依頼を受けてみることにした。依頼ボードを見に行くと、そこにはたくさんに紙が貼ってあった。


(すげぇ、これ全部ギルドへの依頼なのか)


 そこで俺は、まず定番のクエストを探した。


(薬草採取どこかな~)


 そう、薬草採取である。冒険者の初依頼と言ったらやはり薬草採取だ。


(採取だけの依頼だったはずなのにモンスターが現れたり、ヒロインが乗っている馬車を盗賊から助けたり…なんてことが起こるかもなぁ!ぐふふ)


 ニヤニヤしながら探していると、見つけた!よし。


「これやってきます!」


「はいは~い。あ、でもこれは…」


「どうしたんですか?」


「いえ、やっぱり何でもないわ。気をつけて行ってらっしゃい」


(本当はあの依頼、結構難しくて残っていたものだったのだけれど、失敗を経験することも悪くないわよね)


「はい!行ってきます!」


 俺はギルドから出ると、依頼の紙を見て、場所を確認した。


(ふむふむ。薬草の名前はライル草、場所はヒューリ湖周辺…あー時々ピクニックとかで行くあのきれいな湖な)


 ライル草は傷薬やポーションなどに使われる薬草で、ヒューリ湖は領の森にある、時々家族みんなでピクニックに行く水の透き通ったきれいな湖だ。


(よし、行くか)


「《身体強化ブースト》!」


 俺は脚に身体強化をかけて走った。

 ここ二年で魔法の扱いはだいぶうまくなり、魔力の調整もほとんど完璧にできていた。


 数分後


 ヒューリー湖についた俺は、ライル草を探していたのだが、なかなか見つからない。


「だぁー!も~!全っ然見つかんねぇ!できるなら自分の力だけで探したかったけど…しゃあねえなぁ…《鑑定》!」


 ピコン


《雑草》    《雑草》  《雑草》     《雑草》   《雑草》  

  《雑草》 《雑草》   《雑草》   《雑草》   《雑草》《雑草》


(ざ、雑草しかねぇ…頭痛くなりそう…)


 と思っていたら、雑草以外のものが目に入り、駆け寄った。


「あ、あったぁぁぁぁぁ!!!!!」


 そこにはライル草があった。えーっと、これをどんだけ持ってきゃいいんだ?


 ――――――――――――

 依頼書


 内容:《ライル草》を10本

 報酬:銅貨20枚


 補足:11本以上採取してくだされば、1本につき銅貨2枚追加致します。(最大30本)


 依頼主:グレイス商会

 ――――――――――――


 十本かぁ…とりあえず探してみるか。


 湖の周りをぐるぐる回って探してみた結果、集まったのは7本だった。


「あー3本足りねえかぁ。どうすっかなぁ…奥のほう行ってみるかぁ」


 なかなか見つからないので、森の少し奥に行ってみることにした。


「うーん、ライル草、ライル草…おっ、見っけ!」


 そうして何とか残りの三本を集め、カバンの中に出したアイテムボックスに入れた俺は、街に戻ることにした。

 アイテムボックスはレアなスキルらしいので、カモフラージュ用だ。


(追加報酬は欲しいけど、集めるの大変だったしなぁ…取り敢えず今回は諦めるか)


 さぁ帰ろう、と思った矢先。


 ガサガサッ


「へ?」


 後ろを振り向くと、草むらに


 グルルルルッ…


「な、何?あれ、オオカミ!?と、取り敢えず鑑定!」


 ---------------------

 レストウルフ

 

 森林の奥地に生息しているオオカミの魔物。

 鋭い牙と爪を持つ。稀に個体スキルを持っている。


 個体スキル 爪斬撃

 ---------------------


 え、なんか強そう。てか稀にってこいつ個体スキル?持ってんじゃんかよ!


「と、とりあえずなんか攻撃してみるか?」


 俺の魔法が外の魔物に通用するか知りたいし……そんなことを考えていると、


 グルルッ…ガァァァ!!!


 レストウルフが襲いかかってきたので、パニくった俺は


「うわぁっ!?ファ、ファイヤーボール!!」


 ドォォン!!


「わ、やべ!やらかしたぁ!!《アクアスプラッシュ》!」


 つい結構な威力でファイヤーボールを出して草に引火させてしまい、急いで消していた。ちなみに《アクアスプラッシュ》は水をシャワーのように降らせる魔法だ。俺のオリジナル。


 消火が終わってレストウルフのいた場所を見れば、ウルフの骨とこぶし大の石のようなものだけが残っていた。


「ほ、骨しか残らんかったか…っと、この石あれかな、魔石ってやつかな?まぁいいや、取り敢えず持って帰る物を選ぼう」


(う~ん、とりあえず魔石は持ってくとして…牙と爪あたりを持ってくか…?)


 素材の選定を終えた俺は、それらをカバンに放り込んで、森を出た。

 

 ―――――――――――――――――


 作者です。


 チートのにおい…しますなぁ。


 次回:あ、これあかんやつや


 またお会いしましょう。ではでは~

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